2023.05.04

CARS

7人乗りを追加したシトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターに対し、ガソリンとディーゼルの二刀流をひっさげて上陸したカングーを比較試乗! 

シトロエン・ベルランゴ・ロング・シャインXTRパック、プジョー・リフター・ロング、ルノー・カングー・クレアティフ。

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ルノー・カングーが独占していたコマーシャル・ヴィークル・ベースの乗用車カテゴリーにライバルのPSA陣営からシトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターが上陸して早4年。このたび上陸した新型カングーと、ベルランゴとリフターに加わった7人乗り仕様を3台集めモータージャーナリストの佐野弘宗とエンジン編集部員のシオザワ、ウエダの3人が乗り比べてみた。

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フランスのハイエース

佐野 カングーを筆頭に、リフターとベルランゴはいわば「フランスのハイエース」のようなもの。特に新型カングーの発売を見据えたかのようにリフターとベルランゴに追加された「ロング」は、本国ではタクシーや送迎車用といった感じでしょう。

塩澤 毎年のように日本中からカングー・ファンが大挙集まる「カングー・ジャンボリー」に、昨年初めてフランスのメディアが取材に来た。自分たちがよく知る仕事グルマにいろんな使い方があって、カングーだけでこんなに人が集まること自体に心から驚いていたんだって。



上田 日本に置き換えると、フランスでなぜかハイエースやプロボックスの熱狂的なイベントが開かれている感覚でしょう。昔のRVやミニバンもそうですが、実は日本人はクルマで遊ぶのが上手い。

佐野 かつてのバニングや最近のハイエースのカスタマイズなど、日本には商用車で遊ぶ文化が昔からある。カングーを見て、面白い遊べそう……と気づく直感力は、日本人ならではかもしれない。ヤンキー車や「痛車」にしても、好き嫌いはあっても、クルマ遊びは、欧州より日本の方がよっぽど自由で多様性もある。

上田 乗用車として使うのにわざわざ特注でブラック・バンパーにするなんて、日本のカングーは欧州から見るとヒネリが効きすぎている?

あっという間に激戦区

塩澤 そんなカングーの異様な盛り上がりを見て、プジョーやシトロエンも「ウチにもクルマがあるぞ」となるのは当然で、2020年に立て続けに日本で発売。そして今回ロングも追加となった。

佐野 いかにカングーでも2世代20年以上も市場を独占すれば、ほかのが欲しいというニーズは出てくる。

上田 先代カングーの仏デビューは2008年。旧式のプラットフォームは、今も味わい深いけれど、安全性などさすがに足りない部分も出てきていたのは否定できません。

塩澤 巌流島に例えるなら、まるで佐々木小次郎を2人揃えたようなプジョー・シトロエンに対して、インテンスとクレアティフいう二刀流と、さらに2種類のエンジンで受けて立つカングーは宮本武蔵といえる。



佐野 カングーでいうと、日本特注グレードのクレアティフがベルランゴの、本国での主力となるインテンスがリフターのライバルかな。

上田 いずれにしても、気づかないうちに3ブランドがひしめく熾烈な市場になってしまった。5年前には想像もつかなかったことです。日本でのカングーはいわゆる「ゆるキャラ」的な売れ方をしてきた。その意味でも日本でカングーと真正面のライバルはベルランゴでしょう。

佐野 ただ、本国のエンジニアに聞くと、新型カングー最大の開発テーマは「より上質なMPVへの脱皮」で、競合車として意識しているのはリフターだけという。ベルランゴは「よりヤング・ファミリーカー志向で、ツール感が強い」との理由で、欧州では競合車としては眼中にない……という雰囲気だったのは面白い。

上田 日本で売れているのはリフターより圧倒的にベルランゴ。昨年の販売実績だと、シトロエン全体の約半分がベルランゴだったとか。対して、日本でのリフターはキャラクターづけに悩んでいるフシはある。

塩澤 実際に並べてみると、リフターとベルランゴは基本的な形が同じなのに、きっちり別物に見える。このデザイン力はたいしたものだ。

上田 プジョーがシトロエンを吸収したのが1974年。50年近くもハードウエアを一部共有しながら個性のちがうクルマをつくり続けてきたノウハウはさすが。最近はさらにオペル、そしてイタリアやアメリカとも一緒になって、今後のクルマづくりは注目です。

SUV仕立てのキャラクター化を狙った意図が感じられる。

佐野 今のプジョーとシトロエンがそれぞれ独自のステアリング・ホイールを使うようになったのは、すごくいいアイデアと思う。乗用車ではダンパー構造を使い分けたりしているけど、商用車ベースのリフターとベルランゴではそこまでやっていない。でも、こうしてステアリング・ホイールがちがうだけで、乗り味も好みがハッキリと分かれる。

塩澤 ベルランゴはポンと置いただけでライフスタイルが変わってしまう強烈なキャラクターがあるよ。

佐野 カングーが長い時間をかけて積み上げてきたキャラクターに負けないくらいに、ベルランゴはキャラが強い。対するリフターは日本だと性格がつかみづらい。



シートアレンジもベルランゴと共通で、3列目シートの大きさや厚みも2列目シートとほぼ同じで大人がゆったり座れる空間だ。

上田 そういえば、以前リフターの屋根に大きなハシゴをのっけて仕事をしている人を見かけたことがありますが、あれはカッコよかった。

塩澤 いずれにしても、リフターで「この手があったか」という乗り方やいじり方を見つけたら、世界のパイオニアになれるよね(笑)。

佐野 それにしても、リフターとベルランゴに追加されたロングは素直に魅力的。欧州の3列シート車はサード・シートに大人が座れないとか、取り外し式で収納できないとか、日本人のミニバン審美眼にかなうものはなかなかなかった。でも、リフター/ベルランゴは3列目でも大人がゆったり座れるし、簡素なタンブルアップ式ではあっても収納機能もつく。これは画期的だと思う。

上田 パワー・スライド・ドアはないし3列目も完全に収納はできない。それを差し引いても、今までにないくらい魅力的な欧州ミニバンです。

塩澤 現在の日本市場に占める輸入車のシェアや、さらにその中の輸入ミニバンの台数なんて微々たるものだけれど、国産ミニバンに飽きている人やちょっと物足りない人、もっというと国産ミニバンの横綱であるトヨタ・アルファードに乗りたくない人には格好の選択肢だ。

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