2023.11.26

CARS

【保存版】「身体じゅうの細胞が騒然としている!」 踏み込んだ瞬間に全身が総毛だつ「599GTO」とはどんなフェラーリだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ フェラーリ篇】

フェラーリ599GTO

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ハードにブレーキングしろ!

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「ハードにブレーキングしろ。このブレーキは絶対に大丈夫だから全力で踏むんだ。マネッティーノのスイッチを“レース”にセットするのを忘れるなよ。たとえ“スポーツ”で走っているときでも、全制動をかけるときは“レース”に切り替えるんだ。ABSの制御が変わって、邪魔が入らないようになる」

開発ドライバーの言ったことは本当だった。ABSがまったく介入してこない。フル制動を終えて、ステアリングを切り込む。2速で回り込むヘアピン。グイッとノーズが入る。クリップを過ぎてスロットルを徐々に開けていくと、タイヤのトレッド面を削りとらんとしているかのようなトラクションがかかる。リアに十二分な荷重がかかっていなければ不可能な、まるでミドシップ・カーを思わせるような駆動力。全身のざわめきはまだ止まない。



長く回り込む左中速コーナーにハーフ・スロットルでアプローチ。アンダーステアが顔を覗かせそうなぎりぎりのところで我慢しながら、つい誘惑に駆られてスロットルを開けると、お尻がピクッ、としたかと感じるが早いか、ズズッ、ズズズッとゴムがこすれるような感触を伴って、視界がわずかに角度を変えた。クルマは容赦なく前へ進む。カウンター・ステアを当てる必要すらなかった。それはあたかも神の手が助けてくれているかのようだった。

第2世代へと進化したサスペンションのSCM2可変ダンピング装置は、これまで予測でまかなっていた領域まで実測で状況把握できるようになったセンシング技術の進化と、599XXからもってきた最新演算装置のタッグで、信じられないほど巧妙に姿勢を制御する。そこへ4輪ブレーキの個別制御を微細に織り込むESPと、さらに、スーパー・ライセンス受給者のような巧さでトラクションを最適化するF1―Tracが密接に組み合わされた結果、このクルマは基本的な操作ミスさえおかさなければ、エキスパート・レーサーのような走りができるようになっている。しかも、ドライバーは自分でそう操っていると錯覚しかねないほどに、支援は巧妙だ。



偉大なフェラーリ

気持ちに少し余裕ができたと自覚したその途端に、鼓膜を圧する炸裂音に包み込まれた。直線、3速全開。これこそパワーだといっているかのような力強い音の洪水。48本のバルブが躍動する機械音とそれを上回る燃焼音。そこへ市販車ではありえないような音量の排気音が渾然一体となって皮膚に襲いかかってくる。サウンドとかミュージックとか言っていられるような生やさしいものじゃない。

ギア・ノイズやパネルの共振もなければ、混濁もない。耳栓が必要なわけでもないから、これは演出なのだろうけれど、ここには甘さがない。激烈にして荘厳な音のクレッシェンド、圧倒的な炸裂感だけが突き刺さってくる。

イン・ラップとアウト・ラップを含めて3周のセッションを2回というフィオラノ・テスト・トラックの試乗を終えると、身体が軋むような疲労がどっと襲ってきた。ステアリングは重くない。ブレーキだってサーボが利いている。フルバケット・シートのサポートも申し分なかったのに、あまりの速さに身体が消耗したのだとしか考えられなかった。



午後、フィオラノを出て、一般道へ繰り出した。変速機をオート・モードにして田舎道の流れに乗る。599GTBから100kgも軽量化されて、硬質な軽さを漲らせるこのスーパー・スポーツは、荒れた石畳もなんなくこなしてみせた。そっと走っていれば、ほとんど1500rpmぐらいでシフト・アップを繰り返し、いつのまにか6速へ入っている。

カーブの前で軽く減速しようとすると、ときおりファンッ! ガコッ、とかいって、大げさなシフト・ダウンをやって見せ、場違いな雰囲気を漂わせたりはするけれど、無理強いをしている思いを抱くほどではない。

599GTOは、599GTBとはかけ離れたスーパー・マシンだ。911に対するGT3や、430に対するスクーデリアの違いをはるかに超えた大きな違いが、そこにある。“GTOって、こんなかたちでよみがえらせてしまっていい名前なの?”と、乗る前には思っていたけれど、「これは599XXを公道でも走れるようにホモロゲートしたクルマだ」と語った開発者の言葉に感服した。

これは偉大なフェラーリである。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=矢嶋修

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■フェラーリ 599 GTO
全長×全幅×全高 4710×1962×1326mm
ホイールベース 2750mm
車輌重量(乾燥) 1605(1495)kg
エンジン 自然吸気65度V型12気筒5999cc
最高出力・最大トルク 670ps/8250rpm・63kgm/6500rpm
変速機 リア・トランスアクスル6段自動MT
ブレーキ ブレンボCCM2ディスク+パッド
タイヤ(前・後) 285/30ZR20・305/35ZR20
車両価格 4272.0万円(世界599台限定)

(ENGINE2010年8月号)

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