2024.01.24

CARS

【保存版】991型ポルシェ911、当時正式発表前に行われた技術ワークショップで公表された内容は驚くべきものだった!【『エンジン』蔵出しシリーズ/ポルシェ篇#18】

991型ポルシェ911のプロトタイプに同乗試乗!

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『エンジン』の過去のアーカイブから"蔵出し"記事を厳選してお送りするシリーズのポルシェ篇。今回は2011年12月号に掲載した991型911の技術ワークショップのリポートを取り上げる。“991”の開発コードを与えられた新型911の全容。ポルシェの開発拠点があるヴァイザッハで開かれたテクノロジー・ワークショップから報告は驚くべきものだった。


世界初の7段MTの導入

ポルシェの本拠地シュトゥットガルト郊外にあるヴァイザッハ研究開発センターで開かれた「新型911テクノロジー・ワークショップ」は、4つのテーマに沿って進められた。すなわち、(1)軽量化、(2)効率、(3)エモーション、(4)パフォーマンスで、締めくくりとして、テスト・ドライバーが運転するカレラSの助手席に同乗してテスト・コースを走る機会が与えられた。ここでは、順を追ってその要点を見ていくことにしたい。



まず、(1)軽量化についての最大のトピックは、これまで頑にスチール製ボディにこだわってきたポルシェが、ついにアルミとスチールのハイブリッド・ボディの採用に踏み切ったことである。次ページのホワイトボディの写真でも確認できるとおり、フロント部分のほぼすべてと2枚のドア、フロア、リア・フードがアルミニウム製になっている。その割合は重量比でボディ全体の44%にもおよび、これにより、わずかにフロント・フードのみがアルミ製だった先代に比べて、ボディだけで80kgもの減量をすることに成功した。さらにエンジンで10kg、サスペンションで5.5kg、電子パーツで2kgと減量を積み重ねていった結果、総計98kgもの減量を実現しているという。

フロントからドアにかけて、水色の部分はすべてアルミニウム製だ。


一方、重量増の方は、安全装備の充実で26.9kg、その他の装備付加により9.4kg、ホイールベースが10cm伸びたことで7.1kg、燃費削減のために15kgで計58.4kgになる。それを差し引いても、先代に比べて約40kgも軽くなっているのだから(カレラSのPDKモデルで比較)、ハイブリッド・ボディが軽量化に大きく貢献したことは間違いない。

次に(2)効率はどうか。これについても、本当に涙ぐましいまでの努力の跡が至る所に見られる。ボディの軽量化や空気抵抗の削減、エンジン排気量のダウンサイジング(カレラが3.6リッターから3.4リッターになった)といった常套手段はともかく、世界初の7段MTの導入(6段MTに比べて回転数が19%下げられる)、ポルシェ初の電動パワステの採用、スポーツカー初の全車アイドリング・ストップ機構の導入、さらにPDKモデルにはアクセル・オフでの巡航時にギアが自動的にニュートラルになり燃料を節約するコースティング機能までもが付加されているのだ。

世界初となる新開発の7段マニュアル・ギアボックス。


これにより、平均燃費はカレラSがリッター約11.5km、カレラが約12.2km(いずれもPDKモデルのEU値)。カレラはCO2の排出量でも200g/kmを下回る194g/kmというスポーツカーとしては驚異的な数字に抑えられている。


ニュル北コースで7分40秒

とはいえ、多くのスポーツカー好きがもっとも注目しているのは、新型911の走りが、スポーツカーとしてどう進化しているのかという点だろう。そこに行く前に、(3)エモーションで取り上げられたのは、これまでもポルシェがスポーツカーづくりの中で重視してきたサウンド・チューニングについてだった。今回、排気系に大幅に手が加えられたほかに、吸気系にも新装備が採用されている。エア・フィルターとインテーク・マニフォールドをつなぐダクトから空気の流れを振動として取り出し、室内に細いパイプでつないで、音を共鳴させるシステムだ。新型911では、吸気音、エンジンの機械音、そして排気音が三位一体になったエモーショナルなサウンドづくりに成功したとエンジニアは胸を張る。

またしても最新にして最良のポルシェが誕生した。


そしてお待ちかねの(4)パフォーマンス。まず、走りにかかわる重要な指標を列挙してみよう。新型911ではホイールベースが10cm長くなり、フロントのトレッドがカレラで46mm、カレラSで52mm拡げられている。重量は約40kg減。重心は5mm下げられて、ヨー慣性モーメントは2%低減された。ボディ剛性は、曲げで13%、捩じりで20%のアップ。空気抵抗値は4%のダウン。可変リア・スポイラーが装備されたことで、ターボとGT3以外の911では初めてリアのダウンフォースが生まれているという。さらにエンジンに関しては、カレラで5ps、カレラSで15psのパワー・アップが実現している。最高回転数も300rpm引き上げられ、7800rpmとなった。タイヤは1インチ・アップして、カレラは19インチ、カレラSは20インチが標準。それにともなって、ブレーキもディスクが大径化されるなど、強化されている。

そのほか新装備で注目されるのは、すでにカイエンやパナメーラに導入されているアクティブ・スタビライザーのPDCCが、911にも採用されたことだ。これをオプション装備すればロールを大幅に軽減できる。

最高速度はカレラが289(287)km/h。カレラSが304(302)km/h。0-100km/h加速は、それぞれ4.8(4.6)秒と4.5(4.3)秒(いずれもカッコ内はPDK)。ニュルブルクリンク北コースでのカレラS・PDKのラップタイムは7分40秒という。

同乗走行で確認できたのは、室内が静かになり、演出されたサウンドが素晴らしくよく聞こえるようになったことだ。また、乗り心地も、かなり良くなっているように思えた。テスト・カーはPDKモデルで先のPDCCをはじめフルオプション状態だったが、ヴァイザッハのテスト・コースを全開で飛ばしてもコーナーリング時のロールはほとんど感じられず、豪快な走りを披露してくれた。またしても最新=最良のポルシェが誕生したのは確実だと思った。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=ポルシェAG

■ポルシェ911カレラ
駆動方式 エンジン・リア縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4491×1808×1303mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1380kg(MT)/1400kg(PDK)
エンジン形式 アルミ製水平対向6気筒DOHC24バルブ
排気量 3436cc
ボア×ストローク 97×77.5mm
最高出力 350ps/7400rpm
最大トルク 39.8kgm/5600rpm
トランスミッション 7段MT/7段PDK
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチ・リンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク/アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ (前)235/40R19、(後)285/35R19
車両本体価格 未発表

■ポルシェ911カレラS
駆動方式 エンジン・リア縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4491×1808×1295mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1395kg(MT)/1415kg(PDK)
エンジン形式 アルミ製水平対向6気筒DOHC24バルブ
排気量 3800cc
ボア×ストローク 102×77.5mm
最高出力 400ps/7400rpm
最大トルク 44.9kgm/5600rpm
トランスミッション 7段MT/7段PDK
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチ・リンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク/アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ (前)245/35R20、(後)325/30R20
車両本体価格 未発表

(ENGINE2011年12月号)

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