2020.12.26

CARS

ポルシェ904とフェラーリF40の、闘うクルマ2台持ち! 戦闘好きは経営者に必要な資質の1つであり、チャレンジャー精神にも繋がっているというオーナーの旧車趣味とは

コンペティション直系の2台、ポルシェ904とフェラーリF40の、戦うクルマ2台持ちの中谷さん。

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コンペティション直系の2台

ブリオに着くとレストランに入る前にこの2台の前を通ることになる。2台を見ただけでクルマ好きは“ここに来た甲斐があった”と思うだろう。国籍も性格も異なる2台。実は中谷さん、ポルシェも好きで、フェラーリも好き、なのだ。

今年61歳。若い頃、日本グランプリの映像を見て衝撃を受けたクチだ。なかでも1964年のGPで式場壮吉の駆るポルシェ904の画像はひと際鮮明に目に焼き付いたのだという。「とはいえ、最初のクルマはスカイラインでしたけど(笑)」。

高校時代にはカートで走り込んだ。免許を取って、パープルに塗り替えたハコスカGT-Rをオバフェン・シャコタンにして乗り回し、フェアレディ240Zを3Lまでスープアップしてゼロヨンを戦った。戦闘好きは経営者に必要な資質の1つでもあり、チャレンジャー精神にも繋がる。至高のコンペティション直系モデルというべき現在の2台のラインナップは、中谷さんに宿る様々な熱き想いの必然的終着点だったのだろうか。

エンツォ・フェラーリが見守った最後の跳ね馬ロードカー。憧れ続けてずっと探していたところ、十数年前の年の瀬に東京で売り物が出たとの報せが。手付け金を握りしめすっ飛んで行った中谷さん。自分へのクリスマス・プレゼントに、と24日に改めて引き取りに行った、らしい。


「実はポルシェでサーキットを攻めるのが好きだったんですよ。964ターボや996GT2でスズカのタイムアタックに挑戦したりしていたんです。930カレラではル・マン・クラシックにも出ました。そうそう、そのときですよ、同じクラスの904GTSにぶち抜かれて。まったく歯が立たない。めっぽう速かった。そのとき、いつかは自分も! って思ったんですよね~」

聞けば最近はとんとサーキットとはご無沙汰だという。反対に旧いクルマへの興味がどんどんと増した。その結果が“その昔のレースに通じるこの2台”だったのだ。

「10年ほど前ですか、スズカに最新のGT-Rが現れたんです。こっちは通いに通って、いろんなセッティングを試しながら、本格的なヘルメットとスーツでばっちりキメて、必死になってコンマ何秒を縮めてきたわけじゃないですか。なのに、長袖にヘルメットだけでやってきたGT-Rが、走り込まないうちに自分と同じようなタイムで走り出した。文句なしに速いんですよ、最新のスーパースポーツは。ボタン1つで何でもできるというかね。それはそれで凄いことだと思うし、最新のフェラーリあたりも格好いいとは思うんですけれど、なんというかクセがなくて面白みに欠けるというか……。それはそれで乗れば楽しいとは思うのですが……」

目の衰えもあって、GT-Rの出現を機に個人的にはサーキットからは足を洗ったらしい。もっとも仲間うちではまだまだ元気に走っている人も多く、その面倒をみがてら出掛けることも多いというが。



「一時期、ディーノとBB、F40と、年代の違うフェラーリを所有していたことがあったんです。どれも紛れもなく跳ね馬らしいクルマでしたけれど、キャラクターはまるで違った。その年代の造り手の思いが、不完全さのなかにかえって立ち上がってくるといいますか……他の人から見ればそれって欠点かもしれませんが、乗っている方からすると長所なんです。クセも味。そのクルマに独特なキャラクターなんだと思うと、もう愛おしくて」

なるほど、昔のクルマにはあからさまな欠点があって、それをカバーする長所が美点とされてきた。ディーノならパワーはモノ足りないかもしれないけれど、ハンドリングが素晴らしい。BBならパッケージは悪いかもしれないけれど、スタイルとGT性能が素晴らしい。

「F40は、もうじゃじゃ馬ですよね。でも、これはエンツォが見守った最後のフェラーリ・ロードカーです。レーシングカーでもある。ボクにとっては最高のマシーンです」



凄いだけじゃツマラナイ。中谷さんの境地はそこだ。けれどもスーパーカーもまたクセをなくすことで進化してきた。だから機械任せになってしまうことは、ある意味仕方がない。だからこそ、世間の多くのスーパースポーツカー乗りがクラシックモデルを同じガレージに並べているのだとも思う。

「実はこの904、前オーナーがアヴェンタドールを買うから、ってボクに譲ってくれたんですよ。現代のスーパースポーツが登場しなければ、決して回ってこなかった。違う意味で感謝しています(笑)」

F40と904GTS。スーパースポーツの祖先である。中谷さんの夢はこの2台の間にスーパーカーの元祖ミウラを収めることらしい。

文=西川 淳(自動車ジャーナリスト) 写真=望月浩彦



(ENGINE2020年12月号)

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