SLRマクラーレン芸能活動を目指し始めたのは30歳から。初めて自分で買ったクルマはメルセデス・ベンツML320だった。その後、初代ポルシェ・ボクスターSに乗り換える。そして39歳で芸能界デビューを果たすが、若い頃にあるスーパーカーとの衝撃的な出会いがあったという。「ヨーロッパのモーターショーでSLRマクラーレンを見たんです。衝撃的なスタイリングで、スーパーカーのなかでも異質な感じでした。メルセデス・ベンツのクルマだけど、カーボン製のモノコックやボディはマクラーレンがやっているという。F1が大好きな僕にとってマクラーレンと言えば、マクラーレン・ホンダ、そしてセナです。そういうことが頭に浮かんで、脳裏から離れないクルマになりました」芸能界での仕事が順調に進むようになったある日、友人とクルマの話をしていて、勧められたのがSLRマクラーレンだった。初めて見た日の衝撃が蘇り、栃木県の中古車ディーラーに駆け付け、その場で購入したという。「これは運命だと思った。そうか、オレのファースト・スーパーカーはSLRマクラーレンなんだと」SLRマクラーレンで走り出したときのことはよく覚えているという。「シフトレバーの蓋を開けて、スタート・ボタンを押す。ボボボン! という独特の野太い音が響きました。いまのクルマと比べるとステアリングは重いし、回頭性も良くない。でも、遠出するときのグランドツアラーとしては素晴らしかった。目的地まで一直線ですっ飛んでいくようなロケット感が良かったです。あの内燃機関が燃え上がって、すごいトルクで進んでいく感じがいいんですよ。いつかもう一度あれに乗ってアウトバーンをズコーンと走りたい」
愛車はピスタ・スパイダーSLRマクラーレンから乗り換えたのはランボルギーニ・ウラカン。そしてフェラーリ488GTBへとスーパーカー遍歴は続く。冒頭のランボルギーニとフェラーリの違いをハッキリ述べた発言は、この2台の経験が基になっている。「ランボルギーニは子供の頃に一番憧れたブランドです。フェラーリより男っぽくて。ファイティング・ブルは“百獣の王”に相応しいかなと思って購入しました。ウラカンはコンパクトなのがいいですよね。スタイリングが抜群で、見ただけでテンションが上がりました」ポルシェ、マクラーレン、ランボルギーニと来たら、フェラーリしかないということで488GTBへ乗り換える。冒頭で述べたフェラーリの滑らかさはクセになるという。「いまのフェラーリは街中では静かに走れるし、レース・モードでは最強になるし、すべて解除すれば気持ち良く回せる。オールラウンダー感があります。ずっと最上級ブランドであるというイメージを保ちながら、人気モデルを輩出し続ける。最新モデルにはその歴史が反映されている。フェラーリは最強のブランドだと思っています」フェラーリ488GTBの次はマクラーレン720S。「マクラーレンの大量生産車ってどんなものだろう? 一度乗ってみないと、と思ったんです」最新のマクラーレンを味わった武井さんは、もう一度フェラーリに戻った。それが現在の愛車、フェラーリ488ピスタ・スパイダーだ。「仕事もピスタ・スパイダーで行きますよ。そのために買ったんですから(笑)。もう4万kmを超えました。人に運転してもらって移動するほどつまらないことはないですよ。移動時間すらもエンターテイメントにしてくれる相棒がスーパーカー。それが僕なりの人生の楽しみ方なんです。そのメーカーの歴史や技術と、いま一緒に時間を過ごしているという充実感は何物にも代えがたい」仕事のあとはドライブをして帰ることが多いという。「首都高を走ったり、アクアラインで外房を回ったり。ゴルフも助手席にバッグを乗せて行きます」
クルマの運転は運動のフィーリングに近いと言う。「200mを22秒とかで走るんですけど、地面をこう踏んだらいいなとか、コーナリングのときにちょっと首を傾けるだけで曲がりやすくなるということがあるんです。そういうスポーツで感じてきたことと、クルマのコントロールはすごく近い。自分が走っているような感覚でクルマの挙動を感じています。タイヤにいまこういう圧がかかってるなとか、もうちょっと舵角を入れたらどうなるのかな? とか、そういうことを感じながら走るのが好きです」運転技術というか運動技術としてクルマを扱っている武井さんにとって、クルマとはなんですか?「孫悟空の筋斗雲ですかね。孫悟空はあの雲を手に入れてから自由に移動できるようになって、様々な困難を乗り越えていく。僕もスポーツで実績を残しただけでは世の中に力が届かなかった。芸能界で僕のスポーツの経験や知識を世の中に知ってもらって、羽ばたくことができた。そのスタートに自分の筋斗雲を手に入れることができた。しかもそれがずっと憧れていたクルマだった」クルマの真価に負けないように、自分の能力も上げていこうと思っている武井さん。クルマは仕事やトレーニングに対するモチベーションにもなっているという。スーパーカーは、百獣の王のエネルギーなのだ。
▶「わが人生のクルマのクルマ」の記事をもっと見る 文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭 ヘアメイク=奥野 誠(CHEEK)(ENGINE2023年5月号)
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