2023.09.05

CARS

911S(1969年)、911T(1970年)、911カレラ(1975年930型)ってどんなクルマ? ナローから993まで空冷モデルにイッキ試乗!【911誕生60周年記念エンジン蔵出しシリーズ#1 前篇】

ナナゴーのカレラにやられた

advertisement


ーー930は本当に乗りやすい。ナローも新しくなるほど乗りやすくなりますが、930はいっそう……。

吉田 2.7リッターになるとトルクも本当にあるから。フレキシブル。今の感覚でもまったく普通に走れる。

スズキ 75年式のカレラははじめて見た。これはセクシーだ。個人的には、ナローのナナサン・カレラより断然カッコいいと思う。

930 カレラ(1975年式930カレラ/2.7リッター) 1974年に登場した930型(通称ビッグ・バンパー)は、衝撃吸収バンパーと現代に通じる一体型シートが特徴。排気量は全車ナナサン・カレラと同じ2.7リッターだが、燃料供給はボッシュの電子制御Kジェトロニック。ただ、74年と75年に設定された「カレラ」だけは、ナナサン・カレラと同じ機械式燃料噴射の210psエンジンで、そこに豪華装備が与えられた最上級モデル。

吉田 同じ930初期のカレラでも74年式はダック・テールになる。僕個人はダック・テールのほうが好きだけど、このあたりは完全に個人的見解だな。最良であるかどうかと、個人的な好き嫌いは別だから。

ーーただ、ナローと比較すると、930は歴然と重くなっている。

吉田 911は常にそうなんだ。重くなった、ダルになった、乗用車っぽくなった……といわれつつも、確実に乗りやすくて速くなる。だから結局、みんな納得してしまう。

スズキ それにしても、930になると一気に派手になる。ナローはエレガントなスレンダー美人だったのに、930はブリジット・バルドーというかマリリン・モンローというか、享楽的な肉感性が出てくる。これは70年代という時代なのかな。

吉田 時代性もあるけど、物理的に太いタイヤが必要になったからという側面が大きい。ボディやキャビンをそのままに、太いタイヤを履くにはああするしかないから。930の時代はどんどんオーバー・フェンダーが大きくなっていった。

スズキ ターボが出たのもこの世代で、やっぱりグラマー・コンプレックスの美意識があったんじゃないか。意識的にふくよかなデザインだ。

930 カレラ(1989年式930カレラ/3.2リッター) 「カレラ」は356やナローでは特別なホモロゲ・モデル、930になってからも高性能モデルにだけ与えられた。しかし、1984年以降は、今と同様に、自然吸気モデルを示すスタンダードなネーミングとなった。

吉田 本来は必要にかられたものだろうけど、他のスポーツカーは文字どおりのビス留めのオーバー・フェンダーだったりした。こういう一体化させるデザインはポルシェならではのうまさといえる。

スズキ それにしても、この75年式カレラは特別に魅力的だった。ナローと較べると確実に重いけれど、エンジンがシャーンと吹けるから、重さがまったくイヤじゃない。サスペンションも適度に柔らかくて、乗り心地もトラクションもいい。

吉田 たしかに、個人的にはナロー派だけど、この個体にかぎってはかなりひかれる。これで74年式のダック・テールだったら本気でほしい。まだパワステのつかない930は基本的にステアリングが重いんだけど、これは例外的に軽くてフィーリングもよかった。ジオメトリー調整がうまくいっているんだろうな。

スズキ それにしても、930は乗りやすい。最良かどうかはともかく、今回乗ったなかでの個人的ベストは、赤い75年式カレラだ。ナローのスリークさも悪くないけど、930の肉感は捨てがたい。衝撃吸収バンパーの蛇腹のようなデザインは、機能的必然だけではない遊び心がある。

吉田 長くつくられたスポーツカーといえば、空冷911のほかにもMG-Bやアルファ・スパイダーがあるけど、MGやアルファはいってみれば、単純に古いままつくり続けただけ。その点、911は常に進化し続けた。だから、それぞれの世代に特有の魅力や時代性がある。

ーー今48歳の僕も、911のカタチといえば、やはり、この930ボディのイメージが強いですね。

吉田 話がナローに戻るんだけど、一般に「究極のナロー」といわれるナナサン・カレラRSが素晴らしいのは、このフレキシブルで扱いやすい2.7リッターエンジンが、軽量なナローに載っているためだからね。

◆さらに話は964そして993へ! この続きは後篇で!!

話す人=吉田 匠+鈴木正文(ENGINE編集部) 司会=村上政(ENGINE編集部) まとめ=佐野弘宗 写真=柏田芳敬 車両協力=ミツワ自動車株式会社

(ENGINE2012年2月号)
▶エンジン・バックナンバーおすすめ記事をもっと見る

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement