2023.11.19

CARS

祝911誕生60周年! ナローから992型まで、7台の911にドイツでイッキ乗り!!  ポルシェと酒をこよなく愛する『エンジン』編集長が旅で感じた「ポルシェの哲学」とは?【前篇】

911S2.2タルガ(1970年)、この1台に乗れただけで、ドイツに来た甲斐があった。

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ナローの軽快な走りに脱帽

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さて、2日にわたる今回のツアーは、7台の911にそれぞれ2人ずつのジャーナリストが乗り、ポイントごとに年代が新しい911に乗り換えていき、992型まで来るとナローに戻る方式で行なわれた。私の1日目のスタートは997型のカレラ4Sタルガからだったが、そこからだと話がややこしくなるので、ここでは2日目の最初に乗ったナローの話から順に書いていくことにする。

ラインラント・プファルツ州の美しい森の中を走る911S2.2タルガ。911にタルガが加わったのは1965年で、その時にはトップ・ルーフ同様、スチール製のロールオーバー・バーの後ろのプラスチック製ウインドウも取り外せるようになっていた。


いくら「最新が最良」の格言を持つ911であっても、今回のツアーの最大の目玉車が7台の中で最古の、美しいライトブルーのボディ・カラーを持つ911S2.2タルガであることに異を唱える人はいるまい。ナローのSで、しかもタルガとくれば、ヤクモノ満載のポルシェ好き垂涎の1台であることは論を俟たない。

この個体のMYである1970年は大きな節目の年だったとポルシェのリリースは言う。ビートルズが解散し、クイーンはバンドを結成したばかりで、ポルシェ917がル・マン24時間レースで総合優勝を果たした。そして、ツッフェンハウゼン工場で生産された911のうち、なんと3台に1台がタルガだった、というのには、ちょっと驚いた。当時からそんな人気モデルだったとは。アメリカの安全基準の厳格化でオープンカーに対する規制が厳しくなったのを受けて、苦肉の作として誕生したと言われるタルガだが、やがてデザイン・アイコンになっていく素地はすでにこの時代からあったわけだ。



実際、このタルガはどこから眺めても惚れ惚れする、スタイリッシュで潔く、美しくも力強い容姿を持っている。内装も然り。992型にも引用された水平方向の直線基調のダッシュボードなど、潔くて力強いスポーツカーのインテリア・デザインかくあるべしのお手本のようだ。

それにしても、ポルシェ本体が手がけるレストアは凄い。内外装が美しいだけではなく、小さなキイを捻って軽くアクセレレーターに足を乗せただけでフォンと目覚める180psのフラット6の感触も絶品だった。

911のフラット6は1970年に2リッターから2.2リッターに排気量を拡大した。Sはもっともパワフルな仕様で180psを発生。鍛造ピストンと機械式燃料噴射装置が奢られていた。ほかに155psのEと125psのTがラインナップされており、すべての911のエンジンには、軽量化のために、この時から鋳造マグネシウム製のクランクケースが使われるようになった。


クセがあるのはシフト・レバーで、ローギアがかなり左側に引いてからグニュと押し下げて入れるようになっているので、最初は間違えて3速発進してしまったが、それでもソロソロと走り出せるだけのトルクがあるのだから、正しく発進した時の出足の良さは言わずもがな。そこから右足に力を込めていった時の加速も素晴しく、これは当時としては驚異的なものだったに違いないと思った。

走り出してしまえば、驚くほど運転しやすく、そして、ハンドリングも抜群にいい。なにしろ1020kgしかないのだから、軽快なことこの上ないのだ。スロットルを閉じれば、時折テールパイプからパンパンという音を響かせてスッと減速し、ほとんどノーブレーキでコーナーに進入できてしまう。そして、リムが細く径が大きなステアリング・ホイールを切り込んで行った時のボディの動きも、思わず笑いたくなってしまうほど軽やかで気持ちがいい。これでドイツの美しい森の中のワインディング・ロードを走るのは至極の楽しさだった。これほど程度のいいナローに乗ったのは初めてで、正直なところ、この1台に乗れただけで、ドイツに来た甲斐があったと思った。見た目も走りも絶品である。

◆Gモデル、993ターボS、996カレラ4カブリオレなど、次々に乗り継いだツアー後半のリポートは【後篇】で!

文=村上政 写真=ポルシェA.G

そのほかにS専用の装備として、リア・アクスルにはアンチ・ロールバーを装着。ブレーキは通気冷却式となっていた。ポルシェの公表値では最高速度は230km/h。0-100km /h加速は7.5秒。車両重量は1020kgとなっている。

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(ENGINE2023年11月号)

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