2021.10.31

CARS

2代目トヨタ・アクアの「クラウンからダウンサイズしてもがっかりしない」という開発目標は本当なのか?

ハイブリッド専用車を武器に大ヒットを手に入れたアクアだが、2代目にはハイブリッドを手に入れたヤリスという兄弟車がはだかる。同じ店で売られる強敵に対して、新型はどんな武器を備えているのだろうか。自動車ライターの佐野弘宗がリポートする。

ライバルを研究し尽くした国内専用車種のアクア


先代=初代アクアはまだハイブリッドそのものがめずらしかった2011年末に登場して大ヒットした。しかし、今ではグローバル・カーのヤリスもハイブリッドを搭載して、国内販売1位を記録している。しかも、トヨタの国内販売体制は「全販売チャンネル全車販売」に移行して、デザインちがいの兄弟車も大幅に整理されている。そんななかで、アクアは9年半ぶりの刷新を果たした。



先代アクアは一時期、プリウスcの前で北米や豪州でも販売されたが、新型は完全な日本専用車だそうだ。新型アクアの骨格構造やパワートレインは大部分がヤリスのそれと共通だが、このご時世に(軽自動車以外で)これほど本格的な国内専用商品を新開発できる体力と販売力は、トヨタにしかないだろう。







新型アクアは、「欧州志向が強いヤリスの個性」≒「日本的に見た場合の弱点」を見事に解消したクルマだ。ヤリスでは明確に割り切っている後席や荷室も、新型アクアではホンダ・フィットや日産ノートに大きく引けを取らないくらいに広い。ヤリスではお世辞にも高級感があるとはいえない内装も、大型ディスプレイやレザー・ダッシュパッド、大型センターコンソールを備える新型アクアでは「クラウンからダウンサイズしてもがっかりしない」という開発目標を、まずまず満たしている。

ポイントは柔らかくて重厚な乗り味

走りは、パリッと軽快で小気味いいヤリスに対して、アクアは柔らかくて重厚。1.5リッター直3エンジンや駆動用モーターはヤリスと同様だが、「バイポーラ型」というアクアが初採用となる新構造のニッケル水素電池により、パワートレインはさらにパワフルになっている。ただ、その余力をエンジン負担を減らして静粛性を高めるためにも使っている。



そんなアクアも山坂道でフルバンプさせるような走りをしたときに意外なほどがっちりとした歯応えを見せるのは、GA-Bプラットフォーム由来の高い基本フィジカル能力のおかげだろう。ただ、それより手前の領域では「静かで乗り心地がいい」という評価と「アシが柔らかすぎて落ち着かない」という意見に二分する可能性が高い。どちらが良い悪いではない。アクアとヤリスを試乗すれば、それぞれの嗜好で迷うことはないだろう。

そんな好対照の味わいは、アクアとヤリスが同じショールームで並べて販売されると考えると、商品ラインナップとしては正解と思う。

文=佐野弘宗 写真=郡大二郎

(ENGINE2021年11月号)

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