2022.12.17

CARS

高回転域の、更に先の超高回転域に陶酔の時間が待っている! ニッポンのスポーツカーの至宝、レクサスLFAとLFAニュルブルクリンク・パッケージに今あらためて試乗 絶頂の叫びに頭が真っ白になった!!  

レクサスLFAとLFAニュルブルクリンク・パッケージ

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エンジンは思わず目を見開いてしまうほど小さい

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撮影予定日の関東地方の天気予報は生憎の雨。2台のLFAは連なり、雨雲から逃げるように北西を目指す。

改めて眺めた外観は、今見ると思ったよりコンパクト。しかし存在感はやはり凄まじい。驚かされるのがノーズの低さで、その下にV10ユニットが入っているとは思えないほどだ。実際、フードを開けてみるとエンジンは思わず目を見開いてしまうほど小さく、且つキャビンにめり込むように搭載されている。

サイドビューも凝縮感があり美しい。全長4505mmというのが信じられないプロポーションだ。そして特徴的なのがリア。テールランプ下側左右の大きなグリルは、その奥にラジエーターが置かれている。

写真は、カーボンと黒のアルカンターラでコーディネートされたニュルブルクリンク・パッケージの室内。赤いレザー・シートの標準モデルよりストイックな印象を与える。「スポーツ」、「ノーマル」、「ウェット」の走行モードを選べるメーター・ナセル右側のダイアル・スイッチやエアコン、カーオーディオなどは両車とも装備する。

2台の違いは空力パーツ。ニュルブルクリンク・パッケージにはCFRP製フロントリップとカナード、そしてリアの固定式ウィングが備わる。実はLFAにも羽根が隠されていて、80km/hで大きくせり上がる。

囲まれ感の強いコクピットは仕立ても最上級。手に馴染む形状のステアリングホイール、ぴたっと決まるペダル配置など、すべてがドライビングにフォーカスされた空間である。内張りやシートはLFAのレザー表皮に対してニュルブルクリンク・パッケージはバックスキン張りで、贅沢だしレーシー。気持ちが昂ぶる。

走りの印象を大きく支配するのは、やはりエンジンだ。空吹かしでも吹け上がりは鮮烈。レスポンスはきわめて鋭いが軽々しさはなく、恐ろしく精緻で目の詰まった感覚と言える。

フルバケット・シートは標準モデルのレザーに対し、ニュルブルクリンク・パッケージはアルカンターラ。どちらもサポート性は抜群である。

ギアを入れるとカチッ、コトンという動作音と軽いショックを伴い、1速へ。いよいよ走り出す。6速100km/hでおよそ2500rpmと低いギアリングのおかげで、室内には常に澄み切ったエンジン音、左右バンク等長のエキゾースト・マニホールドが奏でる荘厳な音色が響き渡る。同乗者はどうか分からないが、ドライバーはまさに夢心地である。

堪らず更に踏み込むと、デジタルレブカウンターが一気の勢いで跳ね上がる。思わず息を飲むが、よく見ればレッドゾーンはまだ先にある。何しろレブリミットは9000rpm! 高回転域の、更に先の超高回転域に陶酔の時間が待っている。

サウンドは回転上昇に伴って極上の和音を積み重ねていき、同時にパワーが更に炸裂。トップエンドでの悲鳴にも似た絶頂の叫びには頭が真っ白になってしまった。

基準車とニュルブルクリンク・パッケージの差は、公道では正直言って分からず。どちらも思わず手を合わせて拝みたくなる素晴らしいエンジンであることに変わりはない。

6段ASGはAUTOモードだとやはり変速時にショックが出るが、飛ばせばそれも気にならなくなる。そういうクルマなのである。

フットワークにも改めて唸らされた。やはり剛性感が半端ないのだが、それでいてきわめて軽やかなのはCFRP製ならではと言える。特に唸らされたのはニュルブルクリンク・パッケージ。締め上げられたサスペンション、溝の少ないタイヤにも関わらず、その走りの一分の隙も無い高い精度感には圧倒されてしまった。



神経が繋がる

限界云々という領域は試せなかったが、軽さと強靭さのおかげでクルマの動きは極めてタイト。自分の神経とクルマが直接繋がっているかのようだ。FRでもノーズの重さは感じられず、まさに思った瞬間にクルマがそっちを向いている。実際、前後重量配分は48:52で、トラクションも十分確保されていた。

雨から離れるのを言い訳に、随分走ってしまった。一度乗り込んだら最後、ずっと走っていたくなるのがLFAというクルマである。味わいは深く濃く、けれど清明。なるほど今のレクサス車を思うと、秘伝のタレという意味、分かる気がした。

願わくばレクサスには、この秘伝のタレを改めて抽出した新世代の1台の開発を期待したい。あるいは、グッドウッドでお披露目されたBEV、Lexus Electrified Sportが、それになるのだろうか。ならば日本のスポーツカーはこの先も、それこそBEVになっても大丈夫かもしれない。究極の1台との久々の邂逅を終え、ついそんな風に思いを馳せたのだ。

文=島下泰久 写真=茂呂幸正



■レクサスLFA
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4505×1895×1220mm
ホイールベース 2605mm
車両重量 1480kg
エンジン 自然吸気V型10気筒DOHC
排気量 4805cc
最高出力 560ps/8700rpm
最大トルク 480Nm/6800rpm
変速機 6段自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 265/35ZR20 305/30ZR20
車両本体価格 完売

■レクサスLFAニュルブルクリンク・パッケージ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4505×1895×1220mm
ホイールベース 2605mm
車両重量 1480kg
エンジン形式 自然吸気V型10気筒DOHC
総排気量 4805cc
最高出力 571ps/8700rpm
最大トルク 480Nm/7000rpm
変速機 6段自動MT
サスペンション ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 265/35ZR20 305/30ZR20
車両本体価格 完売

(ENGINE2022年12月号)

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