2024.02.16

CARS

スーパーカーの王様 アヴェンタドールよりさらに速いアヴェンタドール、SVは、どんなランボルギーニだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/ランボルギーニ篇】

ランボルギーニ・アヴェンタドールLP750-4スーパーヴェローチェ

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心して乗るべし

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齋藤 ただね、ここまで速いと、クローズド・サーキットに行かない限り、アクセレレーターを踏み切れないよ。相変わらず背中に途轍もない猛獣がいる感じがするし、ボディのサイズも大きいからね。大きく左右に飛び出したドア・ミラーの分を除いても車幅は2mを超えている。長大なV12を縦置きで押し込んでいるから、純粋な2座でしかないのに全長も4.8mを超えている。とにかく道が狭く感じる。横幅に関しては、トラックを走らせるような心構えがないと、料金所などでホイールを擦りかねない。気を使うよ。

 ドライバーの正面に陣取る派手なメイン・メーターはエンジン回転数と選択ギアを最優先情報として表示する。ギア表示は変速時にジニー・アクション(下へ引っ込んでまた出てくる)を使って注意を喚起する。スーパーヴェローチェの専用仕様だ。


村上 僕は国際試乗会でサーキットでも乗ったけれど、よほど腕に自信がない限り、クローズド・コースでだって、そうそう簡単に全開にできるわけではない。アクセレレーターとステアリングの操作はとにかく繊細にしなければ、どこに飛んで行ってしまうかわからないような獰猛なパワーを秘めている。なにしろ、750psだからね。しかし、逆に言えば、繊細な操作をしてやれば、750psを御することができるような、極めて正確でデキの良い機械に仕上がっている。だから、大きさや見切りの悪さの問題を除けば、公道でもスーパーカーとしては乗りやすい部類に入る新種と言えるんじゃないか。緊張しないかといえばもちろん緊張するし、運転していて疲れないかといえば疲れる。でも、とんでもないジャジャ馬、じゃなかった暴れ牛に乗っているという感じはしないし、新たに電子制御ダンパーを備えた足まわりなど、むしろこれまでより乗り心地が良くなった。洗練度はどんどん増している。



齋藤 そうはいっても、これはかなりのハードコアよ。見た目からの期待を裏切らない。軟弱者は寄せ付けないでしょ。それと、ある程度はクルマという機械運動体についての知識も持ち合わせないと危ないことになる。例えば、速さを支える専用開発タイヤは鞭を入れる前にきっちり温める必要があるし、質量(車重)が1840kgもあることを絶対に忘れちゃいけない。1tそこそこのライトウェイト・スポーツカーを走らせるような気持ちで接すると痛い目に遭いかねない。

村上 そういう意味では、ダウンフォースが驚くほど掛かっていることも忘れちゃいけない。高速道路で路面に吸い付くように走るのは、そのおかげもある。サーキットではタイト・コーナーで減速した時に、ダウンフォースが急激に減って想像以上にグリップ力も減るのにびっくりした。山道を走っていると、新たに装備された電子制御可変ギア比のダイナミック・ステアリングのおかげもあってか、よく曲がるのに感心するけれど、あれも路面が急変して酷く荒れていたりしたらどんな挙動を示すかわからないから、よくよく注意する必要がある。

ドライバーの背後には6.5リッターから750psを叩き出す自然吸気のV12が収まる。変速機はエンジン前方に位置し、折り返してエンジン後部のファイナル・ギアへと導かれる。もちろん、フロント・アクスルへもドライブシャフトが走り、前輪も駆動する。



スーパーカーは男のオモチャ

齋藤 そうした諸々をわきまえて接することができれば、見返りは大きい。あの回せば回しただけ天井知らずに伸びていくロードゴーイング・カーの域を遥かに超えたパワー、そして、あの猛烈な音。本気で踏むと、それこそ怒号が轟く。排気量が6.5リッターもある8000rpm以上も回す迫力たるや、ちょっと他では経験できない。フェラーリのV12とは異なるそれこそ男性的というしかない雄牛の雄叫びに酔いしれることができるよ。このエンジン、負荷のかかった状態でのけたたましい音のせいで、けっこうラフなのかと思うけど、中高速回転域で負荷を抜いたときに、エンジン自体は超絶級にスムーズで振動が少ないことがわかる。V12ならではだよ。それと、渋滞以外ではとてもシングル・クラッチ式とは思えないほどに変速マナーの洗練された自動MTも凄い。ドライビング・モードを切り替えてスポーツとかコルサ(レーシング)にした時の変速の歯切れの良さも、そんじょそこらのスポーツカーでは味わえない種類の鋭さがある。ゾクゾクする。



村上 しかし、それだけ走りの性能が大進化を遂げているにもかかわらず、乗っていて、やっぱりこれは昔ながらのスーパーカーの延長線上にあると感じずにはいられなかった。何よりもまずスーパーカーであることがこのクルマの開発の核心なんだと思う。とにかく、見た目が誰もが度肝を抜かれるくらい奇抜で、かつ誰もが見とれるくらいにカッコよくなくてはいけない。ノーマル版とは明らかに別モノだとひと目見て分かる凄みを備えている。50psパワーアップし、50kg軽くなったというのがスーパーヴェローチェ、即ち“超速い”と名付けられたこのクルマの数字上のポイントだけれど、そんな細かなことはどうでもいいと思わせるような見た目の迫力こそが、スーパーカーのスーパーカーたるゆえんなのだと思う。これでもかとばかりにそこら中にちりばめられたカーボン・パーツ、今どき珍しいくらいに巨大な3段階手動調整式リア・ウイング、いかにも空力に貢献していると主張するかのようなリアのアンダー・ディフューザー。すべてが過剰なまでに劇画調に仕立てられている。

齋藤 意図的にオールド・スクールを貫いているんだよ。かつて、かのクンタッチのデザインを手がけたマルチェロ・ガンディーニにインタビューする機会があったんだけれど、その時に、「スーパーカーってなんですか?」と尋ねたら、迷いも見せずに「男のオモチャさ。それ以上でも以下でもない」と即答したことを鮮烈に思い出すよ。

村上 その意味では、このクルマの成功の最大の立役者は、デザイン・ディレクターのフィリッポ・ペリーニだと言えるかもしれない。ノーマル版のアヴェンタドールも彼のデザインで凄かったけれど、それを大人しく感じさせるくらい強烈なデザインが与えられている。もっかのところ、これをもってスーパーカーの王様と呼ぶのに、誰も異論はあるまい。

話す人=村上 政(ENGINE編集長)+齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬

■ランボルギーニ・アヴェンタドールLP750-4スーパーヴェローチェ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4835×2030×1130mm
ホイールベース 2700mm
トレッド 前/後 1720/1680mm
車両重量 1840kg(前790kg/後1050kg)
エンジン形式 V型12気筒DOHC48V
総排気量 6498cc
ボア×ストローク 95.0×76.4
最高出力 750ps/8400rpm
最大トルク 70.4kg/5500rpm
変速機 シングル・クラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク(CCMC)
タイヤ 前/後 225/30ZR20/355/25ZR21
車両価格(消費税込み) 5179万2353円

(ENGINE2016年3月号)

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