池田20世紀美術館のエントランス前。建物を設計したのは彫刻家の井上武吉氏。置かれている二つの彫刻は木村賢太郎氏の作品だ。
全ての画像を見る
味わって乗るべきクルマさて、旅は小さくてもクルマは思いきり豪華なグランド・ツアラーで、というのが、今回の特集の決めごとだ。そこで、しばらく前に発表会で見て以来、ずっと乗りたかったのにその機会を逸していた、BMWアルピナB8グランクーペを、旅の足とすることにした。スポーティとラグジュアリーをこの上ない高次元で両立させたアルピナの最新モデルほど、走って、浸かって、食べて、見る、今回の旅にふさわしいクルマはない、とこれまた勝手に決め込んだ。朝9時に世田谷のショールームで借り出すと、そのままカメラマンを乗せて東名高速道路を下り、厚木で小田原厚木道路に乗り換えて箱根ターンパイクを目指す。要するに、いつものロケとまったく同じ試乗コースである。それだけに、クルマの具合が手に取るようによくわかる。
B8は、とにかく乗り心地が抜群にいい。最近のアルピナはスポーツ志向を強め、ともすると足をより固め、ステアリングをクイックにして、ハンドルの握りも極太にする傾向が見られるが、フラッグシップ4ドア・クーペたるB8はそんなやり方とは無縁だ。どんな路面の荒れに遭遇しても顔色ひとつ変えることなく、まるで遠くで何かが触れたかのごとくトーントーンと軽くいなして、アウトバーンならぬ目地段差の多い日本の高速道路を突き進んでいく。これこそが、アルピナ本来の魅力だ。それでいて、箱根ターンパイクから伊豆スカイラインへと向かう山道のセクションに入ると、これまた顔色ひとつ変えることなく、みごとな加速とスムーズな減速、そして切れば切っただけ曲がるしなやかなハンドリングをさらりと披露するのだから、舌を巻く。そして、これは本当にどんな場面でも、しっかりと味わって乗らなければいけないクルマだと思わされるのだ。逆に言えば、乗り手の感受性の鋭さ深さが常にクルマに試されているようなものだ。
ドライブ・モードの切り換えスイッチも付いているが、別にどれを選んでいても根本的にはなにも変わらない。常にスポーティであり、かつラグジュアリーなのであって、そのサジ加減が変化しても、突如、猫が虎に豹変するような無粋なクルマではないのだ。昔より少し味が薄まったとはいえ、シルクのようななめらかなタッチのステアリング・フィールや絶妙のコントロール性を見せるブレーキ・フィールを、手のひら足の裏で味わいながら走っていると、アッという間に伊豆スカイラインの終点、天城高原まで来てしまった。実はこれ、宿に行くことだけを考えたら行き過ぎである。でも、あまりに気持ち良かったんだから、こういう旅もいいじゃないの、ということで撮影しながら4時間ほどで今晩宿泊する「界 アンジン」に到着。
※「界 アンジン」の特別会席の料理、「池田20世紀美術館」のコレクションは、旅の後篇に続く!
文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬 取材協力=界 アンジン/池田20世紀美術館
■BMWアルピナB8グラン・クーペ・オールラッド駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD全長×全幅×全高 5090×1930×1430mmホイールベース 3025mm車両重量(車検証) 2170kg(前軸1160kg、後軸1010kg)エンジン形式 直噴V型8気筒DOHCツインターボ排気量 4394ccボア×ストローク 89.0×88.3mm最高出力 621ps/5500-6500rpm最大トルク 800Nm/2000-5000rpmトランスミッション ZF製8段ATサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイルサスペンション(後) マルチリンク/コイルブレーキ 通気冷却式ディスクタイヤ (前)245/35ZR21、(後)285/30ZR21車両本体価格(税込み) 2557万円(ENGINE2022年5月号)
※掲載されている情報は雑誌『エンジン』発売時のものです。
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
いますぐ登録
会員の方はこちら