2021.12.05

CARS

オシャレなジャーマンSUVと言えばアウディでしょ! ひと味違うアウディQ2とQ5スポーツバックに試乗!!

かつてアバントと称するオシャレなステーションワゴンで時代をリードしたアウディは、SUVをつくらせてもひと味違う。今年登場した2台のニューモデルに乗って、それを実感した。エンジン編集部のムラカミがリポートする。

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魔法の言葉“スポーツバック”

ものは言いよう、というのは誠にその通りで、同じものを指していても表現次第でまるで印象が変わってくることがある。たとえば、アウディが作り出した“アバント”という言葉がそうだ。“ステーションワゴン”では商用車のイメージから抜けられないものを、アバントと名づけた途端に、まるでそれに乗れば先進的なアーバンライフが実現できるようなオシャレな乗り物に変身する。



いや、印象が変わるだけじゃない。本当にクルマが乗る人の生活を変えることもあるのだ、と私は信じている。20年前に、それまで乗っていた国産ステーションワゴンを手放し、登場したばかりのアウディA4アバントの新車を清水の舞台から飛び下りるような気持ちで購入した私が実体験したことなのだから間違いない。走りがいいとか、使い勝手がいいとか、ボディが堅牢だとか、そういう道具としてのデキの良さを超えて、高い品質感や都会的な洗練されたスタイルを持つ“アバント”という記号が、それを纏う私のライフスタイルを、それにふさわしく変えていってくれたのだ、と思っている。

そのアバントに続いて、アウディが作り出した魔法の言葉が“スポーツバック”だ。最初にこれを使ったのは、確かA3に初めて5ドア・モデルが登場した2000年代の初めのことだったと記憶する。それまでの3ドア・ハッチバックに加えて、より実用的な5ドア・ハッチバックを追加するにあたって、逆に思い切り実用的ではないイメージの名前を付けたわけだ。で、実際に乗ってみると、これがその名の通りの、思わず踊りだしたくなるくらいに軽快な走りのクルマだったものだから、私などアッという間に好きになってしまった。買わなかったけど、魔法にかかりやすいのかも知れない。



いや、魔法にかかりやすいのは私だけではなかったようで、A3スポーツバックは瞬く間にアウディのベストセラー・カーになった。そして、それに味を占めたアウディは、さらに第2、第3の“スポーツバック”の矢を放ってきたのである。ただし、今度は5ドア・ハッチバックではなく、5ドア・クーペのA7スポーツバックやA5スポーツバックである。で、こちらも見事にセダンはもちろん、アバントをも凌ぐベストセラー・カーとなって今に至っている。

ドッシリと重厚なQ5

という長い前置きを経て、ようやく今回のテーマに辿り着いた。というのも、魔法をかけるのが巧みなアウディは、ここにきてSUVにも次々とスポーツバックを登場させており、eトロン・スポーツバック、Q3スポーツバックに続くSUV第3弾として今年加わったのが、このQ5スポーツバックだからだ。



ファインナッパレザーのスポーツシートも標準装備。

ひとことで言ってしまえば、SUVクーペである。しかし、それをスポーツバックと表現した途端に、魔法の杖が降り下ろされて、何かが変わるのだと思う。実際、Q3スポーツバックは普通のQ3を凌ぐ売れ行きを見せているというから、やっぱりみんな魔法にかかりやすいのだ。

今回の試乗車のQ5スポーツバックは、マイルドハイブリッド付きのディーゼル・モデルだったが、中味がどうこう言う前に、パッと見た瞬間、「アッ、これはオシャレなクルマだな」と思った。ルーフがクーペのように美しく下がっているからというだけでなく、8角形のシングルフレームグリルの小さな穴の中にノーマルとは違うシルバーのアクセントが細かく加えられていたり、バンパーの形状が微妙にスポーティに変更されていたりして、実に芸が細かいのだ。スッキリと整理整頓されたインテリアもアウディならではのもので、スポーティでゴージャスなSラインのシートと組み合わされると、これぞスポーツバックにふさわしい内装だと思えてくる。



走りは想像していたより、ドッシリとした重厚感の強いものだった。2トン近い車重を持つディーゼル・モデルなのだから当然と言えば当然である。しかし、重ったるい感じがしないのは、パワーステアリングの設定がかなり軽めにしてあったり、マイルドハイブリッドの電気モーターがさりげなくスムーズな発進をアシストしてくれたり、同じクワトロでも普段は後輪を切り離して前輪駆動となり、必要な時だけつないで4WDとなる最新のシステムが採用されているおかげだろう。そういう芸の細かさが、ドッシリとした重厚感の中にもさりげなく軽快感を醸しだしており、そのサジ加減が絶妙だと思った。高速道路での直進安定性は抜群だし、それでいて箱根の山道を走ってみれば、ちょっとしたスポーツカーなみのアスリートぶりをかいま見せる。まさに見た目通り、名前通りのクルマなのだ。

思い切り軽快な乗り味のQ2

一方、もう一台の4年ぶりにビッグ・マイナーチェンジしたQ2は、“スポーツバック”という名前は付けられていないけれど、前に触れた最初のA3スポーツバックの走りを思い出させるような、思い切り軽快な乗り味を持ったクルマだった。150psの1・5リッター直4ターボは1・3t強のボディを引っ張るには必要十分以上で、走り出した瞬間に「ワォ」と口に出してしまうくらい軽快感にあふれている。



とはいえ、むろん前輪がホイールスピンをするような無粋な様を見せることはないし、ステアリング・フィールもQ5より重めの設定で、高速道路ではアウディらしい矢のような安定した走りを見せてくれる。つまりQ5とは逆の、軽快感の中にさりげなく重厚さを醸しだすような味つけになっており、そのサジ加減がマイチェン前よりずっと絶妙になったと感じられたのである。

そういえば、4年前に登場した時には、ストリート系の若者を取り込むことをかなり意識しており、赤や青の派手な原色のボディ・カラーを打ち出していたが、今回の試乗車は新色のアップルグリーン・メタリックを纏っていて、私のような還暦に手が届こうという者にも、これならマッチする。歳を取って、子供たちも独立してから、こういうクルマに乗るのもいいんじゃないか、と密かにその時のライフスタイルを夢想してしまった。アッ、また魔法をかけられたのかも。アウディは上手い。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬



■アウディQ5スポーツバック40TDI クワトロS ライン
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4685×1900×1665mm
ホイールベース 2825mm
車両重量 1910kg
エンジン形式 直噴直4ディーゼルDOHCターボ
排気量 1968cc
ボア×ストローク 81.0×95.5mm
最高出力 204ps/3800-4200rpm
最大トルク 400Nm/1750-3250rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) マルチリンク/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 235/55R19(試乗車は20インチ)
車両本体価格(税込み) 837万円

■アウディQ2 35TFSI アドバンスト
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4200×1795×1530mm
ホイールベース 2595mm
車両重量 1340kg
エンジン形式 直噴直4DOHCターボ
排気量 1497cc
ボア×ストローク 74.5×85.9mm
最高出力 150ps/5000-6000rpm
最大トルク 250Nm/1500-3500rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) トレーリング・アーム/コイル
ブレーキ(前) 通気冷却式ディスク(後) ディスク
タイヤ(前後)215/55R17
車両本体価格(税込み) 394万円

(ENGINE2021年12月号)

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