通常のリゾットはイタリア米でつくられるが、カルミネさんはあえて日本米を使用。完成した“スナップえんどうのリゾット”の食感は見事なアルデンテに!
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ライフスタイルの変化により日本人の米離れが進む中、日本米を自身の料理に取り入れようと奮闘するイタリア料理のシェフがいる。彼が試行錯誤の末につくりあげた、見事なリゾットを食してみた。
ガンベロロッソ2022 シェフ・オブ・ザ・イヤーに
今、イタリア料理の世界で最も注目されている若手シェフといえば、ナポリ出身のカルミネ・アマランテさんだろう。一昨年、29歳の若さで『アルマーニ / リストランテ』のエグゼクティブシェフに抜擢されたカルミネさんは、昨年末、イタリア版のミシュランといわれるガイドブック『ガンベロロッソ』のシェフ・オブ・ザ・イヤーに選出。『アルマーニ / リストランテ』も、世界中のイタリアン・レストランで20店しかない3フォーク(3つ星に相当)の最高評価を受けたのだ。
そんなカルミネさんが近年、熱心に取り組んでいるのがフードロス問題。形が不ぞろい、傷があるといった理由で市場に出回らない野菜、また使用されることの少ない部位の肉など、様々な理由で廃棄される食材を使用したメニューづくりに取り組んでいるのである。昨年夏には、フードロスバンク協力のもと、こういった食材を主役にした「ロスフードメニュー」を『アルマーニ / リストランテ』で展開。今年も再度、フードロスバンクとタッグを組み、さらにテーマを絞り込んだ新メニュー「サステナビリティ」を考案、5月から提供を開始している。
普通に食べれば美味しい日本米も……
全6皿で構成される「サステナビリティ」メニューの中でも、とりわけ印象に残るのが、目玉のような見た目が楽しい”スナップえんどうのリゾット”だ。実はこのリゾット、日本の米をサポートする目的で、リゾットの材料には一般的に不向きとされる日本米で作られている。国内の米の消費量は年々、減る一方で、2020年産米の消費量は、20年前に比べると2割以上も少ない。そんな日本米をイタリア料理にも活用したいとカルミネさんは考えたのだが、普通に食べれば美味しい日本米も、リゾットにすると粘り気が強くなりすぎ、アルデンテの食感を出すことができない。それでもアマランテさんは日本米の試食を根気よく繰り返し、その中から新潟県産の米を特別に配合したものを採用。調理時間などにも工夫を凝らすことで、イタリア米でつくったリゾットと比べても遜色のない逸品を完成させたのだ。口の中でパラパラと広がる、ほどよい弾力を持ったリゾットの米は、トッピングのポーチドエッグやパルメザンチーズ、グリーンピースのピューレとの相性も抜群。米を煮詰めるための出汁も、本来は捨てられてしまう野菜の切れ端を使うという徹底ぶりだ。
ちなみにカルミネさんが考えた、“フードロス食材のサポート”、”日本米のサポート”と並ぶサステナビリティ・メニューのもうひとつのテーマが”地方のサポート”。今回は北陸の食材に注目し、コースに取り入れたハマチと鰆も福井県産のものから選んだ。実は前菜に登場するハマチは、市場に出回らない”未利用魚”をなるべく捕らないように工夫された定置網で水揚げされたもの。メインで供される鰆の炭火焼のソースには、アスパラガスの切れ端部分で取った出汁が使われている。
ひとつのレストラン、ひとりのシェフができることは限られているが、それでもカルミネさんは自身の料理を通して「日本だけでなく、世界にメッセージを発信していくことが大事」と話す。普段は廃棄されている食材が、才能あるシェフの熱意と技術で、食通をも唸らせる見事な料理に生まれ変わる。そのメッセージの力は想像以上に大きいはずだ。
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE WEB オリジナル)
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