2024.09.22

CARS

このアルファ・ロメオを世界遺産に認定したい! ジュリアとステルヴィオ、2台の“クアドリフォリオ”に試乗 これが新車で買える最後のチャンスかも

ジュリアとステルヴィオの2台のクアドリフォリオに乗ってみた!

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ニュル最速の称号

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そんなジュリアからステルヴィオのクアドリフォリオに乗り換えると、思わず笑ってしまう。あれほどジュリアが洗練されていたのに、ステルヴィオのなんと野蛮なことか。ガチガチに固められたアシは街中であろうが高速道路であろうが不整路面ではここぞとばかりに振動や突き上げを正直に伝えてくる。



ステルヴィオのクアドリフォリオにはニュルブルクリンクで最速SUVの称号を勝ち取るという使命があった。動力性能はジュリアとまったく同じだが、車重はステルヴィオの方が200kg以上も重く、SUVなので当然重心も高い。それをジュリアと同じように走らせるためにフェンダーをめいっぱい引っ張り出して、トレッドも広げ、アシもきっちり締め上げた。SUVというよりまるでレーシングカーのようだ。

ちなみに0-100km/h加速は、ジュリア・クアドリフォリオの3.9秒より4駆のステルヴィオ・クアドリフォリオの方がコンマ1秒速い。路面を鷲掴みにするようにして問答無用に猛然と加速する様は、蛇というよりは恐竜だと思う。



そんなハードなステルヴィオ・クアドリフォリオの一番の魅力は何かと言えば、フェラーリのV8から2気筒を切り落とした同じ90度のバンク角を持つ2.9リッターのV6ツインターボだろう。これは同じエンジンを積むジュリアのクアドリフォリオにも言える。高性能なエンジンはほかにもあるが、生き物のような熱い脈動とゾクゾクする官能的な音色は、さすがフェラーリのDNAを持つエンジンだ。こういうクルマに乗ると、「イタリア車はやっぱりエンジンだ」とつくづく思う。そう考えるようになったのは、23年前にアルファ・ロメオを買ったことがきっかけだった。

真夜中の峠道

エンジンが創刊された次の年、2001年の1月に編集部員となった僕は、免許を取って以来、運転したことのなかったマニュアル車の運転練習のためにアルファ・ロメオの156を買った。広報車落ち、5段マニュアルのツインスパークだ。練習は仕事が終わった後の深夜。自宅で156に乗り換え、中央高速を下って近隣の山道に向かうのが日課だった。明け方まで走って少し寝てまた仕事というハードなことができたのは、それがアルファ・ロメオだったからだ。

ボルボのワゴンから乗り換えた156は、底抜けに楽しかった。ほんの少しの微舵に反応するキレのいいステアリング。甲高く歌うエグゾーストノート。そしてなによりも、7000回転までブンブン回る痛快な4気筒のツインスパークが最高だった。同じ道を何度走ってもワクワクして、夜明けまでの時間はあっという間だった。

それからだ。クルマの好みが一気に変わったのは。その後はマセラティ・クアトロポルテ、フィアット・ムルティプラ、それに初代フィアット・パンダをプラスしてフィアット2台持ちとなり、イタリア車ばかりを乗り継ぐことになる。

どれも毛色の違うクルマばかりだが、共通するのはみな「エンジンが楽しい」ということ。面白いのは、ムルティプラのようなファミリー・カーやパンダのような庶民の足グルマのエンジンでさえ、ドライバーを鼓舞する刺激があることだ。パンダの4気筒はたったの52馬力しかないが、ツキのいいアクセルと全段ローギアードの5段MTのおかげもあって、小さなハッチバックを生き物のように感じさせてくれる。たった1000ccの4気筒エンジンが、なぜこんなに元気で、楽しく、面白いのか。実はこれはエンジンに限ったことではない。つまらないクルマには乗らないし、つくらない。イタリア人が大事にするのはきっとそこなのだと思う。僕は夜の峠道をアルファ・ロメオで走り続けたことで、そんな胸がキュッとなる、愛のようなものを感じるクルマが好きになり、いまに至っている。

荷物は積めるが、キャンプにはまったく向かないと思える(笑)。乗り心地のハードさはニュル・アタックへの決意の現れだと思うと納得がいく。

今回の撮影場所を東京のアーバン・ロードにしたのは、2台のクアドリフォリオを23年前の156とちょっと比べてみたくなったからだ。で、どうだったのか? 胸は熱くなったのか? 答えはイエス。FFとFRの違いはあっても、根っこのところにあるものは同じだと思った。きっとこれが最後になる純内燃エンジンの2.9リッターV6ツインターボが叫ぶと、胸がキュッとなり、僕は夜の峠道を鮮明に思い出したのだから。

文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

■ステルヴィオ2.9V6ビターボ・クアドリフォリオ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4700×1955×1680mm
ホイールベース 2820mm
トレッド(前/後) 1620/1675mm
車両重量 1960kg
エンジン形式 90度V型6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ
総排気量 2891cc
ボア×ストローク 86.5×82.0mm
最高出力 510ps/6500rpm
最大トルク 600Nm/2500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤサイズ(前/後) 255/40R21/285/35R21
車両本体価格(税込) 1400万円

■ジュリア2.9V6ビターボ・クアドリフォリオ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4635×1865×1435mm
ホイールベース 2820mm
トレッド(前/後) 1555/1605mm
車両重量 1710kg
エンジン形式 90度V型6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ
総排気量 2891cc
ボア×ストローク 86.5×82.0mm
最高出力 510ps/6500rpm
最大トルク 600Nm/2500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤサイズ(前/後) 245/ZR19/285/ZR19
車両本体価格(税込) 1357万円

(ENGINE2024年8月号)

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