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2023.01.03

CARS

驚異的な人馬一体感！　マクラーレンのハイブリッド・スーパーカー、アルトゥーラで箱根のワインディングをドライブ！！

上田純一郎

マクラーレン・アルトゥーラ

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電気が一体感を強くする

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マクラーレンは電動化を環境性能や静粛性のためだけでなく、ドライバーとの一体感をもたらすために積極的に使うと主張するが、アルトゥーラでそれがもっとも顕著なのがパワー・フィールだ。低回転域のエンジン・トルクを補うようにモーターが介入し、一瞬のためもなく、強烈かつシームレスで尋常じゃない加速をもたらす。0-100km／h加速は3秒で、2.9秒の720Sとほぼ同等。意を決して加速に耐えていると、結構長いはずの直線の景色が、一瞬で後ろへ消し飛んでいく。



直線途中の大きな段差ではバネ下がバタつき、一瞬車体が大きく浮き上がろうとした。720Sとの差別化なのだろう。アルトゥーラのシャシー制御は前後左右連結式のプロアクティブ・シャシー・コントロールでなく、電子制御式ダンパーによるプロアクティブ・ダンピング・コントロールだ。シャシー側の初期設定のコンフォート・モードはあくまでモーターが主役の時のもの。エンジンが主役のこういう場所には似合わない。さっきと反対の指を伸ばしてシャシーのモードもスポーツにし、次の段差に身構えると、今度はバタつくことなくなんなくこなし、クリアで雑味のない路面からの感触だけが伝わってくる。

旋回の感覚も鮮烈だ。電子制御式デファレンシャルのおかげだろうか。思わず、うわっ！　と声が出るくらいぐぐっと内へ内へと回り込もうとする。電動油圧式ステアリングのフィールは溢れんばかりに伝わって来るし、反応もとびっきりタイトだ。慣れるともう曲がっている道が気持ち良くてたまらない。



大観山を越え、箱根ターンパイクをぞんぶんに味わうには試乗時間が足りなかった。おまけにホテルへの帰路は観光客のレンタカーやタクシーが連なっていて、純粋に移動するだけの時間になった。下りで回生したおかげで航続可能距離はふたたび増えていたから、僕はパワートレインのモードをコンフォートにし、右足の踏み込み加減に合わせて現れる少し野太いエンジンのサウンドに耳をそばだてることにした。

それはぞんぶんに歌い上げてものすごい高揚感を誘うタイプではない。常にメカニカル・ノイズを交え、その素性を隠し切れていなかった以前のV8のようでもない。ホテルのエントランスの静寂さにふさわしく気配を絶つこともできるが、望めばいつでも重厚に響く、という見事な芸達者ぶりを見せてくれたのだった。

アルトゥーラはグランドツアラーのGTの登場によって広がったマクラーレンというブランドの裾野を、さらにもう1段階広げるクルマだ。同時にハンドリングやロードホールディング能力に対してストイックなまでに研鑽を積み続ける、いかにも英国的な、マクラーレンらしいスポーツカーである。驚異的な人馬一体感というか、融合したかのような感覚をもたらす720Sは長らく僕にとってスーパースポーツカーにおけるベンチマークだが、箱根での短い逢瀬でそのポジションは入れ替わってしまった、かもしれない。機会があれば是非、もっと長い時間のデートにお誘いしたいものだ。

文＝上田純一郎（ENGINE編集部）　写真＝マクラーレン・オートモーティブ

リア・ウイングなど可動式空力付加物は一切装備しないのもいい。

■マクラーレン・アルトゥーラ
駆動方式　ミドシップ縦置きエンジン＋モーター後輪駆動
全長×全幅×全高　4539×1913×1193mm
ホイールベース　2640mm
トレッド（前／後）　1650／1613mm
車両重量（車検証）　1510kg（前軸630kg：後軸880kg）
エンジン形式　バンク角120度V6DOHCツインターボ
排気量　2993cc
最高出力（エンジン＋モーター）　680ps（585ps/7500rpm＋95ps）
最大トルク（エンジン＋モーター）　720Nm（585Nm/2250-7000rpm＋225Nm）
トランスミッション　デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション（前）　ダブルウィッシュボーン／コイル
サスペンション（後）　マルチリンク／コイル
ブレーキ（前後）　通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
タイヤ　（前）235/35ZR19、（後）295/35ZR20
車両本体価格（税込）　3070万円

（ENGINE2022年12月号）

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