2023.03.07

CARS

国産ミニバンのオラオラ顔がダメな人にオススメ! プジョー・リフターに追加された3列7人乗りのロングに試乗! フランスのちょっとオシャレなミニバンです!!

プジョー・リフター・ロング

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兄弟車のシトロエン・ベルランゴとともに3列7人乗りのロング・バージョンが加わったプジョー・リフター。冬の軽井沢で試乗した。エンジン編集部のウエダがリポートする。

バランスの悪くないロングボディ


「あれ、長いけど、長くないな」と思ったのは、プジョー・リフターに加わった、ロングという7人乗車版の運転席に身体を預けてすぐだった。バック・ミラーの中の、ぐっと遠くのほうに小さく3列目のシートが写っている。全長は4760mm。5人乗車版に比べ、伸びているのはホイールベースで190mmと、リア・オーバーハングで165mm。ライバルであるルノー・カングーの2代目モデルには、欧州市場向けに同じような7人乗車版のロングがあったけれど、いかにもバランスが悪く、どこかコミカルな感じだった。



でも、リフターは違う。もう一度クルマを降りて確認しても、やっぱり間延びした感じが希薄だ。フェンダー・アーチをはじめ、車体下部をぐるりとつなぐ樹脂部品がいいアクセントになっている。現行プジョーではお約束の、ヘッドライトから斜め下方へ繋がるシグネチャー・ランプの“牙”が小さいせいか、どこか大人びた道具感もあって好印象。アイシー・ホワイトの試乗車だと、樹脂と車体色のコントラストが強く、コマーシャル・ヴィークル出自であることを意識させられるけれど、むしろ下手に着飾っておらず、欧州の実用車らしくて素朴でいい雰囲気。いっそ補修用バンパーを使って、黒い部分を増したベーシック仕様があっても似合いそうだ。

小径ステアリングと上から見下ろす計器、3座独立の2列目などは5人乗車版と共通。サンルーフの設定がないなど装備の選択肢も少ないのは残念。




1列目と2列目の仕立ては5人乗車版と同じ。そちらでは“アリュール”と“GT”という2つあるグレードがロングはGTに一本化され、色の選択肢が少ないのは惜しい。2列目、3列目はシートがそれぞれ独立してダブルフォールドし低く折り畳める上、3列目は脱着も可能。ただしそうとう重く大きいから、取り外し時は気をつけないとギックリ腰になりそうだ。3列目は175cmの筆者だと開口部が狭く乗降時こそ気を遣うが、座ってしまえば居心地は上々。床下収納できる、小ぶりのエマージェンシー的なものではなく、日々付けて使うからこそ光る、ちゃんとしたシートだ。この手のシートは外した時の処遇に困るが、例えば車外でロッキング・チェアみたいに使える後付け部品があったらいいのに、なんて考えた。



脱着も可能な大人も無理なく腰掛けられる3列目。背面を倒すと座面が前に移動しつつコンパクトに。

使ってこそ光るのはシートだけでなく、走ってみてもそうだった。ひとことでいえば骨太でスポーティ。5人乗車版と違うのは、2列目の足元下に異なる形状の筋交いが入り車体のがっちり感が維持されていることと、最大2693リッターという、1.5倍近い最大積載量に対応した専用スプリングの採用。結果、車高はわずかに20mm上がっているのだが、この足さばきがまたいい。GTはアリュールの16インチに対し17インチが標準となりキャパシティが上がっていることと、小径ステアリングのやや機敏なフィールを上手く活かしている。空いた平日の軽井沢郊外を、想像以上に速く気持ち良く駆け抜けていける。

助手席、2列目とともに座面を倒せばフラットで広大な空間が。


撮影のため少しだけ山中にも踏み込んだが、残雪でぬかるんだぐちゃぐちゃの泥道も、走行モードを切り替えられるアドバンスド・グリップ・コントロールのおかげでタイヤを滑らせず、ぐいぐい進むことを確認。急な坂も安心して下れるヒル・ディセント機能付きで、これは兄弟車のシトロエン版、ベルランゴでは選べない、リフターだけの装備だ。積極的に選ぶ価値がある。まもなく日本の道を3代目カングーが走り始める。リフター・ロングはそれを迎え撃つ、独自性のある強力なライバルになるに違いないと、僕は思う。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明



(ENGINE2023年4月号)

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