2022.09.10

CARS

リミッターは8500回転! これぞ自然吸気V10エンジンの醍醐味 ミドシップ後輪駆動のランボルギーニ・ウラカン・テクニカにスペイン・バレンシアで試乗!!

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ

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後輪操舵が効いている

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私はまず午前中に公道で試乗し、午後にサーキットを走る組に振り分けられた。宛てがわれたのは“黄色がかったオレンジ色”という意味の“アランチオ・キサント”というボディ・カラーの試乗車である。

巨大なドアを開けて乗り込むと、オレンジと黒に塗り分けられた外観同様、黒いアルカンターラとオレンジ色のレザーを見事に配したインテリアが迎えてくれた。カーボンファイバー製の思い切り低いシートに腰を落ち着けると、目の前に拡がるレーシーな風景に全身全霊を傾けて走ろうという気持ちをかき立てられる。センターコンソールの赤いフラップを持ち上げ、その下のスタート・ボタンを押すと、猛獣が突如、背後から襲ってきたかのような雄叫びを上げて、5.2リッターV10に火が入った。



走り出しはスムーズだが、足は決してソフトではない。サーキットから公道に出ると、悪い路面が続いていて、かなり突き上げがあった。しかし、高速道路に入るとそれは解消され、むしろ速度を上げるほどに路面に吸いつくように安定して走るようになる。やがて高速道路を降りて街を抜けながら山を目指す。街中にはスピードバンプが沢山設けられていて、それを乗り越える度に、アゴを擦らないかと気を使わされた。

その苦難を乗り越えて、辿り着いた山道での走りの気持ち良さは特筆ものだった。ドライブ・モードをスポーツに切り換えると、再び背後の猛獣が目を覚まし、アクセレレーターを踏み込む度に雄叫びを上げ、戻すとボコボコとバックファイヤーのような音を上げるようになる。だが、何よりも素晴しいのは、低速時には野太い唸り声のようだったエグゾースト・ノートが、回転数を上げるにつれてバババババという爆音に変化していき、さらに踏み込んで7000rpm以上まで回転を上げていくとフォーンという快音を上げながら、8500rpmのリミッター近くで自動シフトアップするまで、一気に吹け上がっていく、そのドラマチックなV10エンジンの表情の変化を楽しめることだ。自然吸気エンジンの醍醐味ここにあり、という息の長い吹け上がり感と力強く謳い上げるバリトンの美声に、私はとことん魅了された。

そして、山道で感心したのは、横幅が思い切りワイドで地面に這いつくばるように走るこのクルマが、見事にスーッ、スーッとコーナーをクリアしていくことだった。恐らく後輪操舵が効いているのだろう。まるでひと回り小さなミドシップ・スポーツカーのように自在に向きを変えてくれるのには舌を巻いた。

もし次々に現れる自転車乗りたちがいなかったら、もっと気持ち良くV10エンジンのバリトンの美声を響かせながら、次々に現れる大小のコーナーを駆け抜ける走りを楽しめたのに、とやや欲求不満な気分を残しながら、サーキットに引き返した。



縛られていた翼を解き放って

本当のお楽しみはここからだった。午後はレース・タイヤを履いた試乗車に乗り換え、インストラクターの運転するSTOの先導車を追いかけるようにして1周約4kmのコースを走ったのだが、これが圧巻だった。

考えてみれば、グランプリ・サーキットを、ひょっとすると、そんじょそこらのレーシングカーより遥かに速いスーパー・スポーツカーで、いきなり全開で走るのだから、恐ろしい話ではある。ところが、あまりにもクルマが機械として良くできているものだから、しっかりと先導車のラインをトレースし、無線で伝えられるペダル操作やステアリング操作、ギアシフトの指示さえ守っていれば、いつの間にかどんどん速度を上げて走れてしまうのだ。

むろん、自転車に邪魔された山道とは打って変わって、サーキットでは思い切りアクセレレーターを踏み込み、好きなだけ回転数を上げて、V10サウンドを満喫することができる。というより、これでもか、というくらいに爆音とバリトンの美声を聴き続けることになる。

ドライブ・モードはスポーツかコルサ(レース)を使うように指示されたが、コルサだとリミッターに当たっても自動シフトアップをしてくれないので、私はスポーツの方が走りやすかった。アップはクルマまかせで、ダウン・シフトだけ自分ですれば、あとはステアリングとペダルの操作に集中することができる。

コーナーでは想像以上に良く曲がるし、直線での安定性も抜群、ブレーキの効きも申し分ない。このクルマの持てる実力を解き放つのにサーキットは不可欠だと思った。フォーンという快音をあたり一面に響かせながら、公道では縛られていた翼を思い切り解き放つようにして1スティント4周を3セット走り、それでもまだ走り足りない気分で試乗を終えたのだった。で、結論。オンロード良し、それ以上にサーキットで良し。それが私のテクニカへの評価だ。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=アウトモビリ・ランボルギーニ


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■ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ
駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4567×1933×1165mm
ホイールベース 2620mm
トレッド(前/後) 1668/1627mm
車両乾燥重量 1379kg
エンジン形式 90度V型10気筒直噴DOHC
排気量 5204cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 640ps/8000rpm
最大トルク 565Nm/6500rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前後)  ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)245/30R20、(後)305/30R20
車両本体価格 約3000万円~

(ENGINE2022年9・10月号)

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