2023.09.06

CARS

いま改めて知る「水冷911の真実」 996型911とはどんなポルシェだったのか? 【911誕生60周年記念『エンジン』蔵出しシリーズ#2】

涙目は似合っていた

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996はその後、新生ポルシェ・ジャパンによって日本での発売が開始されたが、この国では最後の空冷モデルである993が持てはやされて、996の人気はしばらくの間まったく盛り上がらなかった。通称「涙目」のヘッドライトが、先にデビューしたボクスターと同じ形状だったことなども、その一因だとされた。

少数派の意見であることを承知で書けば、996ボディには涙目のライトが一番似合っていると、僕は思っている。そこにはオリジナルデザインの端正さがあったからだ。

996後期型/2001年夏にマイナーチェンジ。3.4リッターの96mmのボアはそのままに、ストロークを78mmから82.2mmに延長して3595ccの排気量となった。また、従来のバルブ・タイミング・コントロール機構に、あらたに可変リフト機構を加えた“バリオカム・プラス”が採用された。最高出力320ps/6800rpm、最大トルク37.7kgm/4250rpmを発生する。

996は2001年、後期型に変わる。外観ではヘッドライトがターボと同形状になり、機構的にはエンジンが3.6リッターに拡大強化されたのが最大のポイントだった。増強代は20psと2kgmだったが、可変バルブ・タイミング&リフト機構の“バリオカム・プラス”の効果もあって体感する加速はずっと強力になり、ボディ剛性の強化などによってハンドリングと乗り心地も向上していた。

最初から成功の997

そういった996での経験を踏まえて2004年に送り出された997は、前作と違って最初から成功の道を歩むクルマに思えた。

996より肉感的になったボディは魅力に溢れていたし、インテリアからもプラスチックな印象が払拭されて、高級感が漂っていた。走る分野に関しても、動力性能、ハンドリング、乗り心地に至るまで、すべて996を凌いでいた。それに加えて、標準系モデルを3.6リッターのカレラと3.8リッターのカレラSの2本立てにしたのも、購買層に厚みを生むことになった。そう、またしても「最新は最良」だったのである。

997前期型 /6代目となる997型のデビューは2004年。好評とは言えなかった外観のテーマは先祖帰り。丸型ヘッドライト、強調されたフロント・フェンダーの峰、張り出したホイール・アーチなど、911の特徴が蘇っている。

ただし、カレラSに電子制御ダンパーのPASMが装着される一方で、それのないカレラやカレラ4の標準サスペンションや、それを固めたスポーツ・サスペンションが、997本来の脚の硬さを露呈していたが。

997は2008年、後期型にモデルチェンジする。それは、直噴を採用した新エンジンとデュアルクラッチを備える2ペダルMT、PDKを引っ提げて登場したもので、ダイナミックな性能を再び引き上げると同時に燃費の点でも明確な進化を見せた、新世代の997だった。

スポーツ・サスペンションにもPASMが備わって、シャープなハンドリングと快適な乗り心地を両立させるなど、後期型は動力性能や燃費だけでなく、ハンドリングや乗り心地の面でも確実に進化していた。

というふうに、その時点では911の完成型と思われた997後期型に僕らが感激している頃、アウグスト・アハライトナーさん率いるカレラ開発チームはすでに991を誕生させつつあったのだから、ポルシェの「最新」は本当にキリがない。


文=吉田 匠

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(ENGINE2012年2月号)

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