定年退職を機にシトロエンDSを手に入れた小林さん。
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雑誌『エンジン』の大人気企画、「2台持つとクルマはもっと楽しい!」。今回は、人生の区切りに以前から気になっていたクルマを買った小林憲生さんを取材した。そのクルマはデビュー時から異次元と呼ばれていたシトロエンDS。ちょっと変わったクルマが来たら、オーナーの暮らしにも変化が起きた。なんだこの昆虫みたいなクルマは?1955年のデビュー時に異次元の自動車と言われたシトロエンDS。その異彩っぷりは、2021年の東京でも衰えていないと思った。無駄な装飾のないモダンなデザインのアウディA3スポーツバックと並べているから、余計にそう思うのだろう。2台を並べた駐車場は色づいた木々に囲まれていて、そうした背景にはアウディA3スポーツバックよりシトロエンDSのほうが似合うと思った。巨大な甲虫のような姿のせいかもしれない。
「私も最初に写真を見たときは、なんだこの昆虫みたいなクルマは? と思ったんです」笑顔で話すのはオーナーの小林憲生さん。1973年式のシトロエンDS23を2020年の12月5日に購入した。シトロエンを手にしたのは、これが初めてだ。「大学生のときにトヨタ・セリカ・リフトバック2000GTに乗っていたんです。かっこいいだろうなんて、いい気になってた。あるとき、先輩が“オマエ、甘いな”って言うんです。“世界一かっこいいクルマ知ってるか?”って。それがシトロエンDSだったんです」前述の昆虫発言は、先輩に言われて初めてシトロエンDSの写真を見たときのものだ。SFアニメの乗り物昆虫みたいだと思ったが、同時に凄い衝撃も受けた。シトロエンDSの姿が頭に焼き付いてしまった。「今年で60歳なんですけど、僕らが子供時代に大好きだったSFアニメに出てくる乗り物のようだと、あのときは思いました。アニメ『スーパージェッター』の流星号とか、特撮ドラマ『ウルトラマン』のジェットビートルとか」2021年1月に定年退職を迎えるので、自分へのご褒美として、また人生の区切りとして、何かクルマを買おうと考えた小林さん。ずっと頭の片隅にあったシトロエンDSはどうだろうか? と考えた。「シトロエンも50年近く前の旧車も初めてです。しかもハイドロはヤバイとか言われました。悩まなかったわけではありません」背中を押したのは、自動車雑誌の記事だったという。「シトロエンDSは現代でも十分に使えると書いてあったんです。専門ショップに何軒も電話して相談しました。2020年5月に東京にあるシトロエン専門店、ジャベルから“いい個体が入りました”という連絡があり、決めました」
購入したグレー・メタリックのシトロエンDS23は、2.3リッター直4OHVのインジェクション・モデルで、トランスミッションは4段の半自動変速機だ。「この半自動変速機がクセモノでした。ステアリング・コラムから突き出たレバーでギア・チェンジするんですけど、これが難しい。シフト・アップのたびにクルマがカックン、カックンと前後に揺れて大変でした。さらに、車両説明を受けたときに“坂道発進では左足ブレーキを使うといいですよ”って言われて」初めての左足ブレーキによる坂道発進は極めて難しく、助手席の奥さんは悲鳴をあげたという。
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