2023.11.19

CARS

【後篇】「こんな幸せなクルマを私はほかに知らない」 祝911誕生60周年! ナローから992型まで、7台の911にポルシェと酒をこよなく愛する『エンジン』編集長がドイツでイッキ乗り!!  

タルガの次にハンドルを握ったのは1983年型のカレラ・カブリオレだ。

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まるでスムーズだった996

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次は水冷になって以降の996型から2001年のカレラ4カブリオレ。2日間で乗れるクルマは6台なので、私は本来これには乗せてもらえない予定だったのだが、いつも乗っている長期リポート79号車の996型カレラ4Sと比較してみたくて、無理を言ってイベント終了後にチョイ乗りさせてもらったのだ。



そして、大きなショックを受けた。同じ3.6リッターのフラット6を搭載しているはずなのに、回り方が79号車のそれとはまるで違うと言っていいくらいにスムーズで気持ち良かったのだ。これに比べると、79号車のエンジンはどこかガサツな感じが否めないし、アイドリング時から常にブルブルと震えているような感じがある。ウーンと首を捻ってしまった。

そのことをポルシェの人に伝えたら、「そりゃ、ミュージアムで整備しているのだから当然だよ」、と言われてしまった。で、「じゃあ、このクルマに替えたらどう?」だって。そこですかさず、「ハウ・マッチ?」と投げたら、今度は向こうがウーンと首を捻ってしまったという次第。

次は997型から2008年のタルガ4S。前述のように、これに乗ったのは1日目の初っ端で、乗り始めてすぐに、やはり羽田空港の駐車場に置いてきた996型カレラ4Sと比べて、その進化の大きさに感心した。997型から足回りに可変ダンパーのPASMが導入されて乗り心地が良くなったのはもちろん、ステアリング・フィールからエンジンの回り方まで、すべてが格段にスムーズになっている。997型が登場して国際試乗会に行った時にも、まったく同じことを感じたのを思い出した。ここから先のモデルは登場時に同時代的に乗っているから、その時に感じたことを追憶する感覚である。

2006年秋のパリ・モーターショーでデビューした997型タルガ4Sは、先代同様の大型ガラス・ルーフと開閉式ガラス製リア・ハッチのほか、44mmワイドになったボディと4WDシステムを導入。太陽を浴びたいが幌屋根では困るという北欧での需要に応えるのが開発の動機とされた。


タルガがこのようなガラス・ハッチ式だったのは、996型と997型だけだった。996型ではあまりにもルーフ部分が重くてバランスが悪かったが、997型ではそれが随分と改善していたことが改めて乗ってわかった。もちろん、重さは感じるけれど、それほど動力性能に対して決定的なマイナスとは思えない。

それよりも、すでに空冷に近いクラシックの域に入りつつある996型に対して、997型はまだかろうじて現役の匂いを残していると感じた。ポルシェの基準では生産終了後10年経過がクラシックの認定になるそうだから、997型もすでにクラシックに入っているのだが……。

心から欲しい991前期型

そして、991型からは2013年のカレラS50周年記念モデル。前期型だから自然吸気の3.8リッターフラット6エンジンを搭載している。

10年前のクルマと言っても、今回のミュージアム・カーはなんと2000km程しかマイレージを重ねておらず、ほとんど新車かと思うほどにシャキッとしていた。見た目、乗り心地、ハンドリング、エンジンのパワーの出方と吹け上がり、どれを取っても非の打ち所がなく、結論から言うと、私はこの991型が今回乗った7台の中で一番気に入ったし、もし今後買えるのだったら、991前期型が欲しいと心から思った。

10年前の911誕生50周年に際し、1963台の限定で登場したのが、この991型50周年アニバーサリー・エディションのカレラSだ。


今回は現行992型のカレラTも用意されていたが、日本でも乗ったばかりの爽やかで軽快な乗り味のそれよりも、私は重厚と軽快のバランスが程よくミックスされた991型の乗り味を好む。ボディの大きさから言っても、991型がマキシマムなのではないか。992型は日本で乗るにはフロントの幅が大きくなりすぎたし、それは今回、ドイツの森の中の狭いワインディング・ロードを走っていても感じたことだ。

標準で7段マニュアル・トランスミッションを搭載していることから、一部の熱狂的な911信者を喜ばせたカレラT。


もちろん、進化の度合いはいつものように大きく、もはやスーパーカーの領域に入った992型をもってして、「最新」必ずしも「最良」ならず、などと言うつもりはない。今回良くわかったのは、911はモデルチェンジごとにまるで違うクルマに生まれ変わったかのような大進化を遂げてきたし、ポルシェはマーケティングにも長けているから、時代の流れに合わせて様々なニッチ・モデルも出してきたが、その根本にはスポーツカーとしての走りと快適性も含めた実用性を両立させるという哲学があり、それを常に追求し、貫いた結果、誕生から60年もの間ずっとクルマ好きの琴線を震わせ続けてきたということだ。「最新」は「最良」かもしれないが、その人の琴線に触れる「最高」の1台であるかは別問題だ。それぞれの911乗りが「最高」の1台を選べるのも、60年間に生産された116万台強のうちの70%以上がまだ現役で走っており、それを未来に残したいと思っている人たちが乗っているからだ。こんな幸せなクルマを私はほかに知らない。

文=村上政 写真=ポルシェA.G



(ENGINE2023年11月号)

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