2024.09.14

CARS

2WDと4WD、どっちが本当の911なのか? 世界最高、最速の、ポルシェの絶対テスト・ドライバー、ワルター・ロールに聞いた!【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

911の味を決める絶対的なテスト・ドライバー、ワルター・ロール氏。

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ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年1月号のポルシェ911特集の企画として掲載されたポルシェのテスト・ドライバー、ワルター・ロールのインタビューを取り上げる。ワルター・ロールは、PDKを得た997型911についての我々の質問のすべてに答えてくれた。まさしく保存版のインタビューだ。

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ENGINE 2009年1月号「ポルシェの絶対ドライバー、ワルター・ロール」

「20世紀最高のラリー・ドライバー」といわれるドイツ人、ワルター・ロールに会いに行った。かれこそが、いまの911の、隠れもない調理人だからだ。悪魔のニュルブルクリングで、悪魔のような無慈悲な高速テストを繰り返し、911を常人の及ばぬ速度領域の試練にかけるワルター・ロールは、911をいかに語るのか?

2004年に発表された997型911に2006年に追加されたターボ・モデルとともに立つ。このとき、59歳。「高級乗用車と高性能GTの2つの顔がある」とコメントする。



スキー・リゾートへ

クルマ好きのあいだではBMW3シリーズの工場があることで知られ、旅行好きには世界遺産の旧市街地が有名なバイエルンの古都、レーゲンスブルクから、チェコとの国境方面にさらに東へ50kmほど行くと、そこは背の高い針葉樹が密生する深い森のなかだ。蛇身のようにうねりながら、道が次第に高度を上げていく。

10月下旬のまだ真っ暗な朝6時すぎ、僕はPDK付きの真っ赤な新型ポルシェ911カレラ・カブリオレに乗り込んで、ミュンヘンのホテルを出発した。めざす人が住むこのあたりは、ドイツでは有名な「サンクト・エングルマー」というスキー・リゾートに近い。PDKを得た911カレラは、右に左にステップすることじたいを愉しむダンサーのように、リズミカルに、すべらかに、スッスッと向きを変える。

4速、ちょっとだけブレーキング、そしてステアリングに付いたスイッチで3速にダウン・シフト、背後のフラット・シックスのノイズが高まったのを耳にして、つとめておだやかにステアリングをまわしはじめる。同時に、ちょうど尻のあたりを軸にして、最新の「絶対スポーツカー」が回転運動をはじめ、身体が遠心力に引っ張られる。この瞬間がカタルシスだ。車載のナビに喚起されなかったら、そのまま通り過ぎてしまったかもしれないぐらい運転にふけっていた。そして、通り過ぎてもおかしくなかったぐらい、その人の住む村は小さかった。

約束の9時までまだ40分以上を残して、僕たちはその村の、教会のある坂道に着いた。すぐそばのガソリン・スタンドで911カブリオレに給油する。金曜の朝、スタンドの斜め前のパンとケーキも売るレストランが早くも開いていた。ドイツ人は朝が早い。多くのドイツ人にとって、朝一番の仕事は、焼きたてのフレッシュなパンを買うことだ。僕たちは、売り場裏側のレストランでコーヒーとおいしいパンをとった。

1978年、WRCに出場のかたわら、ランチア・ストラトスで国別選手権にも出て勝利を重ねた。


1978年、WRCカナダ・ラリー。131アバルトでみごと優勝する。

「その人」とは、ワルター・ロールである。1970、1980年代を通じて、世界ベスト・オブ・ベストのラリー・ドライバーとしてフィアット、オペル、ランチア、フォード、BMW、アウディ、ポルシェに数多くの勝利をもたらし、1988年からはサーキットでもスーパー・ドライバーの技量を見せつけたバイエルン人。8年前、54歳のときに、緑ゆたかなこの地に家を建て、近くのもう少し大きな町から越してきた。



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