2025.12.06

CARS

こんなスポーツカーに乗れるなんて、一生に一度の一大事! 365GTB/4デイトナはじめ貴重なクラシック・フェラーリをサーキットで走らせた

イタリア語で「コルソ・ピロタ・クラシケ」、すなわち、英語にすると「クラシック・ドライビング・コース」。フェラーリがオーナー向けに開催しているクラシック・カーの走行体験イベントにエンジン編集部のムラカミが参加してきた。

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思わず笑みがこぼれる

2日目は朝からフィオラノのサーキットへ向かい、まずはテクニカル・ブリーフィングを受ける。そこでは、ドライビング・ポジションに始まって、ペダルの踏み方、ヒール&トゥやダブル・クラッチのやり方、荷重移動、コーナーでのライン取りに至るまで懇切丁寧に教えられた。

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とりわけ、私が重要だと思ったのは、切り返しの際のステアリング操作で、必ず一度ニュートラルな状態を作ってから逆に切り出せという教えだ。ロールが大きいクラシック・カーの足では、そのまま切り返すのではバランスを崩す原因になる。

いよいよ、パドックに移って走行開始。用意されたクラシック・フェラーリは、1960年代の365GTB/4、70年代の308GTB&GTS、80年代のモンディアル3.2、90年代の550マラネロの5モデル。私はモンディアル3.2から乗ることになった。最初にインストラクターの運転する横に乗ってコースを下見し、走り方を教授される。これまでに何度か走っているので、コースは頭に入っているが、クラシック・カーの扱いには、あまり自信がない。インストラクターはさすがに慣れたもので、2周目には一気に速度を上げて、クラシック・カーとは思えないような、ほぼ全開のみごとな走りを見せる。パドックに戻って、「さあ、今度はオマエの番だ」。

脚は前後ダブルウィッシュボーン。ステアリングはラック・アンド・ピニオンのパワーアシスト付き。ブレーキは前後通気冷却式ディスク。タイヤ・サイズは前220/55VR16、後225/55VR16。0-100km/h加速=7.4秒。最高速度=250km/h。

モンディアルにはインジェクションが付いているので、気をつかうことなくキイを捻って一発始動。パワステもついているから操舵も苦ではない。クラッチもそれほど重くはなくて、むしろ、あまりに乗りやすいのに驚いた。これまでに経験したことのあるクラシック・ポルシェで言うと、964型くらいの感覚だろうか。現代のスポーツカーに比べたらずっとおっとりした動きだけれど、ちょうどいい速さとハンドリングの緩やかさで、これは気持のいいスポーツカーだと思った。

308GTB&GTS/12気筒以外の初のフェラーリとして1975年に登場した308GTB。当初はFRPボディだったが、スパイダー(GTS)が登場した77年からスチールに変更された。

次に乗った308GTBは、目の覚めるような軽量ミドシップ・スポーツカーだった。モンディアルよりも320kgも軽く、ホイールベースも310mm短いのだから、運転感覚がまるで違う。キャブ仕様でアクセレレーターのレスポンスはおっとりしているのに、ハンドリングはそれなりに敏感だから、そのギャップに慣れる必要があったが、慣れてしまえばやっぱり軽いのはクルマにとって間違いなく善で、運転していて一番楽しい1台だった。後に乗ったGTSよりGTBが剛性の点でも軽さの点でも勝っているように感じた。

550MARANELLO/1996年に、F512Mの後を継ぐ旗艦モデルとしてリア・ミドシップから伝統のFRに回帰して登場した12気筒2座クーペ・モデル。479ps/7000rpm、568Nm/5000rpmのパワー&トルクを発生する5474ccのV12DOHCをフロント・ミドシップに縦置きし、リアアクスル上の6段MTを介して後輪を駆動。

550マラネロは同時代で乗っているが、改めて乗り比べると、とてつもなく速い、現代のスポーツカーだと思った。しかし、その一方で、重量が重くて、こんなだったっけと思うくらいに大きくロールするのに最初のうちは戸惑った。308と逆で、エンジンが速く、ボディが遅いのだ。でも、その動きに慣れてくると、こういうクルマをスムーズに操るのがすこぶる楽しくなってくる。ボディの傾きを一度ニュートラルにしてから次の操作に移ることの重要さを改めて学んだ感じだ。

365GTB/4 DAYTONA/1968年に登場した当時の旗艦モデルで、「デイトナ」は愛称。プレクシガラス内に前4灯を収めたこれは前期型。後期はリトラクタブル式になる。

そしてそして、ついについにデイトナに乗ったゾー。ヘルメットを被っているとルーフに頭がつかえるし、ステアリングはノンパワステで思いっきり重いし、クラッチも岩みたいに硬くて、さらにギアも入りにくいのがあるわで、決して乗りやすいクルマじゃなかったです。でも、やっぱり12気筒エンジンの感触も音もサイコー! 写真撮影とビデオ撮影の際にもデイトナをリクエストして、3回も乗せてもらいました。もう、これに乗っているというだけで、思わず笑みがこぼれてしまう。

このイベントの参加費は1万ユーロ。この体験ができるなら、決して法外ではない? ただし、フェラーリ・オーナーであることは必須です。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=フェラーリS.p.A

(ENGINE2025年9・10月号)
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