2021.08.02

CARS

とにかくポルシェ911に乗りたかった若者が、還暦で買ったのはアストン・マーティンDB11AMR 気分はジェームス・ボンドだ!!

アストン・マーティンが似合う年齢になって、世界最高峰のグランドツアラーを手に入れたオーナーは、一流のジェントルマンであることを自分に誓った。

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黒いアストン・マーチン

ウォーン。アイドリング音を低く唸らせながら、黒いアストン・マーティンDB11AMRは停まっていた。ワイド&ローの佇まいは、精悍かつ獰猛な印象で周りに緊張感を生んでいる。バンッ! と張り出したリア・フェンダーは、肉食獣が獲物を狩る前、低くうずくまったときにみせる後ろ脚の筋肉のように思えた。

助手席のドアを斜めに跳ね上げると、シートにはAMR(アストン・マーティン・レーシング)の象徴であるライムグリーンのラインが入っていた。見ただけでタダモノじゃない感が溢れている。ステアリング・ホイールに軽く手を添えているオーナーの高澤義博さんに挨拶する。高澤さんは取材日に私を迎えに来てくれたのだ。

低い排気音をビルの間に響かせると、黒い獣は滑らかにスタートした。一般道から首都高速へ、カメラマンとの待ち合わせ場所である「海ほたるPA」へ向かう。外観のイメージとは違い、乗り心地が素晴らしいのに驚いた。AMRと名付けられていても、上質なグランドツアラーであることが助手席でもわかった。



還暦でアストン

IT関係の企業を経営する高澤さんは、このグランドツアラーを2019年4月に購入した。「10カ月待ちました。V8とも乗り比べたんですが、V8はやっぱりAMGっぽくて。アストンならではの味は12気筒の方かなあと」高澤さんが還暦を迎えた年だ。それには、高澤さんなりのこだわりがあった。

子供の頃から大のクルマ好きだった高澤さんの愛車遍歴は、日産フェアレディZ(Z31型)Tバー・ルーフからスタート。その後、ポルシェ911カレラ、マセラティ・ビトゥルボ、メルセデス・ベンツSクラス、BMW7シリーズ、メルセデス・ベンツCSL、フェラーリ・カリフォルニア、アウディR8などを乗り継いできた。

「若いときは、とにかくポルシェ911に乗りたかった。ショートホイールベースでキュンキュン曲がるクルマが好きだったんです。ところが年齢を重ねてきて、最後はアストン・マーティンだと思うようになりました」


嗜好の変化は仕事で付き合った人たちの影響も大きいと言う。「アメリカやヨーロッパの人たちとビジネスをすることが多くなり、その人たちからマナーやモノゴトの考え方など、仕事以外の影響をたくさん受けました。こんな風にカッコよくなれたらいいなあと思う人たちにたくさん出会えたんです」



自分も素敵な紳士になりたいという気持ちが強くなればなるほど、そのときはアストン・マーティンに乗っていたいと思うようになった。「欧米に行くと、クルマと人がマッチしていると思うんです。カリフォルニアでメルセデス・ベンツSLにブロンド女性が乗っていたり、ロンドンで銀髪の紳士がジャガーを運転していたりすると、カッコイイなあと思う。だから、自分もアストン・マーティンが似合う年齢になったら、アストンを買おうと。それが実現できたことはもちろん、感謝しかないですね」

クルマが人を変える


漆黒のアストン・マーティンDB11AMRが納車されたときのことは、感動の一日として記憶している。
「もう、カッコよくて。この日のために一所懸命頑張ってきたなあと。これからは、このクルマに似合う自分でいなければと、自分に誓いました。アストンが欲しかったというよりも、アストンのあるスタイルを欲していたのかもしれません」


クルマがオーナーを変えるんですね、と言うと、「そうですね! アストン・マーティンに乗っているのに、野暮なことはできない。まったく、親や家内の言うことは聞かないのに、クルマのいうことは聞くんだから、クルマって凄い力を持ってますね(笑)」納車されてすぐに、志摩観光ホテルへ奥様と自動車旅行をしたという。

「12気筒エンジンは初めてなんですけど、低回転から湧き上がるトルクがいいですね。おかげで、長距離移動がラクです。いざとなったら、スポーツ+モードにすればグランドツアラーからスーパースポーツに変身! というのもいい。まさにジェームズ・ボンド!」


裏磐梯、軽井沢などに出かけたが、いつかこのクルマで北海道を走りたいという高澤さん。アストン・マーティンDB11AMRから素敵な紳士が降り立てば、街の風景が変わる。高澤さんのような人が日本中をグランドツーリングしたら、日本の大人文化も少しは成長するかもしれない。

リアが張り出したワイド&ローのシルエットが美しい。5.2リッターV12ツインターボは最高出力639ps/6500rpm、最大トルク700Nm/1500rpmを発生する。


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文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=郡 大二郎


(ENGINE2021年6月号)

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