2024.05.04

CARS

V12気筒エンジンを搭載するスポーツカーを振り返る! 812スーパーファストはどんなフェラーリだったのか? 800馬力なんてこわくない!?

フェラーリ812 スーパーファスト

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すべてが軽くスムーズで、速い

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試乗日の朝、幸いなことに、フィオラノの空は快晴だった。サーキットに着くと、ひとり4周ずつ乗せてもらえることになったが、順番はなんと私が初っ端。インストラクターの横に乗ってコースを1周だけ下見した後、いきなりハンドルを握らされた。最初はスポーツ・モードで様子を見て、それで大丈夫だったら次にレース、そしてTCオフとモードを切り換えていこうと思った。なにしろ800psのモンスター・マシンのことである、本当にいきなり走って大丈夫なの、とビクビクしながらコース・インしたのだが、アクセレレーターを踏む右足に力を込めV12気筒が素晴らしい音をたてて加速を始めた瞬間、あまりの速さと気持ち良さに、もはや私の理性は吹っ飛んでいた。とにかく、走りたくて走りたくてたまらない気持ちが堰を切ったように内から溢れ出てきた。



ペダルやステアリングの操作フィールは、ひと昔前のスポーツカーとは比べ物にならないくらい軽い。そして、すべての動きがスムーズそのものなのである。ロードホールディングも抜群で、常に車体が路面に吸いついているような感覚があるから、速度を上げて行っても、まるで不安を感じることがない。コーナー8つの1周2976メートルはあっという間に終わってしまった。最終コーナーを立ち上がった後の直線では、トンネルに入る前にアクセレレーターをオフにしてエンジンの音を聞けと言われたのでそうする。V12気筒の美しい獣の叫びのような声に気持ちが少し清められるような気がした。

さあ、今度はレース・モードでもう少しスピードを上げて走ろう。コーナーからの立ち上がりで、少し強めにアクセレレーターを踏み込んでいくと、Eディフが積極的に前へ前へと押し出してくれるのが気持ちいい。トルクを絞る感じがあったスポーツ・モードよりもこちらの方が走りやすい。S字の切り返しはステアリングとアクセレレーターの操作に気をつかうが、ピーキーな動きは一切なく、実に素直にボディが反応してくれて、抜群に気持ちよく走れた。



積極的にドリフトを楽しんでもいいよ、と言われた6コーナーで、クリップ付近から自分なりにドンとアクセレレーターを踏んでみたが、それでも遠慮気味だったのか、なにごとも起きない。次の周回、トラクション・コントロール・オフでやってみたら、ギャッと滑り出して、すぐにカウンターを当てた。この時、電動パワー・ステアリングによるアシストがあったのかどうか、ちょっと私には判断が付きかねる。少なくとも、急激に重くなるということはなかったから、間違った方向に切ろうとはしていなかったということだろう。フェラーリのアシストの考え方は、クルマが勝手にカウンターを切るのでも、力を加えるのでもない。あくまで間違った方に切らないよう、そちらは重く、正しい方向は軽くして、正しい操作を促すのだという。

最後の4周目はクーリング・ラップ。もう一度、様々なフィールを確認しながら走った。電動パワー・ステアリングは、導入時にしては素晴らしく出来がいいと思ったが、しかしフェラーリだと考えると、もっと素晴らしいものにできるのではないかと思った。センター付近のフィールがやや曖昧だと感じられたのだ。

4周の至福の体験を終えた後は公道へ。街中からバイパス、山道まで様々な道を走った。公道を走って驚かされるのは、800psのスポーツカーがまるで高級スポーツ・サルーンのような適度に引き締まってはいるが快適な足回りを持っていることだ。スムーズなシフトといい、素直なハンドリングといい、これは本当に800psのモンスター・マシンなのかと何度も疑いたくなった。

山道のタイト・コーナーでは、サーキットと同じくレース・モードの方がアンダーステアが出にくくて走りやすい。素晴らしい爆音を聞きながら山道での走りを楽しんでいたら、なんと突如として大雨が降ってきた。かつて599で雨の首都高速を走って、あまりにトラクションが掛からない恐怖に震えたことを思い出した。しかし、812ではまったく恐い思いを抱くことなく走れるのに感動した。ただし、ワイパーの効きは相変わらずイマイチだったけれど。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=フェラーリS.p.A

■フェラーリ812 スーパーファスト
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4657×1971×1276mm
ホイールベース 2720mm
空車重量 1630kg
エンジン形式 直噴V型12気筒DOHC(バンク角65度)
排気量 6496cc
ボア×ストローク 94.0×78.0mm
最高出力 800ps/8500rpm
最大トルク 73.2kgm/7000rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク(CCM)
タイヤ (前)275/35ZR20、(後)315/35ZR20
車両本体価格(税込み) 3910万円

(ENGINE2017年9月号)

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