2021.07.15

CARS

スポーツカーは生き残る!! ホンダ・シビック・タイプRとトヨタGRヤリス “エンジン女子座談会”本音トーク!

スポーツカーが自動車文化を作る!ホンダがニュルブルクリンクの市販車FF最速タイムを実現すべく開発したシビック・タイプRと、トヨタがWRCで勝つために作ったGRヤリス。高性能ハッチバックをめぐって、”エンジン女子座談会”メンバーの女性ジャーナリストが侃々諤々。

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サーキットデビューがシビックだった!

――さて今回のエンジン女子座談会のテーマは注目の国産スポーツ・モデル、ホンダ・シビック・タイプRとトヨタGRヤリスです。ここでは飯田裕子さん、佐藤久実さん、竹岡 圭さん、そして吉田由美さんという4人の女性ジャーナリストに乗っていただいて、2台についてざっくばらんにお話していただきます。

佐藤 はい!

――おっといきなり挙手。久実さん、どうしました?

佐藤 私、サーキット・デビューしてからずっとシビックでレースをしてきたんです。インテグラ・タイプRではシリーズ・チャンピオンを獲った。だから、シビックもタイプRもすごく思い入れがある。このページを独占したいぐらい。



――GRヤリスを持ってるしね。

佐藤 今日、最新のシビック・タイプRに乗って本当に進化したなって、つくづく思った。レースを始めた頃はFFなんてスポーツカーじゃない。FFのレースなんてあり得ないと言われたのに。

竹岡 速くてもスポーツカーとは呼ばれず、ホットハッチだった。

飯田 私がレースを始めた頃もFRが当たり前で、FFは練習用だった。

竹岡 昔のおじちゃんはFR、FRって言うよね。私がレースをかじったときはFF全盛だったから、FRに思い入れはないんだけど、私もスポーツカーって言うと、マツダRX- 7みたいなシュッとしたやつ。

吉田 昔は漫画『巨人の星』に出てくる花形 満が乗ってた2座オープンがスポーツカーだと思ってた。いまは、ステアリング・ホイールの径が小さくて、握ったときに脇が閉まる感じのクルマがスポーツカーだと思ってる。

飯田 いま、スポーツカー定義の話になってます? イメージは車高が低くて、ロングノーズ&ショートデッキのクルマだけど、私にとっては、駆動方式というより心が動くか? ということが大事。エンジンの吹き上がりとか、ステアリングを切ったときのレスポンスといった動的なものと、あとは音かな。

吉田 スポーツカーって人によってとらえ方が違うよね。ナンパなチャライ真っ赤なオープンカーもスポーツカーだし、アスリート的なクルマもスポーツカー。

2020年10月にマイナーチェンジしたホンダ・シビック・タイプR。2021年の英国工場閉鎖により新規生産は不可能となり、すでに新規受注は終了している。

軽やかに回る2リッターターボは4000rpmを超えると高らかに咆哮を響かせる。

熟成のタイプR

佐藤 でね、今日乗ったタイプRはスポーツカーだと思った。走りがとても熟成されていたから。昔のFFはダメだったの。インリフトして3輪走行になっちゃって。最新のシビック・タイプRは脚がよく動いて路面追従性が素晴らしい。求めていたのはこれ! と思った。

竹岡 確かに乗ると完全にスポーツカーだよね。

飯田 マイナーチェンジしたタイプRには今日初めて乗ったんだけど、完成度が高い。ものすごく安定しているよね。接地感が素晴らしい。トルクの出方もホンダっぽくて胸を高鳴らせてくれる。

竹岡 タイプRはすごく乗りやすかった。GRヤリスと乗り比べて、ホイールベースが長いとこんなに違うんだと思った。







吉田 そうそう。タイプRはすごく乗りやすいと思った。ギアチェンジもサクサクっていう感じで。GRヤリスはやっぱりラリー・フィールドを目指していて、クローズド・サーキットが土俵のタイプRとはちょっと違う。あと、タイプRはGRヤリスに比べてすごくドメスティックな感じがした。ザ・ニホンシャ! ガンダム的外観は好き嫌いが分かれる。

佐藤 GT-Rやインプレッサと同様、洗練されてないんだよね。

飯田 マイナーチェンジして余計なものはすべて取り払ったんだって。あのリア・ウィングも必要不可欠。

竹岡 245/30ZR20というタイヤなのに、コンフォート・モードにすると、あんなに乗り心地がいいんだね。ビックリした。一時期、タイプRと名の付くホンダ車は、メッチャ硬くて舌噛んじゃいそうだった。

吉田 Rプラス・モードにしてもポンポン跳ねるわけじゃないよね。

佐藤 FFで320psというパワーなのに、じゃじゃ馬ではないっていうのは本当にすごい。昔、FFのGTカーに乗ったことがあるけど、トルク・ステアとの格闘だった。

WRCのトップ・カテゴリーで勝つためのホモロゲーション・モデルとして専用開発された。

1.6リッター3気筒ターボは272ps、370Nmを発生、わずか1280kgのボディを強烈に加速する。0-100km/h加速は5.2秒。

軽快なGRヤリス

――GRヤリスは久実さん、オーナーですよね。

吉田 購入動機はなんですか?

佐藤 初めて乗ったときがダートだったの。もう楽しくて。インプレッサと乗り比べたんだけど、何と言ってもGRヤリスは軽い。272psって、ひと昔前だったら6気筒とかのクルマですよ。なんと1.6リッター3気筒ターボ。軽くすることに、とことん拘っている。

飯田 GRヤリスの3気筒エンジンは本当に素晴らしい。トヨタの4AGE型エンジン以来の名機だと思う。

吉田 4駆なのに1280kg。

竹岡 私のラリーカー、VWポロGTIは2駆で1290kgだよ。

吉田 やる気マンマンのタイプRに対して、GRヤリスはさりげない見た目がいいですよね。

竹岡 あのキュッとしたパッケージのなかにものすごいものを詰めましたっていう感じ。

飯田 4WD機構もすごく凝っていて、お宝ザクザクですよ。

竹岡 通常のトルク配分は前6:後4、スポーツ・モードは前3:後7、トラック・モードは前5:後5。高速コーナーが続く箱根ターンパイクだとスポーツが良かった。

吉田 さらに軽快感が増す感じ。







佐藤 エンジンもレース・エンジンと同じ作り方をしている。だから、2000km慣らし運転したら絶対オイル交換してくれって言われた。

吉田 工場もすごく拘っているみたい。見学に行きたい!

佐藤 わざわざGRファクトリーを作ったからね。そういう思い入れを感じたから買ったの。GRって最初はブランドの名前だけ一人歩きしていて、中身がよくわからなかった。でも、工場を立ち上げて、本気のクルマ作りを始めた。そういう熱いものを感じたから、本当に久しぶりに新車の国産スポーツカーを買った。

吉田 ブランドというか、社長の強い思い入れを感じますよね。

竹岡 社長の思い入れがあっても、これまでは86はスバルと、スープラはBMWと共同だった。やっと純血種が出来た。

佐藤 GRもレースをやらせてもらっていたから、すごく近くで見ていた。これまでは市販車をレース仕様に仕立てていたんだけど、GRヤリスはWRCカーから落とし込んで作ってる。

吉田 普通のヤリスと名前は同じだけど、骨格から別モノ。軽量&コンパクトというのは、ベースにラリーがあるよね。圭ちゃんはラリー・ドライバーとしてどう?

竹岡 これは良いよ。すごく乗りやすいし。勝負にいけそう。

4WDシステムは、前後トルク配分をノーマル(60:40)、スポーツ(30:70)、トラック(50:50)と切り替える。テスト車はハイパフォーマンス・モデルでトルセンLSDを備える。

マイナーチェンジでは可変ダンパーの制御を高精度化し、街乗りなど日常粋での乗り心地が良くなった。アルカンターラ・シートのフィット感やホールド性は素晴

吉田 トヨタって巨大だから、アンチの人も多い。アンチ巨人みたいな。でも、社長の思いが結実したGRヤリスが出て、トヨタを応援する人が増えると思う。

竹岡 ホンダのH党やスバルのスバリストみたいな人がウチにはいないのが問題なんですよって、トヨタの人が言ってた。

飯田 社長がニュルのレースに出たり、トヨタイムズのCFに出たりしてイメージを変えようとしてきたけれど、実際に売っているクルマとギャップがあった。GRヤリスが出たことで、イメージが繋がったよね。

佐藤 私、社長と一緒にニュルを走った。あのときはまだジレンマがあったと思う。私もこんなに大きな船なんだから、船長が“面舵いっぱーい!”と叫んでも、そんなに簡単に向きは変わらないだろうと思ってた。でも、GRヤリスが出来て、エンドユーザーへ社長の思いが分かりやすく伝わったと思う。



飯田 2台に乗ってつくづく思ったことがあるの。EV化が進んでいるから、MT車でエンジンをブンブン回しながら走るというのは、いまだからこそ出来るスポーツという気がした。エンジンを回すと高揚するというのはスポーツカーのひとつの魅力だと思う。

竹岡 あと、音ね。

吉田 こういうクルマの存在が新しいクルマ好きを生み、その人たちがメーカーに入ってその文化を継承していくんだと思う。

佐藤 自動車文化があればスポーツカーは生き残るはず。それはモータースポーツとも繋がっている。だから今日の2台はずっと続いて欲しい。

吉田 マイナーチェンジと同時に出たタイプRのファイナル・エディションという限定モデルは即完売で、いまやプレミア価格です。

飯田 そんなに人気なんだから、やめないで!

語る人=飯田裕子+佐藤久実+竹岡 圭+吉田由美 まとめ=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=郡 大二郎

■ホンダ・シビック・タイプR 
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4560×1875×1435mm
ホイールベース 2700mm
車両重量 1390kg
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1995cc
最高出力 320ps/6500rpm
最大トルク 400Nm/2500~4500rpm
変速機 6段MT
サスペンション前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション後 マルチリンク/コイル
ブレーキ前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ前&後 245/30ZR20
車両本体価格 475万2000円

■トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス 
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 3995×1805×1455mm
ホイールベース 2560mm
車両重量 1280kg
エンジン形式 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 1618cc
最高出力 272ps/6500rpm
最大トルク 370Nm/3000~4600rpm
変速機 6段MT
サスペンション前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ前/後 通気冷却式ディスク
タイヤ前&後 225/40ZR18
車両本体価格 456万円

(ENGINE2021年7月号)

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