ふだんのレースではライバルとして戦うメーカー直系のワークス・チーム。サーキットでは火花を散らしているが、チューニング・カーの開発やプロモーションでは手を組んで、メーカーのカタログ・モデルとは違うクルマの楽しみ方を発信していこう。そんな趣旨で始まった「ワークス・チューニング・カー合同試乗会」、途中中断もあったが、10年近くも続いているというから驚く。今年は開催場所が栃木県のツインリンクもてぎとなり、ニスモ、STI、TRD、無限の4社が、各社イチオシのワークス・チューニング・カーを持ち込んで開催された。
今回、一番の注目はなんと言ってもTRDのスープラだ。復活したばかりのスープラを、いったいどんなふうにチューニングしたのか興味津々だったが、なんとTRDは発売前、いやそれどころか開発中のパーツを装着した車両を試乗会に持ち込んできたというから驚いた。しかもそのパーツを開発したのはヤマハの4輪部門だという。それはTRASというダンパーで、外見を一見しただけでは何が特別なのかわからない。が、体験用に減衰力を低めた試作品を手にしてびっくり。
ダンパーは普通なら伸びた状態を押し込んで装着する。つまり常に伸びる方向に力が働いているものだが、この新開発のダンパーは常に縮み方向に力が働いている。したがって装着するときには縮んでいる状態を引っ張り出して取りつけるのだという。これでいったいどうなるのかと言えば、乗り心地がしなやかになるという。ホントかどうかTRASつきとノーマルを乗り比べてまたびっくり。TRASつきはバネレートをフロントで5%、リアで10%高めているというが、しなやかなのは断然TRASの方だった。変な言い方だが、硬くなっているのに乗り心地も良くなっている。
こう言ってはなんだが、ノーマルのスープラの方がチューニング・カーのようだった。聞けばスープラのリア・サスペンションはホイール・ストロークが短く、固めるとすぐにアシが動かなくなっていたのが、TRASを使うとリアのキャパシティがグッと広くなったというから驚く。ただし、TRASがすぐに商品化されるかというと、そうでもない。かなり特殊な構造ということで相当高価なものになるらしい。でも、コスト優先の純正部品とは違うのがチューニング・パーツなのだから、欲しい人は必ずいる。是非とも商品化してほしいと思った。
さて、TRDスープラがそうだったように、最近のチューニング・カーはノーマルの良さを生かして質感を高める方向のものが多いが、ニスモのGTRだけはちょっと違っている。今回もスーパーGTドライバーの柳田真孝選手がドライブする2013年モデルのクラブマン・レース・スペック(CRS)にショートコースで同乗試乗させてもらったが、頭抜けたスポーツカーだと、改めて感心させられた。これだけ高性能なクルマはGTRをおいてほかにない。文字通り、公道を走るレーシング・カーだと思った。これがナンバー付きで公道も走れるというのはすごいことだと思う。いやはや、チューニング・カーはホントに面白い。
TOYOTA RAV4 Field Monster
TRDがスープラのほかに持ち込んだのは外装をドレスアップしたRAV4とプリウス2台。オンロードとオフロードの走行性能を飛躍的に高めた新型RAV4をベースに開発したのは、オフロードをイメージした「フィールド・モンスター」とスポーティな走りをイメージした「ストリート・モンスター」の2タイプ。右の写真はワイルドなパーツを纏ったフィールド・モンスターで、このまま探検にでも出かけられそうなくらい完成度が高い。
一方、プリウスは空力パーツとホイールで走りをチューニングしていて、これが乗ってみるとハンドルもビシッとしっかり、安定感も抜群。プリウスじゃないみたいだった。
NISSAN NISMO GT-R 2013 CLUBMAN RACE SPEC
日産車のチューニングと言えばNISMO。スーパーGTやルマンなどのレース活動がメインだけあって、NISMOが手がけたスパルタンなクルマは絶大な人気がある。なかでもGT-Rはダントツで、最新モデルはもとより過去のモデルにまで遡ってチューニングするスペシャルなコースまで用意されている。今回、会場に持ち込まれたのは2013年と2008年のGT-Rに加え、なんと32、33、34のスカイラインGT-Rも展示車両としてだが用意されていた。そのどれもがCRS(クラブマン・レース・スペック)というコンセプトのもとにチューニングされており、日常使いの快適性とサーキットでの性能を高次元で両立しているという。唯一試乗が許された2013モデルのGT-Rに会場となったもてぎサーキットの周回路と本コースで乗ってみたが、まあ普段乗れなくはないが、腰痛持ちの身には辛い硬さだった。一方、サーキットでは文句のつけようがないほど気持ちがいい。ピントはずばりサーキットに合っていると思った。すごいです。
SUBARU FORESTER X-BREAK STI
スバルのモータースポーツ活動を担うSTIのイメージは?と聞かれてWRC(世界ラリー選手権)と答えるのはもう古い。もちろんWRXは今でもラリーに使われているが、STIのモータースポーツ活動はニュル24時間の方にシフトしている。そんなこともあって今回は2019年のニュル参戦車両を展示車両として持ち込んでいたが、このWRX、このほど長くレーシング・エンジンとして愛されてきた2ℓ水平対向4気筒のEJ20の生産終了が発表された。果たして今後スバルのモータースポーツを支えるメイン・エンジンは何になるのか興味津々。さて、そんなSTIの試乗車はフォレスターのXブレイク。最初にノーマルのXブレイクに試乗してからSTIモデルに乗ってみると、ノーマルも相当よくできていたが、STIはビシッと引き締まっていてスピードレンジが一段上の感じがした。STI自慢のパフォーマンス・パーツというのがウリで、人間の身体でいうところの体幹をチューニングしたという。まさに強靭な足腰を持つアスリートという感じだった。
HONDA MUGEN CIVIC TYPE R
ホンダの無限が持ち込んだのはシビック・タイプR、CR-V、そしてハイブリッドのインサイトの3台。シビック・タイプRは、お客さんがタイプRに求める「もっとこうして欲しい」という声に応えたチューニングをしたというが、このクルマのどこをチューニングする必要があるの?と思って乗ってみると、まだありました伸びしろが。ひと言でいうとよりシャープかつスムーズになったという感じ。エンジンなどには手を付けず、空力性能やホイール、シフトを見直しただけというが、プロの仕事は凄いと思った。この方法はCR-Vもインサイトも同様で、どちらも"バランスを整える"という目から鱗のチューンが見事だった。
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
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