島下 初代カイエンはスポーツカー専業メーカーのSUVという、言わばハズシの存在だったわけですが、じゃあSUVが乗用車の中心になっている今の世の中では、カイエンはどういう存在なんでしょうね?新井 SUVビジネスの旨味を知って、ド真ん中に行こうとしている気がする。いいクルマだけどポルシェじゃなくてもいいかなあ。911を知っていると、どこにポルシェらしさを感じるかは、難しい気がする。島下 初代は変化球だったのに、いつの間にかド真ん中ストレートになったということですかね。塩澤 スイートスポットが広い感じはするよね。乗り心地良いし、速いし快適性も素晴らしい。万能。それをポルシェ的なものが薄れたと言うなら、そうかもしれない。特に、今日乗ったのはe-ハイブリッドだったから。ターボやGTSだと、もっとらしさが濃くなるのかもしれない。
村上 ポルシェにとってカイエンは大黒柱の中の大黒柱。911とは別の確立された存在になっていると思うんだよ。911っぽくするのではなくカイエンとしての道を究めていくという。その中で、ターボやGTSはスポーツカー的な要素を強くしているけれど、今回のe-ハイブリッドは高級車だなと思うよ。島下 でも普段レンジローバー・スポーツに乗っている私からしたら、カイエンは紛れもなくポルシェですよ。レンジローバーでは飛ばしたいとはまったく思わないけれど、カイエンはe-ハイブリッドでも気づくとペースが上がっちゃう。そういう昂揚させるものがあって、クルマはそれに応えてくれる。ああ、ポルシェだなって改めて思ったんです。
塩澤 電子制御のおかげもあって今やレンジローバーも極端な話、ロール無しで曲がることはできる。けれど基本的なクルマのコンセプトというか骨格がまったく別物で、いくらやってもこういう風にはならないんだろうなと。島下 縦軸、歴史で見たら新型は洗練されて、あるいは市場のド真ん中に来ているのかもしれない。けれど横軸、周囲との比較で見たら、やっぱりカイエンはポルシェ以外の何者でもないんですよ。塩澤 アウディQ7、ランボルギーニ・ウルス、ベントレー・ベンテイガとプラットフォームは一緒で、同じなんじゃないの? と思われるかもしれないけれど、そういう面で見ても、実はそうなってはいない。島下 同じ材料でもシェフが違えば、ちゃんと違う料理になる。塩澤 ポルシェが作れば、やっぱりポルシェになるんだよね。
荷物が積めないSUVがあってもいい
村上 ポルシェってユルいところが全然無い。これにもそういうユルさが微塵も感じられないところが、やっぱり凄いよね。特に今日はクーペが良かった。ちゃんと見た目通りの走りをする。普通のよりちょっとスポーティな味付けになっているよね。新井 今回、同じパワートレインだったのでそれが顕著に分かりましたね。ポルシェらしいスポーティさを求めるならクーペを選んだ方がいい。テールゲートの後端のリッドがスポイラーになっていて、速度によって上昇するのもポルシェっぽいし。島下 そもそもポルシェって基本的にクーペだから、カイエンにクーペが出ても流行りを追いかけた感じがしないんですよね。塩澤 カッコいいじゃん、単純に。SUVは荷物も載る快適万能車……ではなくて荷物は積めなくなるけれど、こっちの方がカッコいいし乗りたくなるような魅力がある。そう思う人が結構居るわけだよね。島下 カイエンだって十分ひと味違ったSUVだとは思うけれど、こうして市場のド真ん中に来たように見え始めたかなと思ったら、じゃあこういうのが必要だろうとクーペをサッと出してきた。この辺りの時代感覚の鋭さも含めて、カイエンはやっぱりポルシェだなって感じですね。
▶「ポルシェのおすすめ記事」をもっと見る話す人=島下泰久(まとめも)+村上 政(以下、エンジン編集部)+塩澤則浩+新井一樹 写真=柏田芳敬■ポルシェ・カイエンEハイブリッド・クーペ駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動全長×全幅×全高 4931×1983×1676mmホイールベース 2895mm車両重量(車検証) 2480kg(前軸1300kg/後軸1180kg)エンジン形式 直噴V6DOHCターボ総排気量 2995ccボア×ストローク 84.5×89.0mmエンジン最大出力(モーター/統合) 340ps/5300-6400rpm(136ps/462ps)エンジン最大トルク(モーター/統合) 450Nm/1340-5300rpm(400Nm/700Nm)トランスミッション 8段ATサスペンション(前) マルチリンク/コイル(試乗車はエアサス)サスペンション(後) マルチリンク/コイル(試乗車はエアサス)ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ(前後) 275/45ZR20、305/40ZR20(試乗車は22インチ)車両価格(税込み) 1360万円■ポルシェ・カイエンEハイブリッド駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動全長×全幅×全高 4918×1988×1696mmホイールベース 2895mm車両重量(車検証) 2430kg(前軸1290kg/後軸1140kg)エンジン形式 直噴V6DOHCターボ総排気量 2995ccボア×ストローク 84.5×89.0mmエンジン最大出力(モーター/統合) 340ps/5300-6400rpm(136ps/462ps)エンジン最大トルク(モーター/統合) 450Nm/1340-5300rpm(400Nm/700Nm)トランスミッション 8段ATサスペンション(前) マルチリンク/コイル(試乗車はエアサス)サスペンション(後) マルチリンク/コイル(試乗車はエアサス)ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ(前後) 255/55ZR19、275/50ZR19(試乗車は21インチ)車両価格(税込み) 1300万円(ENGINE2021年12月号)
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