2022.07.03

CARS

小さいから面白い! ルノー・カングーとランチアYとスズキ・キャリイのキッチン・カー 楽しい世界への扉を開くちょっと古いクルマたち!

2006年型のルノー・カングーと1998年型のランチアY(イプシロン)。

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バンパーが大きな四角いクルマ

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いっぽう武志さんの妻、美保さんがクルマに目覚めたのは、テレビドラマ『西部警察』がきっかけだとか。

「ちっちゃい頃から好きだったんですよ。たぶん再放送をお父さんと見ていたのかな。登場するクルマも好きで。だからバンパーが大きく出っ張った四角いクルマばかり目に止まるようになって、フォード・フェスティバが欲しかったんですが……」

結果、彼女の最初のクルマになったのは初代マツダ・デミオ。この頃武志さんと同じ職場で働くことになり、お付き合いがはじまった。彼女は元々パンダを憎からず思ってはいたが「私、パンダに乗っている人が好きだったんです(笑)」と、美保さんは当時を振り返り、照れ隠しする。



パンダに続いて、武志さんが選んだのがYだ。最初に見た時は「なんだかクセが強いクルマだな」と思ったが、あるクルマのイベントでYを見てから、急に惹かれるようになった。直線基調のパンダとは正反対だが、フロント・グリルからボディ・サイドを経てリアへ続く、絶妙にうねるラインが陽の光の下で見るとすごく印象的で、無性にカッコイイと感じてしまったという。

「今は全然そうは思わないんですが、当時はもう少し力があって、高速を楽に走れたらなぁとも思って……」

運良く部品取り車が出て移植ができたのだが、ダッシュボードを外す必要があり作業はかなり困難だとか。

かたや美保さんは武志さんと結婚後、デミオに続いてVWルポなどを乗り継ぐも、どうしても武志さんが手放したパンダが頭から離れず、今度は自分のクルマとして購入する。

「彼のYはシートも大きく室内も広くて、私にはちょっとだけ大きいけど、パンダはちょうどよかった。すべてが過不足ない感じなんです」

身重になり、重いステアリングは大変だと武志さんに気遣われ、軽自動車のモーター・ユニットを利用したパワステを付けたりもしたが、彼女は元の感触のほうがいい、と戻してしまったというからスゴイ。そして彼女のお腹の中でパンダを感じ、3歳まで一緒に育ったのが息子の雄飛(ゆうひ)くんだ。両親の影響と、Yとパンダのおかげで、彼がクルマ好きに育ったのは言うまでもない。絵本と一緒に読んで欲しいと持ってくるのは、自動車雑誌やオーナーズ・マニュアルだったりするそうだ。

クルマが繋いだ縁

家族3人でYとパンダの2台持ちの生活には何の不満もなかったけれど、武志さんが“オットー”を立ち上げるのにあたって、草花を運ぶためのトランスポーターが必要になった。家族を通院のため乗せることもあり、イプシロンもパンダも2ドアだから少々使い勝手が悪い。パンダを欲しいという人が現れたこともあり、武志さんが選んだのが初代カングーだった。「半年から1年くらいかな、私がカングーカングーカングーってずっと言ってたら出物があって。雄飛が大きくなりドアを自分で開けるようになると2ドアは大きくぶつけやすくて危ないし、後ろにも2枚ドアがあって、その上スライドもするのがこんな便利なのかって、今さらながら気がつきました(笑)」



こうしてYは武志さんから美保さんの愛車となり、カングーともども日々雄飛くんの保育園への送り迎えなどに大活躍。時々3人でクルマのイベントにも出かけるし、2人ともクルマを道具としてしっかり使うタイプのようで、2台のオドメーターの数字は伸びる一方。Yは21万kmオーバー、カングーも12万kmを越えたが、どちらも整備を欠かさず、些細な故障はあるが絶好調だという。

初代ルノー・カングーは2006年型の1.6リッターモデル。

美保さんの明るい笑顔と愛らしい雄飛くんのおかげも大いにあると思うのだが、パンダに乗っていた頃も、Yやカングーで走っていても、以前乗っていた日本車やドイツ車たちと違い、不思議と行く先々で声を掛けられるという。近頃は武志さんも「いいですね、このクルマ」と言われることが増えた。そしてこのちょっと古いクルマたちのおかげで繋がった様々なご縁で、“オットー”の新事業がスタートにこぎつけることができると、2人は振り返る。

「知り合ったみんなが集まれる場所をつくることができるのは、とっても幸せなこと」と武志さんが言うと「いっそ家も改装してカフェにしちゃう?」と美保さんが微笑む。

鮮やかな色のYとカングーと、いい香りを放つキッチン・カー。この愛らしくもちょっと古い3台と、クルマ好き家族3人の、カレーとお花に囲まれた新しい生活が、まもなくはじまろうとしている。

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文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明 取材協力=カークラフト

写真では見えないが右手にはYとカングー用の屋根付きの駐車場もあり、来客用のスペースは十分ゆとりがある。

(ENGINE2022年7月号)

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