2021.11.02

CARS

ついに生産終了! ロータス・エヴォーラGT410スポーツに乗って「ロータスとは何か?」を考える


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そんなエヴォーラに、久しぶりに触れた。深夜、暗闇の中、グレーの車体に潜り込む。エリーゼやエキシージよりは余裕があるが、やはりタイトだ。ペダルはやや左にオフセットしているが、大きなフットレストはあるし、感触がガチッとしていて短いストロークのシフトとステアリングとの位置関係は良好だ。

まるで車体中央に座っているかのように感じられる見晴らしのいい前方の視界は、マクラーレンのスポーツカーに似ている。いっぽう後方視界はリア・フードに付くルーバーのせいで絶望的だ。斜め後ろもまったく見えない。シートもバックレストの張りが強く、背中が痛い。



空からは大粒の雨が落ちている。熱の入っていないミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2のせいか、深夜の関越道ではときどき車体がずずっと左右にふられる。暗くて見えない、わずかな轍や凹凸が油断ならない。身体をしっかりシートに押し付けて身構えて走り続けていると、いつしか背中の痛みが消えていた。長くちゃんと座ってこそ、ぴったりとフィットする仕立てだ。修正舵を入れるのも慣れてくると、操作そのものはけっして難しくはない。サスペンションは一発決めでストロークは短いが、路面を常に捉え続けようとしているのがよく分かる。

ポルシェ・ケイマンよりもずっと軽い

夜が明けて、群馬との県境でカメラマンと落ち合う。宿場町での撮影を終えて移動し、峠道にさしかかると一瞬雨がやんだ。濡れた路面に用心しながら、はじめて鞭を入れた。

まず、V6の雄叫びに驚いた。通常モードなら5500rpm以上、スポーツ・モードなら常時開放される排気系の保護バルブが開くやいなや、いかにもマルチシリンダーらしい“フォーン!”という甲高い音が室内に響く。この排気音は高速巡航時の静けさとはまるで別物だ。

タイヤに熱が入ったのか、直進安定性は打って変わって上々だ。昨夜のように修正舵をあてる必要はまったくなく、安定してビシッと進む。

GT410スポーツの車両重量は1410kg。ロータスとしては重いと思うかもしれないが、それでも6気筒を載せるケイマンあたりと比べると大人1人分くらい軽い。前後重量配分は前軸540kg、後軸870kgと、かなりリア・ヘヴィでノーズは軽いのに、グリップが強烈でフロントはそうそう逃げようとしない。エヴォーラはエリーゼやエキシージのようなノン・パワーのステアリング・システムではなく、油圧式のパワー・ステアリングを採用しているが、路面の情報はきっちりと伝わってくる。向きを変える時の反応そのものは登場当時のエヴォーラと同じくらい素早いが、まとわりつくものが何もないかのようなすっきりした感触ではなく、ぐいぐいと力強く、確かなフィードバックがある。

雨の中、撮影地を探してさんざん移動し、最終的に1日で350km以上を走破したが、身体への痛みはまったくなかった。エヴォーラGT410スポーツは、その名の通りスポーツカーであり、GTであり、薄まってしまった部分もあったが、それでも正しい“ロータス”だった。

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