2023.09.10

CARS

GT3RSより50kgも軽かった! 500馬力をマニュアルで操るストリートモデル、911Rとはどんなポルシェだったのか?【911誕生60周年記念『エンジン』蔵出しシリーズ#5】

残念ながら……

advertisement


集合場所に無事到着すると、ワルター・ロールが私を待っていた。彼とはWRC現役時代から、すでに20年以上の仲で、今回、911Rのスポーツドライビング・インストラクターとして直々に先導車のステアリングを握り、私をひっぱってくれるという。時々いたずらっぽい仕種で私をからかうのでなんだか嫌な予感がしたがせっかくの申し出を断るわけには行かない。

ウオーキートーキーから「ロース!(ドイツ語のスタート)」という合図とともに、山あいのほぼ車幅ギリギリの村道をいきなりフル加速。まるでラリーのスペシャル・ステージが始まったかのようである。

ブレーキはセラミック・コンポジット・ブレーキ、PCCBが標準。ディスク径は前が410mm、後が390mm。キャリパーは前6ポッド、後4ポッドのアルミ製モノブロックを採用する。

ここでも軽くて路面からのインフォメーションが手のひらを通じて確実に伝わって来る911Rの非常にシャープなステアリングに助けられて、何とか大きく水をあけられることなく、かつてのラリー・チャンピオンに付いて行くことができた。

ワルターは「これが後輪駆動の特徴だ。クルマがどんな状況にあって、次にどんな挙動に移るのかを即座に知って、対応することができる」「4WDはトラクションには優れているが、こうしたスッキリしたステアリング・フィールを感じとるのは難しい」とそれぞれの特徴を分かり易く説明してくれる。

しかし、だからといってスピードを緩めてはくれない。ブラインド・コーナーでもまるでスペシャル・ステージのように突っ込んで行く。こんな状況ではアンダー・ステアがでたら一大事だが、ハンドリングはほとんどニュートラルで自分の車線を正しくキープして行くことができる。さらに速度を上げて行くと305mm幅のリア・タイヤはコーナリングGとせめぎあうが、モータースポーツ仕込みのスタビリティ・コントロールはなかなか介入してこない。360mmのスポーツ・ステアリング・ホイールで如何に素早く挙動を察知して、コントロールするところにスポーツ走行の醍醐味を感じる。



911Rでは徹底した軽量化とともに余計なディバイスが極力省略されているが、後輪操舵機構は残されている。この選択は正しかった。お陰で山道では連続するコーナーをキビキビと走り抜けることができ、高速道路でのレーンチェンジなどでは非常に安定した挙動が得られる。

結局、ワルター先導のスペシャル・ステージはなんと2時間半にも及び、戻ってきた時にはスポーツを楽しんだ後のような爽快感が残った。公道でのスポーツ走行を追求した911Rのコンセプトはそこにあったのだ。

ここまであおっておいて申し訳ないが、最後に悪いニュースをお伝えする。この911Rは2629万円で5月から限定991台で予約注文が始まったが残念なことにすでに完売となっている。

ただし、911ポルシェのウェブ・サイトではまだ自分好みの911Rの装備、仕様を決めるプログラムは生きているからパソコンの上では、まだ夢を見ることは可能なようだ。

文=木村好宏

■ポルシェ911R

駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4532×1852×1276mm
ホイールベース 2475mm
トレッド 前/後 1551/1555mm
車両重量 1370kg(DIN)
エンジン形式 水平対向6気筒DOHC24V直噴
総排気量 3996cc
ボア×ストローク 102.0×81.5mm
最高出力 500ps/8250rpm
最大トルク 46.9kgm/6250rpm
変速機 6段MT
サスペンション形式 前/後 ストラット/マルチリンク+コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/35ZR20/305/30ZR20
車両価格(税込) 2629万円


▶エンジン・バックナンバーおすすめ記事をもっと見る

▶「ポルシェのおすすめ記事」をもっと見る

(ENGINE2016年8月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement