2023.11.12

CARS

6.5リッターV12が9000rpmオーバーまで一気に淀みなく回る様はもはや感動的! PHEVに生まれ変わったランボルギーニの旗艦、レヴエルトに試乗!!

生き続けることになった自然吸気V12エンジンの凄さとは?

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刺激の海へ放り込まれる

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試乗のためヘルメットを被り運転席へ。確かに頭がルーフに触れることはない。インテリアの意匠は、らしさを継承しつつもシンプル化された印象。メーター・グラフィックも視認性に一層重きが置かれた感がある。

いよいよ走行開始だ。いずれのスティントも先導するインストラクターに1台のみで追走するかたちで行なわれる。ヴァレルンガは確か初走行なので正直、助かった。

適度に小径になったステアリング・ホイールには、左手側にドライビングの、右手側にハイブリッドのモード切替ダイヤル・スイッチが備わり、13のモードを選択できる。まずは前者をCORSA、後者をPERFORMANCEに設定。トラックでの速さを最優先とした、1015psをフルに発揮させるモードだ。

ピットレーンを抜けて徐々に加速。もはやこの時点から、凄まじい刺激の海に放り込まれることになった。



まず触れるべきは珠玉の自然吸気V12と電気モーターによるパワートレインだろう。モーターの加勢により低速域から右足の動きに即応して弾けるようにレスポンスし、パワーとトルクをあふれ出させる。速度計の数字の移ろいの速さは尋常ではなく、実際にクルマの質量など関係無いかのように速度自体も凄まじい勢いで高まっていく。さすがパワー・ウェイト・レシオ1.75kg/psである。

それでもアクセレレーターを緩められないのは、回転上昇につれて倍加していく快感のせいだ。6.5リッターもあるエンジンが9000rpmオーバーまで一気に、淀みなく回る様はもはや感動的とすら言いたい。

こうして思い切って踏んでいけるのは、特定の回転域から急にパワーがあふれ出すわけではなく、あくまでリニアに回り切るから。一方、強いて不満を言うならば、レブリミット手前で穏やかにパワーが丸められるのは、使い切ったという快感がやや薄れる。あるいは、これなら自動シフトアップしてくれた方がいい。



フットワークにも圧倒されっぱなしだった。コーナーに向けてステアリングを切り込んでいくと、ターンインはまるで吸い付くかのよう。一旦曲がり始めれば、クリッピングを点ではなく線でなぞっていける。

ステアリングは順目に切ったまま、軽くアクセルを入れてトルクベクタリングによってフロントを巻き込ませ、絶妙にスライドするリアを引っ張り出すようにコーナーを抜けると、凄まじく安定していて、且つ凄まじく速い。この感覚は異次元のものだ。

聞けば、旋回中はそれほど前輪に駆動力を与えているわけではないという。フィードフォワード制御によってターンインのわずか前から少しだけイン向きのヨーを足しているそうだ。また、リアが滑り出しそうになればベクタリングを緩めたり、後輪を少しだけ操舵して姿勢を整えたりもしている。しかしステアリングを握っている分には乗せられているような違和感とは一切無縁である。

ストローク型から踏力型に変えたという電動サーボを使ったブレーキも良い。攻めても攻めてもストローク、タッチに変化が無く、安心してコントロールできる。



夢中で攻め立ててしまう


いやはや凄いものに乗った。満足しながらパドックに戻ると、他の国の参加者たちが結構オーバーステアが出るという話をしていた。どうやらSPORTモードではそういう挙動が容易に出るらしい。

そこで続くスティントではSPORTモードをチョイス。パワーは907psに絞られるが、シャシーや空力の制御はアジリティとドライビングプレジャー重視になると謳われる。

実際、5速のまま飛び込む高速の第1コーナーではCORSAよりもリアが伸び上がるのを実感。それをなだめつつ3速にシフトダウンして次のコーナーに入っていくと、ここでもリアがスッと回り込んできた。それならばと次のヘアピンに敢えてブレーキを残しながら進入すると、きれいなスライドが始まる。すかさずカウンターステアを当てながら徐々にアクセレレーターを踏み込んでいくと、リアから強烈に蹴り出しながら豪快に立ち上がっていくのである。これは楽しい!



ほぼ全長5mの、しかもV12ミドシップとは思えないほどの意のままになる走りに、思わず夢中で攻め立ててしまった。アヴェンタドールでは、こうはいかなかったはず。しかも踏み込めば背後でV12が自然吸気らしい荘厳な響きを奏でるのだ。夢心地とは、まさにこのことである。

ピットレーンでは、街乗り用のCITTAモードを試した。バッテリー残量が十分ならエンジンが停止して電気モーター駆動となる。

室内に居るとギアノイズなどが響いてくるため決して静かではないが、外で聞いている分には耳に届くのはタイヤ・ノイズのみ。これまたアーバナイゼーションという狙いに応えるものだろう。

今回は試すことができなかったが、レヴエルトは先進の運転支援装備も充実しており、また最新のコネクテッド機能も備える。この点も間口を大きく広げることに繋がるはずだ。

クンタッチから継承された哲学の下に描き出されたフォルムをまとい、自然吸気V12エンジンを積んではいるが、変わらないのはそこだけ。時代の要請に応えるための電動化を、同時に一層のパフォーマンスアップにも繋げ、居住性や使い勝手まで進化させたレヴエルトは、楽しみの幅を大きく広げてみせた。歴史的転換と言えるほどの進化と変化を見据えたコンセプトワークと、それを見事まとめ上げたエンジニアリングの手腕に惜しみない賞賛を送りたい。

歴史と伝統を大切にしながらも、あくまで未来志向の今のランボルギーニが、余さず体現されているこのレヴエルト。古くからの信奉者にも新しいファンにも強烈にアピールすることは間違いないが、何と生産枠はほぼ3年先の分まで、すでにいっぱいだそうである。

文=島下泰久 写真=ランボルギーニ


■ランボルギーニ・レヴエルト
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4947×2033×1160mm
ホイールベース 2779mm
車両乾燥重量 1772kg
パワーユニット形式 水冷V型12気筒DOHC+前2後1モーター
ボア×ストローク 95×76.4mm
排気量 6498.5cc
エンジン最高出力(システム出力) 607kW/9250rpm(746.5kW)
モーター最高出力(前/後) 220kW/3500rpm/110kW/10000rpm
エンジン最大トルク 725Nm/6750rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前後) カーボンセラミック通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 265/35R20/345/30R21
車両本体価格(税込) 6600万円~

(ENGINE2023年12月号)

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