2021.06.27

CARS

ローマとポルフィ―ノMに乗って、GTカーとしてのフェラーリを考えてみる

モダンGTカーの誕生

advertisement


いま、私の目の前には2台の最新フェラーリG T カーがある。ブル(ブルー)・ローマと名づけられた外装色を持つローマとビアンコ・イタリアのポルトフィーノM。クーペとリトラクタブル・オープンという車型の違いはあるものの、いずれもフロントに3.9リッターV8ツインターボ・エンジンを縦置きし、新しい8段のデュアルクラッチ式自動マニュアル・トランスミッションを介して後輪を駆動する2+2モデルだ。

どちらもFR車ならではの均整のとれた美しいプロポーションを持っていることは、横走りの写真をご覧いただければ一目瞭然だろう。なによりもシックでエレガントなルックスを持つことは、GTカーとしての絶対条件であり、それを完璧に満たしているのだ。

改めてこんなことを強調するのは、実のところ同じフェラーリでもリアル・スポーツカーとなると、これほどまでに美しいプロポーションを持っているわけではないからだ。ミドシップ・モデルならばどうしたってキャビン・フォワードなモダン・レーシング・カーを彷彿とさせるカッコウとなるし、フロント・ミドにV12気筒を押し込めばこれまた極端に長いフロント・ノーズを持つクラシックなレーシング・カーを思わせるものとなる。そして、当然のことながら、均整のとれたプロポーションを持つことは、運転のしやすいバランスのとれたハンドリングにも繋がっていく。切り込んだ途端に身体もコーナーに入っていくようなミドシップのそれとも、まずノーズがコーナーに入ってから一瞬遅れて身体も動いていくような感覚のフロント12気筒モデルとも違った極めてニュートラルな操縦性。それこそが、もうひとつのGTカーに求められる条件であることは言うまでもない。

今回、ローマには日本のナンバーがついていたけれど、ポルトフィーノMはまだ未登録のため、公道で乗ることは叶わなかった。しかし、クローズドの場所で少しだけ動かした印象では、どちらもGTカーとしての極めて運転しやすいハンドリングを持ったモデルであるのは間違いない。しかし、そこから先の乗り味については、フェラーリは少しズラした性格づけを行っているようだ。ポルトフィーノMは、これまでのポルトフィーノを大幅にブラッシュアップしたモデルで、全体的にややクラシカルな落ち着きを感じさせる内外装を持っている。太いエンジン・サウンドもローマほど派手ではなく、ハンドリングもより運転しやすいように感じられた。こちらの方が幅広い層に支持されるのではないか。

一方、現代に映画『甘い生活』の世界を甦らせるモデルだと謳うローマは、エクステリアはもちろんインテリアのデザインも独創的で、モダンな家具が並べられた部屋にいるような感覚だ。すべて液晶パネルに表示されるインパネやクリック式のスイッチ類なども未来的なのだけれど、しかし、アナログ式になった回転計やレザーの使い方などに、どことなく古きよき時代の香りも残している。キュルキュルと高い音を立ててスターターが回った後、ブフォーンと派手な音を立てて火が入るエンジン・サウンドも強烈だった。横浜でロケを終えた後、東名高速を西に向かい、富士五湖をかすめて中央道で帰って来たが、まったく乗り足りない。どうせなら京都まで、いや、いっそこのままローマまで大冒険旅行に出たくなるくらい速く、快適なモダンGTカーが誕生したのだと思った。

▶「フェラーリのおすすめ記事」をもっと見る

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

(ENGINE2021年6月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement