2022.10.15

CARS

おじさんたちは、なぜこんなにもフェアレディZにときめくのか? ポルシェにもスープラにもないZの魅力とは【3台比較試乗・前篇】

同じ2座クーペ、6気筒エンジンの日産フェアレディZ、GRスープラ、ポルシェ718ケイマンGTSを比較試乗!

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Zにはオーラがある

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島下 なるほど。面白いですね。僕の印象は試乗記を読んでいただくとして、僕のなかでまだ結論が出ていないのは、新型Zにはなんでこんなにオーラがあるんだろう? ということ。

荒井 カルロス・ゴーンが先々代、Z33を発表したときもめちゃめちゃ盛り上がった。

渡辺 Z32からZ33まで2年のブランクがありましたからね。基本的にフェアレディZって、フェアレディの時代で言えば1960年から、Zの時代で言えば1969年からずっと続いている。日産の歴史にとって一番大事なクルマと言っていい。だから新型が登場すること自体、お祭りになっちゃう。

バージョンSTのインテリア。赤と黒のツートーン内装はオプションとなる。丸いステアリング・ホイール、ダッシュボード中央の3連メーター、センター・コンソール付近に備えられた持ち上げ式ハンドブレーキなど、全体的にはクラシックな印象。それゆえに、大きなデジタル・メーターはインパクトを与える。


上田 電動化だ、EVだって言われていて、スポーツカーなんか乗っている場合じゃないという空気感のなかで、誰でも名前を知っているフェアレディZが新型で登場したから、オーッ! となった。

渡辺 価格も手頃だから、おじさんは舞い上がった。これがオレのアガリのクルマだと。

上田 オーラは見た目のインパクトが大きいんじゃないですか。フェアレディZってフォード・マスタングみたいなクルマだと思っているんですけど、現行マスタングが初代をオマージュしているように、新型Zも初代Zをあえて意識させているわけだから、おじさんにはたまらない。

島下 原稿にも書いたけど、Z34型のシャシーだからこそ、初代Zのようなフォルムが生まれた。

渡辺 クルマを薄く見せているところが巧妙ですよね。

荒井 とにかく路上でこれほどスマホを向けられたクルマはない。

渡辺 新型Zの統括責任者、田村宏志さんは、若い頃ケンメリからZに乗り換えたんですって。Zの方がカッコイイからと。で、そういうチャラチャラした動機で乗ってもらって構わないと言ってる。いい意味で新型Zのキャラクターはユルい。

島下 アイドル誕生なんですね。しかも外タレではない(笑)。

バージョンSTのシートは本革とスウェード調ファブリックのコンビとなる。掛け心地、ホールド性ともに良好だった。

気持ち良さが違う


荒井 そんな新型Zを箱根に連れ出してGRスープラとケイマンGTSとの乗り比べをやったわけです。

島下 アライさんは新型Zに最初に乗ったときと、箱根で乗り比べたときの印象が違うと言いましたが。

荒井 まず、3台とも気持ちのいいクルマだと思った。ただし、気持ち良さの種類が違う。GRスープラはとにかく速く走ることが気持ちいいというスピード重視型。ケイマンGTSはどんな速度でも操ることが楽しい意のまま型。で、新型Zは何が気持ちいいかというと、ラクに走れること。新型になってスポーツカー感は増したと思ったんだけど、こうして比べるとグランツーリスモとしての血は濃く流れていると感じた。だから長距離なら新型Zかなと。同時にケイマンGTSというかポルシェのスポーツカー度って、やっぱりすごいと思った(笑)。

島下 新型Zのラクラク・ポイントはどこですか?

荒井 しなやかで乗り心地がいいし、動きがほかの2台に比べるとおっとりしているところかな。

渡辺 まさにそれがZだと思う。モータースポーツの歴史でも、ほかの日産のモデルに比べて少ないし、やはりアメリカで多用途に使われる手頃なスポーティ・カー。まあ、Z32のときは一所懸命スポーツ寄りにしようとしたけれど、最終的にはアメリカのGTカーというものにまとまっている。バーン! と真っすぐ走って気持ちいいという。

島下 で、カッコよくて、どこにでも行ける。初代Zはアメリカで売れましたけど、そのときのアメリカ人が言っていたスポーツカーってMGBとかですから。決してカミソリみたいなスポーツカーではない。新型Zの開発キイワード「ダンスパートナー」は、クルマのテールを振って楽しいというよりは、どんなシチュエーションでも寄り添ってくれて気持ちがいいというものだと思う。

上田 ケイマンGTSとGRスープラはチューニング・カーのような気がした。新型Zもこのあとにニスモがあるだろうし。ちょっと土俵が違うかなと。

島下 でもパワーはほぼ同じ。ケイマンGTSが400ps、GRスープラが387ps、新型Zは405psだからね。

渡辺 新型Zはパワーがあり過ぎるぐらいある分、余計にシャシーが古く感じる。

島下 まあ、実際古いからね(笑)。でもそれが嫌じゃないっていうのがいい。ケイマンGTSはシャシーがビシッとしていて、どこまでもイケちゃうから、気持ちいい速度域がどんどん上がっていく。新型Zはもうちょっと手前で日本の峠道ぐらいがちょうどいいのかもしれない。

◆新型Zとくらべて、GRスープラと718ケイマンGTSはどうだったのか? この続きは後篇で!

語る人=島下泰久+渡辺敏史+荒井寿彦(ENGINE編集部/まとめ)+上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=神村 聖



■ポルシェ718ケイマンGTS 4.0
駆動方式 ミドシップ縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4405×1800×1285mm
ホイールベース 2475mm
車両重量 1470kg
エンジン形式 水平対向6気筒DOHC
総排気量 3995cc
最高出力 400ps/7000rpm
最大トルク 430Nm/5500rpm
変速機 デュアルクラッチ7段自動MT
サスペンション 前 マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション 後 マクファーソン・ストラット/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 235/35R20 265/35R20
車両本体価格 1113万円(テスト車は1452万8000円)

■日産フェアレディZバージョンST
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4380×1845×1315mm
ホイールベース 2550mm
車両重量 1620kg(9段AT)
エンジン形式 V型6気筒ツインターボ
総排気量 2997cc
最高出力 405ps/6400rpm
最大トルク 475Nm/1600~5600rpm
変速機 6段MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 255/40R19 275/35R19 265/35R20
車両本体価格 646万2500円(6MT、9AT同額)

■トヨタGRスープラ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4830×1865×1290mm
ホイールベース 2470mm
車両重量 1530kg
エンジン形式 直列6筒DOHCターボ
総排気量 2997cc
最高出力 387ps/5800rpm
最大トルク 500Nm/1800~5000rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前 マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 255/35R19
車両本体価格 731万3000円

(ENGINE2022年11月号)

◆モータージャーナリストの島下泰久さんの新型フェアレディZの試乗記はコチラ!
日産フェアレディZ、2台同時比較試乗! ズバリ、新型Zは乗ってどうだったのか? 選ぶのはMTかATか? ジャーナリスト島下泰久の答えやいかに

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