ミドシップ・スポーツカーの3台持ち！　レプリカのランチア・ストラトスとポルシェ914とデ・トマソ・パンテーラ＆猫も22匹います！

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聖子さんはまったくクルマに酔わない体質で、基本的に助手席専門。だから州彦さんの愛車はスモール・カーにミニバンに3台のスポーツカーの計5台というなんとも贅沢なラインナップだ。そこでまず、彼にこれまでの愛車遍歴を聞いてみた。

気に入ったモノは断捨離できない

「人生で最初に買ったのがあのミニ。もともと欧州車は好きでしたね」

ほかのクルマたちはどういった経緯で？　年齢的にやはり“スーパーカー・ブーム”世代なのだろうか。

「モロにそうです（笑）。だから昔、心の底からこれはカッコイイ！　と思ったものを、大人になってようやく手に入れた、という感じですね。しかも気に入ったものが、まったく手放せない。そうでないものはどんどん断捨離できるんですけど」

ガレージを見渡すと、ソファの横のテーブルは昔喫茶店にあったようなゲーム機の筐体だった。アップルIIeのような往年のコンピュータも並んでいる。部屋の片隅にはベスパがいるし、壁際には小径自転車のFフレーム・モールトンやブリヂストン・モールトンが飾られていた。州彦さんは「アナログな世代のものが大好き」なのだ。シャッター裏側にはアウトドア・グッズやガレージ・ジャッキ、工具が並ぶ。ミニと914とパンテーラはナンバー・プレートこそ外されているが、ミニは定期的に動かしているというし、914はジャッキアップされており整備の途中。ちょっと手を入れれば、すぐにでも走り出しそうなのである。

州彦さんが手に入れたのはミニ→914→ストラトス→パンテーラ→アヴァンタイムの順で、一時は3台のミドシップ・スポーツを同時に走らせていた。しかもその間に、なかなかの数のクルマを乗り継いでいる。ざっと挙げるとシトロエンBX、いすゞ117クーペ、ホンダ・ビート、シボレー・カプリス、オールズモビル・カスタムクルーザー、ダッヂ・ラム・ランドスケープ、ミツビシ・ランサー1600GSR、スバル360などなど。全部中古で新車はミニをのぞいて1台もないが、それはこのガレージハウスも同じだ。元々1階は歯科医院で、上が住居という状態で売りに出た中古邸を購入。自らここまで仕上げたのだ。

「クルマもガレージも一緒。昔から自分でこつこつ直しながら、一生暮らしていきたいって思ってました」

人生の最初と最後をミニで締めくくる

手放したクルマにも未練がないわけではないが、本当に残したい、と思ったのは今も所有の5台だそうだ。中でも914は奥様と付き合うきっかけになった特別な1台らしい。「江ノ島にドライブしたんです。彼はもう忘れてるかも（笑）？」と聖子さんが横から会話に口をはさむ。

「本当はロータス・ヨーロッパを買おうとしていたんですが、どうしても造りに納得ができなくて。それで名古屋で売りに出ていたこの914に乗ったら、すごくしっかりしていて中も広いし、オープンだし……」

一方ストラトスは最初からレプリカ狙いだった。たとえオリジナルを手に入れても、猫可愛がりして乗れないと思っていたからである。

すでに15年の付き合いになるストラトスはイギリスのC.A.E.（カールソン・オートモティブ・エンジニアリング）製のレプリカ。シャシーはパイプ・フレームで構築され、その上にFRP製のボディ・カウルをまとう。

すでに15年の付き合いになるストラトスはイギリスのC.A.E.（カールソン・オートモティブ・エンジニアリング）製のレプリカ。シャシーはパイプ・フレームで構築され、その上にFRP製のボディ・カウルをまとう。

「積算計がないからわからないけど（笑）、レプリカ・オーナー仲間から『2人が一番走ってる』と言われます。これでスキーも2度行って雪道も走りましたが、すっごく楽しい。本当に走りが面白くて手放せない。だから先々、終活をはじめてもなんとか残したい。どうしても身体がついてこなくなったらストラトスの代わりは914で、最後がミニですね。あのミニを人生最初にして最後のクルマにしたいと思っています」

パンテーラとアヴァンタイムは？

「パンテーラは知人のつてで手に入れて半年乗ったんですが、今は保護猫たちのお世話で手一杯。もう少し落ち着いたら914と共に手を入れたい。アヴァンタイムは『どこかに行く？』となったらまず最初に鍵を取るクルマ。部品がなかったりで長い間工場入りもしていましたが、なんとかこの奇妙な宇宙船みたいなクルマも、長く乗り続けてあげたい」

クルマ趣味以外に秘湯巡りや登山、スキー、キャンプなどアウトドアも楽しむ州彦さんにとって、アヴァンタイムはスーパーカーたちと共存する快適なクルーザーであり、ミニは魂のよりどころなのだった。

文＝上田純一郎（ENGINE編集部）　写真=阿部昌也

（2021年2・3月合併号）
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