2024.02.19

CARS

中古車でも高値安定の先代Gクラスとジープ・ラングラーとレンジローバー そんなレジェンドSUVたちって、ホントのところ乗るとどうだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/比較試乗篇】

メルセデス・ベンツGクラス&レンジローバー&ジープ・ラングラー・アンリミテッドがモテる理由とは?

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世界最高を目指す生きる伝説

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さて、レンジローバーがここまでいっさい登場させられなかったのは、同じレジェンド系SUVでも、ほか2台とはまた異質だからだ。



レンジローバーは70年に、当時のランドローバー(後のディフェンダー)をベースに、文化的で快適なキャビンを載せた今風SUVの元祖でもある。初代レンジローバーは前後リジッド・サスペンションながらも、スプリングをいち早くリーフからコイルへ切り換え、オールラウンドな乗り心地も意識していた。

ただ、レンジローバーはGやラングラーとはちがって、時代ごとにモデルチェンジを繰り返して、現在は2年前にデビューしたばかりの4世代目である。「世界最高級SUV」の自負のもと、木と革でいろどられた内装は、もう「やんごとない」としかいえない。

さらに、完全なモノコック・ボディ(しかも総アルミ!)、あらゆる電子制御を内蔵する四輪独立サス、電子制御フルタイム4WDなど、レンジのメカニズムはすべて最新鋭。SUVどうこうを超越して、世界でもっともハイテクな1台でもある。

とろけるほど豪華な内装。最新設計SUVとしてはダッシュの奥行きは短く、明らかに目線も高い。車両感覚のつくり方はGクラスやラングラーに似る。


走りもGやラングラーとは世界がちがう。あらゆる路面で滑るように走り、高速でもピタリ安定して、なおかつメチャ速、ステアリングはシュアで正確。なのに室内は静寂そのもの。SUV……というよりも、純粋乗用車としても、ケチをつけにくいパーフェクトな存在である。

そんなレンジローバーに、Gクラスやラングラーとの共通点を指摘するなら、私ごときが語るのもはばかられる悪路走破性能と、すこぶるつきの運転のしやすさだろう。

独立サスなのにリジッドに負けない走破性能は、レンジを含むランドローバーすべてに課せられた義務である。そして小高い運転席(=コマンド・ポジション)からcm単位の走行ラインを射抜ける車両感覚も、ランドローバーに代々受け継がれてきた秘伝にして伝説である。

レンジローバーの運転席はGやラングラーほど高くないが、その次くらいに高く、最新設計SUVとしてはもっとも見晴らしがよく、ボンネットの角が手に取るように把握できる。最新のレンジはあらゆる路面で安定して速いが、どこぞのスポーツカーまがいのSUVとは厳然とちがってもいる。重くて巨大なクルマをどういうリズム感で動かせば、人間が快適・上品・安全に操れるかを、ランドローバーは知っている。



レンジローバーのボディはどう見ても巨大だし、ちょっとコスっただけで1カ月は落ち込めそうな高額車だが、物理的に通れる道なら、躊躇なくスイスイである。もてあますほど鈍重ではないが、必要以上に機敏でもない。乗っている人間のストレスのなさは驚異的ですらある。それを最新のハイテクで実現するとは秘伝のワザというほかない。

小高い目線から周囲を見おろして、ボディは小さくないのに、せまい道やギリギリの幅寄せに躊躇を必要としないのは、3台に共通する美点である。やはり、本物の修羅場をくぐってきた経験はダテではない。

今さらいうまでもないが、これら3台のポテンシャルをフルに引き出す機会は、日本にはほとんど存在しない。「だったら無駄と過剰を省いて、オシャレに気軽に安く」と割り切ったのが、現代のSUVである。

これらレジェンド系SUVは、どれも壮大な歴史とウンチクの宝庫だ。本物のジャングルを経験すれば、日本のコンクリート・ジャングル(笑)なんぞモノの数にも入らない。都会派SUV、なんだそれ?

失礼を承知でいうと、レジェンド系SUVの前では、現在のSUVの99%がナンチャッテにすぎない。それらを物理的にも精神的にも見おろして走れば、意味なく飛ばす気にもならない。こうして免許のストレスまで消してくれるのも、レジェンド系SUVの利点だったりして。

ただし、そういう上から目線を周囲に悟られたり、だれかれかまわずウンチクを披露するのは、典型的な非モテ行為なのでご注意を……。どんな業界でも、本物のレジェンドは黙して語らずである。

文=佐野弘宗 写真=神村聖

四角四面のボディ。すべて平面ガラスなのは、修羅場でも容易に交換できるため。
■メルセデス・ベンツG550
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4575×1860×1970mm
ホイールベース 2850mm
トレッド 前/後 1540/1540mm
車両重量 2560kg
エンジン形式 V型8気筒DOHC32v直噴+ツイン・ターボ過給
総排気量 3982cc
最高出力 421ps/5250-5500rpm
最大トルク 62.2kgm/2000-4750rpm
変速機 7段AT
サスペンション形式 前 リジッド+コイル
サスペンション形式 後 リジッド+コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 275/55R19
車両本体価格(税込) 1470万円

ボート・テールも、もとは走破性のための機能美。
■レンジローバー・オートバイオグラフィー
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 5005×1985×1865mm
ホイールベース 2920mm
トレッド 前/後 1690/1685mm
車両重量 2550kg
エンジン形式 V型8気筒DOHC32v直噴+機械式過給
総排気量 4999cc
最高出力 510ps/6500rpm
最大トルク 63.8kgm/2500rpm
変速機 2段副変速機付き8段AT
サスペンション形式 前 ストラット+空気バネ
サスペンション形式 後 ダブルウィッシュボーン+空気バネ
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/通気冷却式ディスク
タイヤ 前後 275/40R22 108Y
車両本体価格(税込) 1806万円

ルーフもドアも前後フェンダーもすべて脱着可能なボディ(日本ではフェンダーを外すのは違反だけど)。
■ジープ・ラングラー・アンリミテッド・サハラ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4705×1880×1845mm
ホイールベース 2945mm
トレッド 前/後 1570/1570mm
車両重量 2040kg
エンジン形式 V型6気筒DOHC24v
総排気量 3604cc
最高出力 284ps/6350rpm
最大トルク 35.4kgm/4300rpm
変速機 2段副変速機付き5段AT
サスペンション形式 前 リジッド+コイル
サスペンション形式 後 リジッド+コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 255/70R18 113S
車両本体価格(税込) 427万6800円

(ENGINE2016年2月号)

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