2024.01.13

CARS

【保存版】458イタリアとスパイダーの違いは、屋根の違いだけではなかった! オープンの458スパイダーはどんなフェラーリだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/フェラーリ篇】

フェラーリ458スパイダー

全ての画像を見る
雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、日本上陸ホヤホヤのフェラーリ458スパイダーで雨の九十九里を目指した2012年4月号のリポートをお届けする。メタル・トップを装備したフェラーリのミドシップ・スポーツ。屋根を開けて甘美なエグゾーストノートを聞くはずが・・・。

advertisement


せっかくのスパイダーなのに

間近に見る458スパイダーは、うっとりするほど美しかった。メタル・トップが描くクーペさながらのルーフ・ラインが、期待を裏切ることなくリアへと流れていく。いや、クーペよりも麗しいかもしれない。腰骨が突き出るように峰をつくるクーペのBピラーの表層デザインよりも、スパイダーのほうがBピラーとリア・フェンダーの関係がクラシカルで、記憶のなかのフェラーリ像と素直にリンクする。リアデッキ・エンドの造形も、クーペより印象的だ。

マネッティーノ(車両特性制御プログラム可変システム)でウェットを選んでおけば、雨のなかでも不安なしに右足を踏み込めるとはいえ、本領を発揮する舞台じゃない。

幌屋根が好きなひとはいる。そちらのほうがずっと特別で、高級なものだという意見にも反論などない。けれど、これを見せられたら、メタル・ルーフにしかできない造形美があるのだということを、思い出さないわけにはいかなくなる。

形だけでどちらかを選べといわれたら、僕なら断然スパイダーをとる。

絶世の美女と1日をともにできるというのに、取材日の天気予報は関東全域で雨。東北まで足を伸ばすには時間が足りない。気温も低いから、箱根や西伊豆は雪になりかねない。車両本体3060万円。そこに種々のオプションが加わって4000万円を超えるテスト・カーでリスクをとる気にはなれなかった。僕らは九十九里浜を目指した。しかし、千葉は雨が強く降っていた。せっかくのオープン・カーなのに、屋根を下ろすチャンスがまったくない。

アルミ製ルーフは2分割されて長さを詰め、畳まれる。

九十九里に着いても、雨は止むどころか、ますます勢いを増して、叩きつけるように落ちてくる。撮影のときだけはなんとかオープンにしないとと思い場所を探すも、ない。ホテルの軒下をお借りして、やっとのことでルーフを仕舞うことができた。

スパイダー本来の姿もまた美しかった。リアへ回り込むと、もう惚れ惚れとするしかなかった。雨の中に立っていることも忘れそうになるぐらいに、心をとらえて離さない。エンツォ以来の、テール・ランプの上半分を曝したデザインは、まるでこのクルマのために用意されたもののように見えた。

置き撮りをなんとか終えて、さぁ、あとは走りのショットだぞ、と気合を込めて念じても、雨は上がらない。オープンで走ることはついにできなかったのである。スパイダーは、オープンで疾走するときのサウンドを堪能してもらうために、サウンド・チューニングが入念に施されているという。なんとしてもそれを聞きたい、という願いはついに叶わなかった。ボタン操作ひとつで、わずか14秒で屋根を上げたり下ろしたりできる458スパイダーはしかし、屋根を反転させながら仕舞いこむ構造ということもあって、走りながらの開閉は受け付けないようになっている。だから、長いトンネルへ入ってから速度を落としてルーフを下ろし、出る前に上げる、みたいな荒業は使えない。万事休す、だった。



なんとか、その片鱗だけでも知りたいと思ってドア・ウィンドウを下げ、パドルでギアを落として右足を深く踏み込むと、ファァアァァーン、と突き抜けるようなサウンドがトンネルのなかに鳴り響いた。この音が身体を包み込むように背後から襲ってくるのか想像すると、天を恨む気持ちはことさらに大きくなった。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement