2023.01.03

CARS

驚異的な人馬一体感! マクラーレンのハイブリッド・スーパーカー、アルトゥーラで箱根のワインディングをドライブ!!

マクラーレン・アルトゥーラ

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まるでレーシングカーのような純粋なドライビング・マシーンだったMP4-12Cにはじまり、パワートレインもシャシーも、すべてがその派生または改良型だった近代のマクラーレンのロードカーたち。しかし最新モデルのアルトゥーラは何もかもを一新したハイブリッド・カーだという。その走りを箱根の試乗会で体験した。エンジン編集部のウエダがリポートする。

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V6ハイブリッド


静かな箱根のハイアット・リージェンシー・ホテルの地下駐車場に降りていくと、オレンジ、ブルー、グリーンのマクラーレン・アルトゥーラがお尻を向けて並んでいた。



最初に視界に入ったのは、継ぎ目のない、ぬらりと光るリア・カウルだった。高い位置にある2本出しのエグゾーストと、ディフューザーの奥に見えるほぼむき出しのパワートレインは、現行マクラーレンのロードカーの旗艦モデル、720Sを思わせる。流麗なフォルムやディテールは間違いなくマクラーレン一族のそれではあるけれど、カーボンの車体のレーシングカーに薄皮一枚かぶせただけの空力のお化けのような720Sよりも、特に側面の処理がシンプルで、ずっと落ち着いている。前へ回り御対面。ブーメラン型のマクラーレンのエンブレムを模したライトは、グランドツアラーのGT似だ。ただGTほどの伸びやかさはなく、きゅっと引き締まって見える。

720SにもGTにも似ているようで違うし、違うようで似ている。サイズは720Sよりわずかに短く低く、幅は80mmほど狭く、ホイールベースは30mm短い。ドアは720Sのようにルーフ部まで大きく開かず、GTと同じくドアだけ斜め上に開く。高さは要るが、開く際に必要な横方向の空間は抑えられ、狭い駐車場でも隣に気を遣わないでいい。



従来マクラーレンはラインナップを4つの“シリーズ”で分けていたが、アルトゥーラの登場でこれを3つに再構築したようだ。スピードテールやエルヴァなど限定の(1)アルティメット、720Sとアルトゥーラの属する(2)スーパーカーズ、グランドツアラーの(3)GT、というカテゴライズだ。アルトゥーラは570Sや540Cの属していたスポーツ・シリーズの後継ではない。720Sとともに、マクラーレンの本流と位置づけられたのだ。

マクラーレンとは思えないほどふっくらとしたシートにおさまって周りを見渡すと、バットレス・タイプの極薄のCピラーの隙間から斜め後ろが見えた。わざわざピラー内部にガラスを仕込み中空にすることで全周の視界を確保する720Sのようにはいかないが、この手のクルマにしては視界はなかなか悪くない。

かなりモダンになったインテリア。インストゥルメント・パネルやシートの質感も従来に比べ飛躍的に向上。ステアリングは上下&前後に調整でき、メータークラスターとその左右斜め上のシーソー・スイッチも一体で動く。これを指先で操作しパワートレインとシャシーのモードを切り替える。右ハンドル仕様のペダルは左ハンドル仕様に比べわずかに中央に寄っていた。


内装の仕立てはこれまでのマクラーレンとは完全に別次元だ。外観が比較的コンサバティブなのに対し、インテリアの凝った造形と高い質感が、新しい世代の車両であることを声高にアピールする。

まったく別物になっているところはまだまだある。2011年登場のMP4-12C以来延々マクラーレンが使い続けてきたV8ツインターボと、ついに決別の時が来たのだ。

アルトゥーラに載せられた新たな心臓部はプラグイン・ハイブリッドだ。英エンジン・コンストラクターのリカルド社とマクラーレンの共同開発とおぼしき120度のバンク角を持つV6ツインターボ・ユニットと、デュアルクラッチ式のリバース・ギアのない8段自動MTに加えて、7.4kWhのリチウムイオン・バッテリーが変速機のベルハウジング内に組み込んだモーターを駆動する。後退ギアはモーターが請け負う。普通充電のみ対応し、満充電時で31kmのモーター走行が可能だ。

サイドシルは低く、腰をひねる必要もさほどなく、GTよりむしろ乗り降りはしやすい気がした。


初期状態はモーター駆動ゆえ、すーっと音もなく青いアルトゥーラは走り出した。インバーターなどの雑音はもちろん、ロードノイズも見事なまでに消しさられていた。足の裏には常にガチッと重く硬いペダルの感触がある。ホテルを出るとき11kmだったメーター右のモーターでの航続可能距離の数字は傾斜に応じて増減しているから、コースティングによる回生はするが、ブレーキとの協調回生はしていないようだ。

箱根神社の手前で数字はゼロに。それでもモードは切り替わらない。もっと走れば充電すべく勝手に目覚めるだろうが、もう待ちきれない。手のひらでステアリングを保持したまま指を伸ばし、パワートレイン側のモードをコンフォートを飛ばしてスポーツにすると、やっとV6の声が聴けた。丁度前が空き、大観山へと続く、急な登りコーナーの連続する道が目の前に開けた。

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