2022.04.27

LIFESTYLE

自宅で楽しむ南ヨーロッパの伝統菓子 エキゾチックなスイーツの旅へ!

リートゥス:手前は「ババ」、奥はボリューム満点の「カンノーリ」。

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海外旅行には行けなくとも、世界の本格スイーツで旅気分を味わうことはできる。パティシエールが手がける南ヨーロッパの絶品菓子を紹介しよう。

「サヴァラン」と「ババ」の違いは?

新富町の『リートゥス』は、イタリア各地で修業した塩月紗織氏が2021年にオープンしたイタリア菓子専門店。イタリア菓子といえばティラミスが有名だが、こちらの人気商品はナポリの郷土菓子「ババ」とシチリアの揚げ菓子「カンノーリ」。ブリオッシュ生地にラム酒のシロップをたっぷり染み込ませた「ババ」はフランスの「サヴァラン」とほぼ同じで、違いは形だ。「ババ」はコルク形をしているため生地が厚い部分が多く、一口で酔いそうなほどたっぷりとシロップが溢れだす。一方、「カンノーリ」は映画『ゴッドファーザー』にも出てくる伝統菓子。サトウキビなどの管状のものを指す言葉「カンナ」を語源とするのは、昔はサトウキビの茎に巻いて揚げていたからだという。バターではなくラードを使った生地は軽くサクッとした食感で、中にはリコッタチーズのクリームがふんだんに詰まっている。



南欧の菓子にはラードが使われることが多く、16世紀頃にスペイン・アンダルシア地方で生まれた焼き菓子「マンテカード」や「ポルボロン」も然り。スペインで修業を積み、現在は茨城県守谷で『スペイン菓子工房ドゥルセ・ミーナ』を営む藤本恭子氏によると、「マンテカード」の由来は「マンテカ(動物の油脂)でできた」という言葉。基本材料はラードと小麦粉、砂糖、シナモンなどの香料だ。この「マンテカード」から派生した「ポルボロン」は、現在はスペイン全土で愛されるクリスマスの菓子。どちらもほろほろと崩れる食感が持ち味だ。



懐かしさを覚える味

ポルトガルはスペインと同じく、かつて宣教師を通じて日本に南蛮菓子を伝えた国。そのせいか、彼の地の菓子にはどこか懐かしさを覚えるものがある。たとえば神保町のポルトガル菓子店『ドース イスピーガ』の「リス川のそよ風」は、もっちりした生地に詰まった卵黄のコクと砂糖の甘みが「鶏卵素麺」を連想させる。この菓子の発祥地は、ポルトガル中部のリス川が流れる町の修道院。卵黄と砂糖をよく使うのは修道院菓子の特徴だが、それは中世の修道院に裕福な家の娘が修道女として入った際、高価な卵黄や砂糖を使うレシピが各家から持ち込まれたためだとか。他方、店主の高村美祐記氏が「ワインの供に」と薦める「いちじくのチーズ」は、ドライいちじくと砂糖、ココアパウダー、アーモンド、シナモン、アニス、レモンを固めた南部の素朴な郷土菓子。濃厚な果実味とスパイスの香りが、エキゾチックな味覚旅行へ誘ってくれる。


文=小松めぐみ(フード・ライター) 写真=田村浩章

(ENGINE2022年5月号)

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