中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、世界のスーパーカー戦線に、日本的にキメこまやかな技術と、大胆なチャレンジ精神で一泡吹かせた日産GT-Rの究極版、スペックVを取り上げた2009年6月号の記事をお送りする。国内屈指の難コース2月2日に発売され、すでに国内顧客向けのデリバリーがはじまった究極のGT-Rである「スペックV」に、ついに乗った。場所は仙台市郊外の高原にある仙台ハイランド・レースウェイ。ドイツは全長20.8kmのニュルブルクリング北コースとならび、全長4km強のここが、GT-R開発のメイン・ステージであることはよく知られている通りだ。「緑の地獄」とまでいわれるニュルほどではないにしても、仙台ハイランドも高低差の変化に富み、またサーキットらしからぬ路面の荒れが残されていて、レース関係者のあいだでは国内屈指の難コースといわれる。
それゆえ、開発責任者の水野和敏チーフ・エンジニアはここがお気に入りで、サーキット側の路面補修の要望を聞きつけると、ただちに阻止行動に出て、現状の走りにくさを維持しようとがんばるのだそうだ。ということで、ここは僕のようなアマチュア・ドライバーにとってはなおのことむずかしいコースとになるが、しかし、究極のGT-Rの究極ぶりを垣間見るのに、国内でこれ以上の場所はない。ましてや、ノーマルのGT-Rが「だれでも、どこでも、いつでも」たのしめる「マルチ・パフォーマンス・スーパーカー」と位置づけられているのにたいして、このスペックVは、「人車一体」のドライビング・ファンのためのスーパーカーだという。サーキットでの評価が、まずもっと求められるのだ。「ハイギヤードブースト」究極のGT-Rといいながら、スペックVのエンジン、ギアボックスは、2009年型のそれらと少しも変わらない。それはまた、GT-Rの究極は、ロム・チューンなどによるパワーアップの方向にはない、という水野チーフ・エンジニアの態度表明でもある。すなわち、485ps/6400rpm、60kgm/3200―5200romのおなじ「VR38DETT」V6ツイン・ターボ・ユニットが、「GR6」型のデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)と組み合わされている。
とはいえ、このエンジンは、ノーマルのGT-Rが2008年型から2009年型に切り替わったときに、「匠の作り込みによるエンジン本体の製造精度向上とコンピューター制御精度の向上」(水野さん)の結果、もともとのスペックから5ps出力が上がっているものだ。さらに一点だけ、ノーマルにはないギミックがスペックVのエンジンに与えられた。これは3速以上のギア・ポジションにあるときに80秒間だけ作動する「ハイギヤードブースト」といわれるターボ過給圧の一時的な増幅装置。右側のステアリング・スポーク上に小さなボタンがあり、それを押すと、以後80秒間は最大トルクが62kgmとなって、2kgmぶんだけだがトルクがアップする。スポーツ走行のさいにもっともトルクが欲しいと感じる瞬間、つまり、コーナーからの立ち上がり時などに、押し出し感を強め、脱出加速にはずみをつける一種のオーバーテイク・ボタンである。山道などでこれを使って1段高いギアで走れば、燃費の低減にも効果を発揮するという。ギミックとはいえ、走り屋の欲望のツボをおさえた新フィーチュアである。
こうしたパワートレイン・サイドでの「素通り」感の強さに比して、シャシー/ボディ系は軽量化のためにねんごろな手当てを受けている。
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