2024.02.17

CARS

「日産GT-R、進化の軌跡」 2009年に登場した「究極のGT-R」、スペックVは、どんなスポーツカーだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/日産篇】

日産GT-RスペックV(2009年)

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「どれだけ」よりも「どこを」

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水野さんによれば、軽量化に際してもっとも重要なポイントは、「どれぐらい軽くするかよりも、どこを軽くするか」にある。結果として、2009年型の日本仕様の標準車が1740kgであるのにたいして、60kg減の1680kgとなったが、減量の過半はハンドリングやロード・ホールディングに大きな影響を与えるバネ下部分で実現された。

重すぎるというのはGT-Rにたいする常套的批判だが、水野さんは「慣性重量は負のエネルギーにもなるが、有用な荷重としても使える。絶対値が問題ではない」と反論してきた。つまり、重さは味方につければスタビリティの向上要素になり得るということだが、その場合でもバネ下は軽くなければならない。軽いバネ下実現の2大ポイントは(1)カーボン・セラミック・ブレーキ(CCB)と(2)レイズ製のワンピース・アルミ鍛造ホイール(20インチ)で、とりわけCCBはスティール製比1輪あたりでマイナス5kgという軽量化を果たした。一般論として、カーボン・ブレーキは低温環境下では、摩擦材のはずが潤滑材になってしまう場合があるが、GT-Rがブレンボ社と開発したシステムでは、カーボン含有率を上げつつこの難点も克服した、と主張されている。このシステムを得たスペックVのテスト車は、ニュルで2.05の最大制動Gを記録したというから驚きだ。



バネ上ではリア・シートが廃止されたほか、リア・スポイラーやシートのメイン部材などがカーボンに変更されている。なお、バネはレートを上げた。ショックアブソーバーはノーマルのRモード時より締め上げ、減衰力の電子可変制御をなくした。


軽量・軽快

仙台では09年標準車および「NISMOクラブスポーツパッケージ」装着車と比較しつつ、ブリヂストン・タイヤを履いた個体とダンロップ・タイヤを履いた個体の2種をドライブした。そして、スペックVがノーマル車はむろんNISMO車とくらべても、別次元の、これまでの僕の運転経験のなかでも、もっともエキサイティングなドライビング・ファンを与えてくれたクルマであることを知った。1575万円の価格はノーマル車比最大714万円も高いが、それでも同等に近い性能の他車との国際比較に載せれば、ずいぶんと安い。僕は高くないとおもう。

サーキットを走ってのスペックVのいちばんの魅力は、その軽量・軽快感にある。それがノーマルのGT-Rからは得られない陽性のドライビング・ファンをつくっている。水野さんに洗脳されてしまったのかもしれないが、ドライバーとクルマのあいだになんの介在物も存在しないかのようなピュアなつながりを感じるのだった。コーナリングの最中でも、その前でも後でも、姿勢変化がない。まるで渓流のせせらぎにこころを洗われてでもいるかのような清らかな気持ちで、サーキットを飛ぶように走るのである。心底、驚愕のドライビング体験だった。一流のものを知った感じである。

文=鈴木正文(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦

(ENGINE2009年6月号)

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