今回のフルモデルチェンジにあたり、レクサスは基本に立ち返ってブランド変革するための3つの取り組みを目標に据えたという。(1)クルマの素性、すなわち体幹を鍛えること。(2)適材適所で電動化を進めること。そして(3)多様性のある商品を提案すること、だ。それをそのまま実現したらこういうクルマが出来たのだとしたら、本当に大したものだと思う。NXのプラットフォームは基本的にトヨタのRAV4やハリアーと共通だが、それをレクサス基準に合わせて大幅に強化してある。試乗会場には、スポット溶接を増したり、接着剤を多用して、体幹を鍛えた部分を見せたホワイト・ボディの展示があったが、実際に乗れば、ボディ剛性の高さが走り始めてすぐにわかる。しかし、それだけで、あの重厚感のある乗り味が実現できたわけではあるまい。ひとつは、PHEVのための155kgのバッテリーを床下に敷きつめたことが、いい影響をもたらしているのだろう。重くはなるが重心が下がり、バランスも良くなる。そして、自然吸気の2.5リッター直4エンジンに加えてフロントに134kW、リアに40kWの電気モーターを備え、それらを実に巧みに協調制御させるのに成功したことで、あのナチュラルな走りが完成したのではないか。当然ながらモーターは出だしから最大トルクが立ち上がるから、少々重量が増したところで、そんなことは感じさせないくらいにスムーズな発進を可能にする。そのまま電気だけで88kmも走り続けられる電池容量を持っているのだから、その後もあらゆる場面でエンジンとモーターが協調制御していると考えていいだろう。たとえば、直進時には前輪駆動でエコかつ静粛に走り、コーナリング時にはリア・モーターを少しだけ使って自然に曲がれるようにアシストする。そんな場面でも、常に動きがナチュラルで、人工的な介入を一切感じさせないところが、もっとも感心するべき点なのかも知れない。山道の上り坂などでもPHEVの威力は抜群で、何ら顔色を変えることなくスーッと上っていく。自然吸気ガソリンの250はもちろん、普通のハイブリッドでも、PHEVのようにすべてがスムーズに、とはいかない。どうしてもエンジンが頑張ったり、無段変速機のゴムが延びていくようなイヤな感じが顔を出したりするのだ。新ターボ・エンジンを積んだ350Fスポーツのキビキビした走りも魅力的だったが、価格の高さを除けば、私は断然450h+をオススメしたい。これは傑作車だ。
■レクサスNX450h+駆動方式 フロント横置きエンジン+前後電気モーター4WD全長×全幅×全高 4660×1865×1660mmホイールベース 2690mmトレッド(前/後) 1605/1625mm車両重量(車検証) 2030kg(前軸1170kg:後軸860kg)エンジン形式 直列4気筒DOHC直噴+ポート噴射排気量 2487cc最高出力(システム最高出力) 185ps/6000rpm(309ps)最大トルク 228Nm/3600-3700rpmトランスミッション 電気式無段変速サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイルサスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイルブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ(前後) 235/50R20(ランフラット)車両本体価格(税込み) 714万円(version L)文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬(ENGINE2022年2・3月号)
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