2021.07.17

CARS

今一番カッコいいポルシェ、911タルガが上陸! 果たしてそのデキやいかに?

新型が上陸するたびに大いに注目される992型のポルシェ911。今回はスタイリッシュなデザインが魅力のタルガの4駆モデル、タルガ4の広報車が用意されたというので、同時に上陸した素のターボと合わせて早速借り出してみた。試乗したのはモータージャーナリストの島下泰久氏とエンジン編集部の村上、塩澤、荒井の3名。果たして、最新のタルガは、最良のタルガだったのか?

姿がいいだけじゃなくなった!

村上 ポルシェのセンターに911がいるとして、その911のセンターと言えば、やはりクーペだったよね、これまでは。

島下 今でもクーペのカレラが始まりと終わりの釣りで言うへら鮒であることに変わりはないと思いますよ。

村上 でも、どうよこのタルガ。私はタマげたね。これまではニッチのニッチみたいなモデルだったタルガが、まるでセンターにいるかのように、ある意味911のあり方を象徴するモデルになっている。クーペでもありオープンでもあり、スポーツカーでもありGTカーでもある上に、断然スタイリッシュ。先代は残念ながら、風仕舞いやボディ剛性に問題なしとは言えなかったけれど、そういった欠点が完全に払拭された結果、輝きが格段に増した。

塩澤 先代はあちこちにネガティブな所があって、それがチリが積もるような感じで、全体としてちょっとガッカリなものになっていたからね。

ほかの992型と同様、タルガもナロー時代のデザインを模した水平の直線を基調としたインテリアを持つ。そのクラシックなテイストと、同じくナロー時代のタルガのデザインを模したシルバーのロール・バーを持つデザインが見事にマッチする。

荒井 僕はもともとタルガ好きだから先代でも構わないと思っていたけどね。911ってこれまでカッコイイと思ったことは一度もないけれども、タルガだけはまったく別モノ。

村上 ま、それでも、“姿良ければすべて良し”みたいな面があったことは否めない。オシャレではあるけど、本気で走るにはちょっとという感じが先代にはあった。

島下 それが、今回のタルガではちょっとずつの欠点をまさにちょっとずつ修正した結果、全体としてイッキに良くなったということでしょう。とりわけ、ロール・バーの角のあたりで風が巻いて騒音を立てていたのが解消されたのが大きい。

村上 独特のドラミング音が抜けなかったからね。

塩澤 風の巻き込み方も凄かった。

島下 今までのは60km/hくらいまでしか我慢できなかったけれど、今度のは日本で走る分にはだいたい問題ないでしょう。

村上 どこをどういじって良くなったのか、見た目はロール・バーまわりの形状もほとんど変わっていないのに断然良くなっているのが凄い。

最新は最良

島下 先代のタルガがこのカタチになったのは、991型のクーペにアウター・ガラス・サンルーフが採用されたからで、それで997型までのタルガのサンルーフ方式は出来なくなった。それでもタルガを存続させるために、それならば先祖返りしてロール・バー方式にして、さらにルーフを自動開閉するようにしようということになったわけですよね。それを何とか上手くカタチにして出したけれど、細かい点に問題がないわけではなかった。しかし今回、欠点をしっかり潰してきた。いかにもポルシェらしいステップ・バイ・ステップの仕上げ方だと思います。





村上 まさに“最新は最良”を地で行く話だよね。もうひとつ、今回のタルガがとりわけ魅力的だと思ったのは、992型の全体のデザイン・コンセプトが先祖返りにあって、内装の横の直線を多用したデザインなんて、まさに空冷時代のそれを模したものなわけでしょ。それと昔のタルガを想起させるロール・バーのデザインが見事にマッチしている。それで、私はこのタルガがカレラ・クーペとならぶ911のもうひとつの中心になったんじゃないか、と思いたくなるくらい気に入ってしまったわけ。空冷時代を思わせるグリーンのボディ・カラーも良かったなぁ。

ターボSとの味付けの違い

村上 さて、もう1台のターボの話もしましょうか。

荒井 なんかこのターボ、足が結構硬かったよね。

村上 前に乗ったターボSカブリオレが全方位的に、コンフォートからスポーツまで、そしてクローズからオープン・エアまでをカバーするオールマイティな乗り物であったのに対して、これはかなりスポーツ方面に振ってある感じがしたね。

島下 硬いというより、バネ下が重かったんじゃないかな。前に乗ったターボSにはセラミック・ブレーキのPCCBがついていたけど、こっちはノーマルのブレーキだった。

村上 なるほど。PCCBはバネ下が格段に軽くなることによって、乗り心地の改善にかなり効くからね。

島下 僕は、足はターボSよりこっちの方が柔らか目でよく動く感じがしたんですよ。



村上 確かに、パワーと重さの差を考えたら、ターボSカブリオレの方が固めていると考えるのが普通だね。

島下 ターボSは、迫りくるライバルたちをすべて撃破するためにあるトップ・モデルですよね。ちょっと突き抜けているというか、加速時の音からしてもの凄い。それに比べると、ターボはもう少し穏やかで、パワーの出し方も、より扱いやすい感じになっていて、本来のターボのあり方を踏襲しているのはこっちなんじゃないかと思いました。 

塩澤 911ターボの性格って、モデルチェンジごとに振り子のように揺れているって話があったよね。ものすごくラグジュアリーな感じになったり、その揺り返しで、いっぺんにワイルドで激しい乗り物になったり。今回はどっちなの?

キャラクターを明確にした

島下 その両方を揃えてきたんじゃないかと思ったんです。991型の時には、ターボとターボSの違いがあまり良く分からなかった。

村上 どっちも結構ラグジュアリーだったような印象があるね。

島下 そうそう。それを今回はターボSを思い切りアドレナリンが出るようなクルマに振ってきて、その一方で、ターボは一番ラクチンで一番速い911であることを強調するというように、作り分けてきたのではないかと思うんです。

  試乗車にはクラシックなデザインのカレラ・エクスクルーシブ・ホイールがオプション装着されており、ナロー時代を想起させるパイソン・グリーンのボディ・カラーと相まって、独特の雰囲気を醸し出していた。

塩澤 ひと昔前だったら、ポルシェ・ターボと言ったらスーパーカーの範疇に入るとんでもない高性能車であったはずなのに、それがまったくフツーに乗れてしまうのが凄い。

島下 それでも回してからが速いカレラと違うのは、ターボはひと踏み目からメチャクチャ速い。でも涼しい顔をしている。その時、ターボSなら凄い音を響かせているわけです。

荒井 結局、これだけモデル数が増えてくると、それぞれのキャラクターを明確にしていかないと、どれも同じようなものになってしまう。

島下 なにしろ、ターボ4駆という意味では、ターボもターボSもカレラ4も、もっと言えばタルガ4も同じですからね。どれ買っても同じじゃんとなってしまっては困る。

塩澤 キャラの立て方については、ポルシェもかなり試行錯誤してるのかなっていう気はするよね。

島下 だから今日タルガに乗って思ったんですよ。カブリオレとタルガを比べた時に、オープンでもメチャクチャ快適で気持ちいいのはカブリオレだと思うんです。一方、タルガは明らかに意図してカッコ重視に寄せている。ポイントはとにかくカッコ良くすることにあり、あとは走りをなんとかまとめている感じで、そこに明確な違いがある。ターボとターボSも同じようにキャラクターの違いをつけているのだと思います。

村上 僕はあまりにタルガに感動して、ターボのことは忘れちゃったな。

一同 (笑)

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話す人=島下泰久+村上 政(まとめも、以下ENGINE編集部)+塩澤則浩+荒井寿彦 写真=柏田芳敬

■911ターボ  
駆動方式 リア縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4535×1900×1303mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1640kg(前軸640kg:後軸1000kg)
エンジン形式  直噴水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量 3745cc
ボア×ストローク 102.0×76.4mm
最高出力 580ps/6500rpm
最大トルク 750Nm/2250-4500rpm
トランスミッション(PDK) デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前) 255/35ZR20
(後) 315/30ZR21
車両本体価格(税込み) 2500万円

■911 タルガ4  
駆動方式 リア縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4519×1852×1297mm
ホイールベース 2450mm
車両重量 1690kg(前軸650kg:後軸1040kg)
エンジン形式 直噴水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量 2981cc
ボア×ストローク 91.0×76.4mm
最高出力 385ps/6500rpm
最大トルク 450Nm/1950-5000rpm
トランスミッション(PDK) デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前) 245/35ZR20
(後) 305/30ZR21
車両本体価格(税込み) 1760万円

(ENGINE2021年7月号)

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