2023.07.12

CARS

「まさにサイレント・スポーツカー!」 これがベントレー・ベンテイガEWBに試乗した自動車評論家の生の声だ!! 【ベントレーの世界 前篇】

これはSUVでもあり、リムジンでもある!

advertisement


村上
 では今一番新しいモデルのベンテイガEWB。エクステンデット・ホイールベースという名の通りで180mmも長いんだよね。

藤原 すべては後席のために。

村上 そう、これはSUVだけど、むしろリムジンだな。直進安定性がめちゃくちゃいいし。V8エンジンも力強い走りだし。現代のリムジンって、こういうものになるのかな。

大谷 それこそチャールズの戴冠式に出てきたベントレーの格好がそういうものじゃないですか。背が高くて長くて。そういう意味でもEWBが現代のリムジンであると解釈することはできますよ。

藤原 ステート・リムジンはエリザベス2世のハットのために、あの高さにしたんですからね。

村上 なるほど。フライングスパーじゃ、屋根が低すぎる?

藤原 フライングスパーのスタンスはスポーツ・サルーンなんですよ。だからミュルザンヌの代わりでもあるけど、なり得ない部分もある。EWBの国際試乗会のときも「サルーンの終焉と新しい価値の創造」みたいな話があったのは、そうした意図も含まれていたんだと思います。



大谷 ベンテイガが今の世代に進化した時に、センターコンソールにテキサス・ベントが付いたんです。これはテキサスみたいに暑いところでもフロントのエアコンで後席を冷やす大きな通風口のことなんですが、フライングスパーには最初から付いてるんですね。つまり現行モデルでベンテイガは後席をより重視するようになった。そういう意味でもリムジン化している。それが180mmの延長でさらに明確になった。

村上 そういう使い方が多いことがマーケティング的にもわかってきた。

大谷 フライングスパーよりベンテイガが高さ的に車内でリラックスできるのは事実ですよね。よりいろんな楽な姿勢を取りやすい。その分、長距離にも向いてる。ただ今までのベンテイガは後席に大事なお客様を迎え入れるには、ちょっとレッグスペースが狭い。そこを改善しようと生まれてきたのがEWBです。

レッグスペースが拡大したリア・シートには、最大40度までリクライニングし、足元にはオットマンも備わるオプションのエアライン・スペシフィケーションを装備。乗員の体温を感知する自動温度調節や、シート形状を継続的に変化させ疲労を低減する機能も備わる。

藤原 ベンテイガは超高級SUVって新たなジャンルを作り出したパイオニアだけど、色々なフォロワーが出てやや埋没した感があった。スポーティーにも、ラグジュアリーにも振り切ってないというか。そこでやっぱ我々はラグジュアリーなんだというところに立ち返り、エアライン・スペシフィケーションのようなシートを用意するまで特化したEWBこそが、ベンテイガに求められている進化の方向のように思うんです。

大谷 全く同意見。ロングホイールベースにすると当然、後席の居住性が上がって直進性も良くなる。そこでもう1つすごく大事なのは、乗り心地がもう端的に良くなること。入力点が離れるから同じサスペンションの硬さでも乗り心地は良くなる。

藤原 まさしく!

大谷 そこまではロングホイールベースには通常あるメリット。ところがベンテイガEWBがすごいのは、デメリットがないことです。通常、ホイールベースを伸ばすと、ボディ剛性が下がるけど、むしろ上がってるように感じるぐらい。

藤原 目地段差でヨレたり、ゆるい感覚がまったくない。

大谷 だから直進性もいいし、よく曲がるし、動きも鈍くない。それは48Vの電子制御アンチロールバー、そして4WSの効果ですよね。ロングホイールベースなんだけど、すごく元気よく気持ちよく曲がるクルマ。

村上 重さもそんなに感じないよね。

藤原 2514kgもあるのに!



村上 それに4リッターV8エンジンもすごく良かったよ。

大谷 レスポンスがいい割にトルク特性もリニアリティが高いでしょ。扱いやすいし、十分に静か。

藤原 ダービーになってからのベントレーって“サイレント・スポーツカー”って言われるけど、まさにそのDNAですよね。あとATがトルコンなのも良い。パワー・デリバリーがすごく滑らかで気持ちいい。

大谷 EWBはラグジュアリーでリムジン的なコンセプトに思えるから、W12よりV8がちょうどいいかな。ひょっとしたらハイブリッドでもいいかなって思いました。

村上 また今日のはね、外装色といい、内装といいオシャレでした。

大谷 高貴な感じがする、ノーブルな感じがしますよね。派手とか、どうだ! という感じじゃなくて、本当に品が良くて、センスがいい。

村上 一方で、手で触るスイッチ類なんか全部にダイヤモンドカットが施してあったりして。すごい豪華で堅牢な感じがしたな。

大谷 そういう手触りを楽しむっていうのをベントレーではヒドゥン・デライト=隠された喜びって言うんですよ。

村上 江戸時代の羽織の「裏勝り」みたいだね。

大谷 まさにその感性が、すごく日本的なんですよ。奥ゆかしい。



藤原 ドアを開けるところからエンターテイメントが始まる、みたいな世界観をすごく大事にしてますよね。

村上 逆にそれをこれ見よがしにやってくるのがイタリア車(笑)。

大谷 そうじゃないのがイギリス車。どっちが好きかは人それぞれだけど、品が良く、奥ゆかしさを好む人には、ベントレーの感性がマッチすると思うなぁ。

藤原 確かに日本と非常に親和性があるクルマだと思います。ラグジュアリーでも公的ではなく、私的な空気感が強い。それがドライバーズカーと言われる所以なのかも。

大谷 僕の中でロールスは端的にモダンだし、インターナショナルなんです。ベントレーはもっとトラディショナルだし、ブリティッシュです。根幹をなす部分が明確に違う。

藤原 特に最近のロールスもレンジローバーも天然素材を使った豪華さから脱出して、モダン・デザインで、革や木に頼らない高級を作ろうとしている。最新のデザイナーズ・ホテルみたいな。それに比べると、ベントレーはイギリスに昔からあるホテルみたい。逆に言うと、あれだけの木と革を使った内装ができるメーカー自体が、もうベントレーしかないということでもあるのでしょうね。

村上 ベントレーはベンテイガEWBのテーマを「ウェルビーイング=健康、幸福」って言ってるけど、そういう部分も含めて、後ろに乗っても快適だし、ハンドルを握っても楽しい、ストレスフリーで超ラグジュアリーなドライバーズカーだということなんだね。

◆フライングスパー・ハイブリッド、コンチネンタルGTスピードで盛り上がった座談の続きは【後篇】で!

話す人=大谷達也+藤原よしお(まとめも)+村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■ベンテイガ EWBアズール
駆動方式 エンジン・フロント縦置き全輪駆動
全長×全幅×全高 5305×1998×1739mm
ホイールベース 3175mm
トレッド(前/後) 1689/1707mm
乾燥重量 2514kg
エンジン形式 V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3996cc
最高出力 550ps/5750-6000rpm
最大トルク 770Nm/2000-4500rpm
トランスミッション 8速AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エアスプリング
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前後) 285/40ZR22
車両本体価格 3162万5000円

(ENGINE2023年8月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement