2021.04.03

LIFESTYLE

【アニメ化50周年】『ルパン三世』がなぜフィアット500に乗っているのか知っていますか? 1stシリーズの作画監督、故大塚康生さんの思い出

原作:モンキー・パンチ(C)TMS

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インタビューでは、当時の雑誌でキャンバストップを開けて傘をさした人が乗っている写真を見つけて、これだ!と芝公園の西欧自動車に買いにいったことから始まり、「フィアットとスバル360は似てると言われるけど、それは違う。スバルのモチーフはむしろビートル。並べてみるとわかるんですが、ビートルには余計な線が多いんです」といったデザイン論や、「ボディにレンガ模様を描いたり、“歩”なんて描いたのは、今の人がTシャツに絵を描く感覚。僕にとってフィアットは洋服のようなもの。自動車は個性を主張する手段の1つなんですよ。だからカッティングシートで2〜3ヶ月ごとに模様を変えていました」というご自身の自動車感、さらに「宮崎さんとは、ルパンは泥棒のマンガだけど成功しちゃいけないって共通の思想がありました。失敗ばかりしてるからお金持ちじゃない。だから一番安いクルマに乗ってるはずだって。ならばお前の乗っているクルマがいいんじゃないか?と決まったんです。あと、意外とアニメーターにクルマの絵が得意な人が少なくSSKは複雑なので、比較的描きやすくサンプルもある自分のクルマならいいだろうって思いもありました」といったルパン裏話などを、じっくりとお聞きすることができた。


大塚さんの500の隣に並ぶのは、宮崎駿監督が所有していたシトロエン2CV! 撮影/大塚康生、ご遺族提供


さる3月15日に89歳で亡くなられたという訃報に接し、思い出したのは、僕の編集者人生の中でも強く印象に残っている、カー・マガジン258号での記事『僕とルパンとフィアットと」を作った22年も前の出来事だった。

取材の最後に大塚さんは「単純な動機でマンガに出したけど、そのあと一人歩きしてアイドルになっちゃったね」と仰っていたが、確かに正規輸入台数もあまり多くなく、日本ではマイナーな存在だったイタリアの大衆車は、アニメの中で大塚さんによって命を与えられ、最も有名な自動車の1つになった。

この他にも、様々なアニメ作品での活躍、ご自身でも所有されていたウィリスMBやM422マイティマイトをはじめとするミリタリー・ヴィークルの研究や出版、さらにその豊富な知識を生かした今はなきマックス模型での奮闘(大塚さんが企画に関わったモデルは、その後他社に渡ってからも長らく販売され、今も評価は高い)、タミヤ模型でのデザイン監修など、有形無形を問わず遺された功績は枚挙にいとまがない。


そして今、件のモデルグラフィックスやカー・マガジンや、大塚さんの著作を読み返してみると、アニメーター、作画監督というプロの視点とともに、いちマニアとして全体のフォルムから1つ1つのディテール、そして音や動きの一部始終までも立体的に捉えている観察眼に、ただただ圧倒されてしまう。

だからこそ、50年も前の作品でありながら、1stシリーズのルパンにはまるで実写のようなリアリティがあるのだろう。


秋には「ルパン三世PART6」も放送がはじまった。大塚さんを偲びながら、もう一度じっくりとルパン・シリーズを観てみたくなった。


筆者が「カー・マガジン」で大塚さんに書き下ろしてもらった時のイラスト。


文=藤原よしお 協力=叶精二


(ENGINEWEBオリジナル)

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