2021.10.01

WATCHES

思わずひと目惚れする時計「ヴァシュロン・コンスタンタン」篇  自動車愛好家の気持ちに思いを馳せる

なぜ? と聞かれてもうまく言えないが、一瞬で好きになってしまうことがある。人も時計も。相手が人ならともかく、一体時計のどこに我々はこれほどまでに惹かれるのだろう。容姿端麗なデザインか、才色兼備のメカニズムか、はたまた運命の糸がそうさせるのか。そんな恋の始まりを予感させる、ヴァシュロン・コンスタンタンの思わずドライブに連れ出したくなる注目モデルを取り上げ、その魅力をライターの柴田充氏が解説する。

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そのユニークなスタイルは、過去から未来へと導く

流麗なクッションケースに、文字盤は45度に傾けられ、リュウズも右上隅に構える。そのユニークなスタイルは、ドライビング中でもステアリングから手を離すことなく時間を確認するためだ。この「ヒストリーク・アメリカン 1921」は今年誕生100周年を迎えた。アメリカ市場向けに開発されその佇まいからは「ローリングトゥエンティーズ(狂騒の20年代)」と呼ばれた当時の熱気が伝わってくる。だがモダンかつ優美なスタイルもモチーフになったのはミリタリーウォッチであり、傾けられた文字盤を求めたのは、操縦桿を握る兵士だったのかもしれない。 そして戦争の終結とともに、それは戦禍という不幸な歴史から平和と繁栄の象徴になったというわけだ。そんな時代を映し出し、かつてこれを手にした自動車愛好家の気持ちに思いを馳せることに心躍る。今回アニバーサリーイヤーを祝し、ブランドが所有する当時のオリジナルモデルを基に、本格的な再生プロジェクトが行われた。デッドストックパーツと新たに製作したパーツを組み合わせ、忠実に再現する。それ以上に難しかったのは、現代の時計師が当時の技術を会得することだったそうだ。しかし過去を知ることで、ヴァシュロン・コンスタンタンは未来への道を走り始めた。






ヒストリーク・アメリカン 1921 40mmの「ココに胸キュン!」

角に据えたリュウズは手首に干渉せず、その来歴と個性を象徴する機能美でもある。クルマ好きにはたまらない。搭載するCal.4400ASは、2009年に発表された手巻き式ムーブメントで、大径化で薄さと約65時間のパワーリザーブを両立する。ジュネーブシール取得の仕上げも美しい。

復刻の第一弾は2009年にピンクゴールドの素材で登場。2016年にプラチナ、その翌年には36mm径のピンクゴールドが加わった。そして今年の最新作では初のホワイトゴールドが発表された。レイルウェイのミニッツトラックに、伝統的なアラビア数字と指針を備える。エレガントなクラシックスタイルには、スポーティなモダニティを秘める。手巻き。18Kピンクゴールド、ケース直径40mm、3気圧防水。435万6000円。

文=柴田充 写真=近藤正一

(ENGINE2021年8月号)

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