2022.09.20

CARS

バラバラのまま5年も放置されていた貴重なアルピーヌV6ターボのカップカー 自らの手で修理、復活させようと奮闘するオーナーの情熱が凄い!

アルピーヌV6ターボ・ヨーロッパ・カップとアルピーヌV6ターボ、どちらも1988年のクルマだ。

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最後のカップカー

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「18年くらい前かな。911カレラ3.2に乗っていた頃にレースをやりたくなって、洒落で赤い88年型のV6ターボを買ったんです。お世辞にも程度は良くなかったけど、なにせヤフオクで60万円でしたから」

ところが、レースカーへの準備を進めて2年ほどが過ぎた頃、野澤さんは知り合いのショップから「レースをするなら、あそこにいいのがある」と1台のクルマを紹介されることになる。



「それがもう1台のV6ターボ・ヨーロッパ・カップです。某所にバラバラの状態で置いてあると聞いて問い合わせたら売ってくれるという話になって、すぐに積載車を借りて取りに行きました。その時すでに5年以上放置されていたような状態でね。足回りも酷かったし、室内は野良猫の毛だらけでボロボロでした……」

V6ターボ・ヨーロッパ・カップはその名の通り、F1ヨーロッパ・ラウンドの前座レースとして行われていたワンメイク・レース“ヨーロッパ・カップ”用に、ディエップのルノー・スポールが85年に開発した正真正銘のレーシングカーである。

エンジンはロード・バージョンをベースとしつつ、レニックス製インジェクション、ギャレットT3ターボ、ハイカムなどのチューニングにより280psを発生する2.5リッターV6ターボ・ユニットを搭載。そのほかステアリング・ギアボックス、ゴッディ製鍛造アロイホイール、ド・カルボン製アジャスタブル・ダンパー、ガーリングCN3大型ブレーキ・キャリパーといった多くの専用パーツが奢られている。

“EUROPA CUP”の文字が入るリア・クォーター・ウインドウやゴッディ製ホイールなどは貴重な専用品だ。

「例えばフロントにブレーキの冷却口があるんですが、ただディスクに風を当てるのではなく、アップライトのアダプターに繋がっていて、送り込んだ空気を遠心力で全体に回して冷やすようになっている。初めて見た時はグループCカーみたいな部品がついているって興奮しましたよ」

資料によると当時製造されたカップカーはわずか69台。野澤さんのクルマは69番目に作られた最後のカップカーであるだけでなく、ごく少数が販売されたレアなロード・バージョンでもあるのだ。

「一般にカップカーの製造は87年までと言われていますが、これは88年の製造。ちゃんとルノー・スポールのドキュメントもあり、フランスのレジスターでも本物と認められました。どうやら一度本国で登録された後、89年頃に日本に輸入されています。でも一度も登録されることなく、なんらかの理由でバラバラにされ、放置されたみたいなんです」

野澤さんの個体は69番目に製造された最後のカップカーである。

カップカーを手に入れた野澤さんは、引き受けてくれるメカニックを探し出し修理を開始。不動状態のエンジンは、日産V6用のコンピューターやセンサーを移植して復活させた。しかしながら、程なくオリジナルに準じて直したい野澤さんと、現代流のアップデートを施したいメカニックとの方向性が合わず頓挫する。

一方の赤いV6も通勤用に使い始めたものの、フルスロットルでアクセル・ペダルが戻らなくなる症状が発生。何軒かの専門店で診てもらったものの原因を特定できずにいた。

そうした出来事が重なったこともあり、次第にV6ターボへの情熱が冷めてしまった野澤さんは、両車を封印。以来10年以上にわたって、倉庫に仕舞い込まれることとなる。

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