雑誌『エンジン』の名物企画、「エンジン・ホット100ニューカー・ランキングス」の2021年版で15位となったのはポルシェ718ケイマンGTS&GT4だ。電動化の嵐が吹き荒れる中、あえて自然吸気フラット6を復活させたポルシェ。しかも、MTを選択できるとくれば、“絶滅危惧種”の中の“絶滅危惧種”とも言うべき存在か? 今買っておかないと後悔しそうな理由を選考委員のコメントとともに紹介する。
718ケイマンにフラット6が復活!
「CO2を削減せよ!」という錦の御旗の下、恐らくは投機筋の思惑も加わりながら欧州を中心に想定を超える勢いで進行中の、パワーユニット電動化。そもそも、パワートレインのいずこかにモーターを採用しないと、そのクルマは「環境に対する配慮ゼロ」とさえ受け取られかねないのが、今の時代の空気感。それゆえ、今手に入れておかないと、近い将来こういうモデルは買えなくなりますヨ! という悲壮感が滲み出ているのが、点数を投じた多くの選考委員のコメントに共通する雰囲気でもあったことが興味深い。

フラット6エンジンの“復活”に加え、「濃い味わいを満喫できる」と語る村上編集長や「自然吸気6発ってやっぱりいいものだ」と再認識の藤野さんなど、多くの人が「自然吸気であること」に拘った投票を行った様子も見てとれる。同時に「往年の911みたいな雰囲気が味わえる」という編集部上田さんや「911の代役、否それ以上」と絶賛する大井さんのように、兄貴分である911を引き合いに出す意見が現れたのも4気筒の718にはない特徴だ。
「911に比べれば依然としてコンパクトで身近な存在」と読み解いた高平さんの意見には、実は「最新の911は大きくなり過ぎ」と感じる私自身も100%賛同。桂さんの「少なくともコンパクト感やフットワークの軽さはケイマン/ボクスターにこそある」というコメントも、同様の趣旨であるはずだ。一方、それでもポルシェの“顔”は911だし、やっぱり甲乙つけがたい……という気持ちは、911カレラ系に20点、こちらに19点を投じた村上編集長の苦渋の配点(?)に代表されている。

自然吸気エンジンが絶滅を危惧される存在ならば、自動ブレーキなどとの相性の悪さもあって今やそれ以上の“絶滅危惧種”となっているMTを選択出来ることに対して、「MTでエンジンを味わい尽くしたい」と言う石井さんや「MTで乗りたいスポーツカーの筆頭」と認定する藤野さんのように、価値を見出す選考委員の声も聞かれることに。
いずれにせよ、「旬なモノを旬に味わう」点を選考基準とした藤原さんの「鮮烈で快活で、どこかノスタルジックな味わい」のフラット6と6MTが琴線に触れる、という述懐が、最新モデルなのにちょっとクラシカルな内容を持つこのポルシェの魅力を総括しているのではないか。
文=河村康彦 写真=神村聖/ポルシェA.G.
(ENGINE2021年9・10月号)
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