2023.09.23

CARS

【保存版】空冷エンジンとの決別! 996型911とはどんなポルシェだったのか? 【『エンジン』蔵出しシリーズ/911誕生60周年記念篇#10】

いまなお熱い支持を受けるタイプ996GT3

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911誕生60周年を記念して『エンジン』の過去のアーカイブから"蔵出し"記事を厳選してお送りするシリーズ。10回目の今回は、991型911の登場を機に2015年6月号に掲載したポルシェ911特集から、「ポルシェ911原論」と題した901から991まで続く進化の歴史を紐解いたストーリーの3回目、水冷化された996から991までの大躍進の様子をお送りする。◆1回目の901から読む場合はこちら!

1997年、ついにタイプ996を発表 完全刷新と賛否を分けた水冷化

サスペンション問題をついに解決したポルシェは、長年、信を置き続けた空冷エンジンと遂に決別の時を迎える。新設計水冷エンジンの採用が要求するボディ設計刷新は、ボディを大きくするが、運動能力も大きく引き上げた。

ポルシェは、新規に完全水冷式の新世代エンジンを開発して996型を投入することになる。901プロトタイプの発表から、実に35年後のことである。ポルシェの空冷エンジンからの撤退は、チェコのタトラが空冷V8エンジンをリア・マウントするT600/700系の生産を打ち切り、乗用車部門を撤収したのと、奇しくも同時期となった。




空冷式と決別して新規開発された996用の水冷エンジン。

タイプ996は空間設計の刷新に合わせて、911史上初めて、居住空間が拡大された。水冷化や厳しくなった衝突安全規制への対応と同時に居住性向上を行ったわけである。シャシーのサイズは993において先行して拡大されていたが、996ではホイールベースを80mm伸ばして、シャシー性能のさらなる引き上げも行われた。

構成部品の何もかもが901型ポルシェから離れた996は、その投入前に市場導入されていたミドシップ・エンジンの2座オープン・スポーツカー、ボクスターとボディ前半やエンジン設計を同じくするなど、量産車としてのスケール・メリットがタイプ993までの911から飛躍を遂げ、長年つきまとっていた経営難の問題からついにポルシェを解放する大役を成し遂げる



しかし、熱心な911ファンからはいくつものクレームがついた。ボクスターと共用のヘッドライト、ボディ剛性の不足、減速開始時にノーズ・ダイブを起こすピッチング規制能力の不足、そして、特に964時代までの空冷ボクサー・シックスに顕著だった特徴的な排気音の欠如などだった。ポルシェはそうした批判に即座に応答し、996の後期型ではことごとくそれらを解決してみせた。水冷化と同時に外寸が明確に小型化されていたエンジンの排気量拡大にも着手し、3.4リッターから3.6リッターへと移行する。

2004年、タイプ997登場 ついにPDKを投入

996はサスペンションの基本設計を除く何もかもが新しかった。それゆえに、初期型では力及ばずのところも少なからずあった。しかし、驚くべき速さで解決すると、その完成型ともいうべき997を世に送り出し、ひとつの完成を見ることになる。



ポルシェが発案者のツイン・クラッチ変速機が遂に登場した。

996の基本設計を踏襲して徹底的に改良が加えられたのが、タイプ997である。3.6リッターに加えて3.8リッターが用意されたのも997からだ。4WDモデルのハンドリング特性を2WDモデルと近似的なものとするロジックも確立される。すると、後期型では根本的に設計し直した第2世代の水冷エンジンを投入。同時に燃料供給装置も気筒内直噴式に移行した。後期型ではターボが新世代の4WD機構を採用し、トルク配分が意図通りに制御可能な電子制御式に進化、4WD911の理想がほぼ完成を見ることになる。自らがオリジネーターだったツイン・クラッチ式変速機、PDKも投入された。

そして、ポルシェ初のSUV、カイエンの大ヒットで得た潤沢な資金を後ろ盾に全方位的な飛躍を目指した、991が開発されるのである。

991は超一級のスポーツカーとして再び時代の先端に踊り出た。しかし、依然として2+2の実用GTであることを止めていないのである。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部)

(ENGINE2015年6月号)

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