2023.09.05

CARS

ポルシェ964、993ってどんなクルマ? ナローから993まで空冷モデルにイッキ試乗!【911誕生60周年記念エンジン蔵出しシリーズ#1 後篇】

60年の間に記憶に残る数多くのモデルが登場した911、雑誌『エンジン』でもこれまでたくさんの911を取り上げてきた。そこで911誕生60周年記念として『エンジン』の過去のアーカイブから"蔵出し"記事を厳選してお送りするシリーズ。2回目の今回は、エンジンの前編集長の鈴木正文氏とモータージャーナリストの吉田匠氏が、今はなきミツワの御殿場ファクトリーを訪ねて歴代911を乗り比べた2012年2月号に掲載された「歴代911のベストを探す ナローから993まで空冷モデルにイッキ試乗!」の後篇をお届けする。◆前篇から読む場合はこちらから!

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ベスト・デザイン911

吉田 その衝撃吸収パンパーをさらに巧妙にデザインしたのが、964ともいえる。930のバンパーをさらに進めて、ボディに一体化した。

スズキ 個人的には、これがベストデザイン911だと思う。

964 カレラ(1994年式964カレラ/3.6リッター) 1989年に初の4WDであるカレラ4が先行発売された964。翌90年に後輪駆動のカレラ2と初のティプトロが登場。エンジンはじつに3.6リッター(250ps)まで拡大したが、ボディ・サイズはほぼ変わらず、全幅1650mmは今のホンダ・フィットより小さいのだから驚く。

ーー964といえば、カレラ4が初めて出た911でもあります。

吉田 最初のカレラ4は本当に曲がらなかった。年を経るごとに確実に曲がるようになっていったけど、本当にハンドリングがほめられるカレラ4は993になってからだ。

スズキ でも、993になると、まったくちがうクルマだから。

吉田 サーキットで各世代の911を乗り較べると、シャシーが一気に進化した感があるのは、930から964になったとき。964と較べると、930は重心が高いというか、リア・エンジンの悪い意味での恐怖感がまだ残っている。



スズキ
 ポルシェが経営的にいちばんキツかったのが964の時代だ。964ターボの開発のとき、トヨタからエンジニアを呼んで「カイゼン」して、工数を40%減らしました……なんて自慢していたな。

吉田 完全にハンドメイドだった356から911になったときもそうだけど、911でもモデルが替わるたびに、「ポルシェはまた利幅を増やした」と思わせる部分はある。

ーー911が新しくなるたびに「またコスト・ダウンした」と言い切るエンスージァストもいますよね。

吉田 ……そうとは思いつつも、911の場合は、クルマが確実によくなるから納得してしまうんだ。

スズキ でも、964は今から見ると素直に魅力的だ。911全体の進化過程では中途半端かもしれないけど、それゆえの魅力もある。昔ながらの911の味がありつつも、パワステとエアコンがつく。

吉田 普通に乗るのに必要な装備がすべて備わっていながら、ナローに通じる味わいもしっかりある。

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