2025.04.27

LIFESTYLE

地面より90cm下がったリビングが生み出す驚きの眺望 建築家が丘の上に建つ自邸で挑んだ「眺めが良くなるアイディア」とは?


作品として設計

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納谷さんは40代後半まで自邸を手掛けなかったが、それには訳がある。キャリアのある建築家にとって、自邸は難しいのだ。「もし建てるとなれば、その時は『作品』を作りたい」と考えていた。それを実現させたのがこの家である。「妻は、『私の要望は何一つ入っていない』と言うかもしれません。ですが、この家を作品にすることを十分理解してもらっています。土地も一緒に探しました。この場所をみつけたのも妻です。その意味で、夫婦二人で作った家と言えるでしょう」。

作品というだけあって、納谷邸には挑戦的な要素がいくつも盛り込まれている。それは、外観を見ただけでも分かるだろう。平たい1階の屋根の上に芝生が敷かれ、2つの小さな小屋が置かれたような外観は、けっして普通の家ではない。よく見ると、プロダクトのように細部までこだわって設計されているのが分かる。隣の家と比べて随分と小さいのは、1階の床面が地面より90cm掘り下げた位置にあるから。家の内部は、シンプルな外観から想像するより、遥かに複雑だ。玄関から家の中に入ると、まず階段を数段下りて1階に。この階にあるのは、リビング・ダイニング・キッチンに、水回りと主寝室。階段で上った踊り場の中2階が、収納とロフトになっている。1階の屋根の上に乗った2階の二つの小屋は、子供部屋だ。

天井が高いリビング・ダイニング。90cm地面を掘っており、棚の上部が地面の位置。庭の向こうに、遠くの景色が広がる。

納谷邸はガラス部分が多くて明るく、視線が抜けるので床面積以上に広さを感じられる。なかでもリビング・ダイニングが地面より90cm下がった位置にある効果が大きい。ソファーや椅子に掛けると、目線はちょうど庭と同じレベルになる。その庭の先にあるのは、数メートル下の隣家の敷地。境に柵など無く、庭の向こうの遠くの丘まで見える。この景色を得るため、こだわって土地を探したのだ。納谷さんは、「毎日がスペシャルになるような、非日常の演出を考えた」と話す。

この家が作品らしいのは、色合いの異なる異素材の組み合わせや、きっちりとした仕上げなどが、随所にみてとれる点だ。もっとも作品だからと言って、使い勝手を犠牲にしている訳ではない。機能も十分に考えて設計されている。例えばキッチンが配されているのは、リビング・ダイニングから半分だけ見える位置。料理上手の納谷さん夫妻の家を、友人たちが訪れることも少なくない。この配置のおかげで、隠したいところは隠しながら、料理中でもダイニングに掛けている人ともコミュニケーションできるのだ。

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